転移先での国取り合戦

てんとう虫

第一章4話 王都へ

長い間眠っていたような余韻が残る……。ルナによって異世界転移を果たした俺は、王都郊外にある小さな村、ホーキ村の前にとばされたようだ。

とりあえず中に入り、ブラブラ歩いていると――

「よぉ、兄ちゃん。見ねぇ顔だな。どっから来たんだい?」

若干強面の男がカボチャをいじりながら、軽い感じで話しかけてきた。

「日本と言いたいところだけど、ゲートって言った方がいいかな。」

「へぇ、最近は珍しいね〜。転移してきたのかい? まぁ、せいぜい頑張れよ!」

「逆に質問なんだけど、カボチャで何してるんだよ?」

「あぁ、これね。ジャック・オ・ランタンだよ。カボチャをくりぬいて中にランプをいれる照明器具で、カロウィーンていう人の国特有の伝統行事で使うのさ。」

名前が微妙に違う気がするが、現実世界と同じ行事もあるらしい。
 
「ラキュラ! 時間がないから早くしてね。」

突然立場の高そうなおばさんがやってきた。

「分かってるよ。それより聞いてくれよ、ゲートから旅人が来てるんだぜ! びっくりだろ?」

「まぁ、珍しいわね。これからどこに行く予定なの?」

「俺は……」

と、言いかけたところで迷った。そういえば行く宛なんて全く無い。かといって、そのまま伝えればただのニートじゃねぇか!

「――隣町です。」

  ――何言ってんだ俺はぁぁぁ!――

適当です。完全に適当です。ああ、このまま小さくなりたい。そういえば、ロベルトさんどこだよ! 連れてきておいて放置じゃん! ひどすぎるよ。

「あんた王都にいくの? 士官でもするなら、命は大切にしなさいよ。」

――なんたる幸運! これでロベルトさんに会える! ――
「分かってますよ。ちなみにどの方角に行けば着きますか?」

「南だ、ここは王都の郊外だが、馬車をだしてやるから、半日もかからず到着するだろう。」

さっきまで黙っていたラキュラが、答えてくれた。

「気を付けてね。」

おばさんとラキュラが見送ってくれた。
親切な村だったけど、馬車がちょっと汚い……。

希望に胸を踊らせ、俺は馬車を進めた……。

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