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インテンの小説技法基礎講座⑤「読者を掴んで離さない編②~読者に安心感をあたえよう~」

インテンの小説技法基礎講座⑤「読者を掴んで離さない編②~読者に安心感をあたえよう~」

前回で、マイナスをプラスで上書きすると書いたが、今回はそれの補足について書いてみよう。

今回例に出すのは「落第騎士の英雄譚」と、「学戦都市アスタリスク(一期)」である。
まず最初に、この二つの作品はとても似ていると話題になった。
しかし最後の方になると、「落第騎士の英雄譚」の方が評価は高く、「学戦都市アスタリスク」の方は普通止まりだった。
この違いがどこなのかを説明して、今回の主題の答えとする。

まず前提として、二つの物語のあらすじを書いておこう。

①「落第騎士の英雄譚」
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主人公は前年度、学園および学園に圧力をかけた実家により、授業を受けられずに落第する。
二年目、ヒロインである王女が入学し、主人公は王女と寮が同室となり、それが原因で決闘をすることに。
主人公は能力値が低い「ワーストワン」で、ヒロインとは圧倒的な差がある。
しかし主人公は、鍛え上げた力でヒロインを倒し、ヒロインに自分を認めさせる。
そしてトレーニングなどの交流で関係を深め、トーナメント一回戦のピンチをヒロインの激励と自身の力の結晶(一刀修羅とパーフェクトビジョン)で乗り越えた主人公は、試合後にヒロインに告白し二人は付き合うことになる。
その後も主人公は様々なキャラクターと交流し、その力をだんだんと周囲に認めさせていく。
しかしその主人公の快進撃を快く思わなかった実家の圧力により、ヒロインとの関係をネタにして捕まってしまう。
弁明する機会もなく、消耗しながらも試合に勝ち続ける主人公。
そんな中でヒロインから渡された髪を見て自らも戦うことを決意し直し、圧力の根元である父と向き合う。
しかし、父と主人公は考えなどが決定的に違い、主人公は深い絶望に落ちる。
そうしながらもなんとか試合を勝ち続けるが、最終戦で学園一の相手と戦うことになり、主人公はその試合に勝たなければ選手生命をたたれることに。
自らのなにも背負っていない軽い剣と、学園一の相手の期待などの様々なものを背負っている重い剣。
自分のアイデンティティそのものに疑問を抱き、絶望の中なんとか会場につく。
しかしそこで待っていた自らの背負っていたものを見て、主人公は立ち上がる。
そして学園一を自らの限界を越えることで倒し、代表の座や自らの尊厳などを勝ち取る。
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②「学戦都市アスタリスク(一期)」
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主人公は姉の手がかりを探して、学戦都市にやってくる。
初日にトラブルから学園上位のヒロインと戦うことになり、しかしこれは引き分けで終わる。
しかしその試合でヒロインに認められ、試合の邪魔をした相手を探すため、主人公とヒロインは行動を共にする。
そして主人公はヒロインと行動を共にすることで自らの目的を定め、ヒロインを助けていくことを決意し、主人公はヒロインと共にトーナメントに挑む。
しかし主人公には能力を制限する枷がはめられており、最初はその枷をはずすのをパフォーマンスとして制限時間内に倒してなんとかなっていたが、強力な武器を使う敵を倒すために限界まで使ってしまい、なんとか倒すが周囲に自らの弱点をさらしてしまう。
しかし主人公は、そのバレている制限の中で戦っていく。
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以上が今回比べる二つの作品のあらすじである。
比べてみると、似ていることがわかると思う。
ではここで更に、この二つの作品の主人公の設定の共通点をあげてみよう。
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①剣術を使う。
②とても強い。
③必殺技(流派の技)がある。
④決め技(一刀修羅、枷をはずす)がある。
⑤優しく穏やかだが決めるときは決める。
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などである。
かなり性格や能力などが似ていることがわかると思う。
しかしこの二人の主人公は、同じように戦っているのに、なぜか違う印象を受ける。
①の主人公の戦いには、ドキドキ(ピンチ)とワクワク(どんな技を使うのか、使われるのか)を覚えた上で、どこか安心感を。
②の主人公の戦いには、ドキドキ(ピンチ)とワクワク(どんな技を使うのか、使われるのか)があるが、安心感がない。
この違いは実際に見てもらわないと感覚が伝わりにくいが、しかし理由ははっきりと言える。
先程あげた共通点の「④決め技」の違いである。
この二人の主人公の決め技。
①が一分で全力を使いきることで限界を越える。
②が枷をはずすことで一定時間本来の実力(つまりは全力)を出す。
という似ている技なのだが、「使われ方」や「見せ方」が違う。
①はまさしく決め技であり、この技が勝敗を決める。
②は強い敵に対して最初から使い、勝敗に関係するが使わないと勝負にならない。
この「使い方」と「見せ方」の違いにより、「安心感」の有無がわかれた。
具体的にいうならば「①の主人公は決め技を使えば勝てる」という安心感があるが「②の主人公は決め技を使っても負けてしまうかもしれない」という不安感がある。
この違いにより、二つの作品の主人公は、見ているものを「惹き付ける」戦い方と「心配で見ていて怖い」戦い方にわけている。
①の主人公が決め技を発動した瞬間に「これで勝った。いけぇぇぇ」と応援してプラスに見ていられるのに対し、②の主人公が決め技を発動したとしても「ようやくスタートか。大丈夫かな?」と授業参観の親みたいな感覚で見ることになる。
この二つの決め技は、共に「制限時間」がある。
しかし①の技よりも②の技の方が制限時間は長いのである。
なのに技を使った時の安心感は、①の方が圧倒的に上である。
この安心感があるからこそ、①の技は②の技とは違い「見るものを離さない」技となっている。
言ってしまえば、同じパターンの繰り返し……テンプレかどうかといえる。
これは言い換えると、前回と同じく「圧倒的なプラス(安心感)」があることで「圧倒的なマイナス(技のデメリットなど)」を覆しているということだ。
なのでこの「安心感」を使うことで、より読者を離さないで「マイナス(鬱)要素」を出すことができる。
この二つの違いを参考にして、色々試してみてほしい。


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