転移先での国取り合戦

てんとう虫

第二章6話 わがまま

――え、アリアって竜と友達なの――

「正確に言うと竜じゃないんですが……」

「どういうことだよアリア、もしかして、お前が竜なのか?」

「混乱しないで下さいよ。私は正真正銘人間です。もうこの話はいいでしょう! いずれ分かることですし……」

「まぁよく分からんが聞かないでおくよ。」

「それより今日も特訓行きませんか! 昨日は一発しか撃てなかったんですからね!」

アリアの目が輝いた。だが、どう考えても特訓にいけば草原の生態系が崩れることは確かである。

「絶対いかないぞ! 自然をもっといたわれ。お前の弓でどれだけの生物に迷惑をかけるか、ちゃんと理解しているか?」

「うっ、ならもっと弱めに撃てばいいですか?」

「そういう問題ではない。お前の性格ならきっと2つ目のクレーターを作るだろう。だからアリア、お前が矢を放つのは戦争だけだ。期間限定だ!」

「その手には乗りませんよ! 女性が皆期間限定に弱いと思ったら大間違いです! いいから特訓行きましょうよ!」

「嫌だね。断る!」

「絶対行きますよ。意地でも連れて行きます。」

そう言ってアリアは俺の白衣をつかみ、引きずっていこうとした。

「待て! 俺の大事な白衣を引っ張るな! くそ、その細い腕のどこからそんな力がぁ!」

壁がなければ為すすべなく連れていかれただろう……。だが幸いなことに宿の入り口が狭かったため、俺はそこに引っ掛かって踏ん張れた。

「悪く思うなよアリア……。神様はお前みたいなワガママ少女より、周りのことをよく考える紳士な俺に微笑んだみたいだ。」

「知るか〜!」

アリアの気合いは、その秘めた力を全て引き出し、引っ張られた俺は宿の入り口の壁を貫通した。

その全容を見ていた店主のおばさんは、笑いながら修理代を請求してきた。まぁ、当然のことであるが……。

お金はアリアがロベルトさんからもらった分があるので困らなかったが、慰謝料として宿代がずっと2倍になることになった。

いろいろと迷惑な奴だと思いながら、気がつけば夜になっていた。結局今日はなにもしていない。

明日から竜の国に攻め込むことになったが、いろいろと不安なことがある。

1つはアリアの発言だ。嫌な予感とはどういうことだろう。

もう1つはアリアの親友のことだ。竜でもなく人でもないとか、もう訳がわからない。

そんなことを考えていたせいで、なかなか眠りにつけなかった……。





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