異世界モンスターブリーダー ~ チートはあるけど、のんびり育成しています ~

柑橘ゆすら

竜宮城



 プクプクプクプク。
 潜水魔法を使って海の中に潜っていく。

 さてさて。
 肝心の亀モンスターは……いた!

 ちょっ。
 少しくらいは手加減してくれよ!

 俺が海の中に潜った頃には、既に亀モンスターはだいぶ先の方を泳いでいるようであった。


(クラーケン! 力を貸してくれ!)


 スキル以外の部分で初めて活躍する機会が巡ってきた。

 少し見栄えは悪いかもしれないが、クラーケンに乗れば自分で泳ぐよりも早く移動することができるだろう。

 コンタクトのスキルを使用すると、クラーケンは直ぐに俺のところまで戻ってきてくれた。

 よーし。
 あとはこいつの体にしがみついて……って!

 なんだこれは!?


 ヌルッヌルッ。
 ヌルッヌルッ。ヌルッヌルッ。


 表面が粘膜に覆われたクラーケンの体は、ヌルヌルと滑って掴まることができない。


「クラーケン……お前ってやつは……」


 せっかくの活躍の場だというのに間の悪いやつである。

 やはりこいつの取柄は『筋力値上場(大)』だけだな。

 これからは『筋力値上場(大)さん』と呼ばせてもらうことにしよう。


「キュキイイイイィィィ!」


 もしかしたら俺の思考を読み取られたのかもしれない。
 顔をタコのように赤くしたクラーケンは見るからに怒り心頭の様子であった。


「ちょっ!? まっ……」


そこで更に驚くべきことが起こった。

何を思ったのかクラーケンは触手を使って、俺の体をガッシリと掴んだのである。


「んんぎゃああああぁぁぁぁ!」


 クラーケンはそのまま超スピードで亀モンスターの後を追っていく。

 うげぇ……。気持ち悪いっ!

 クラーケンのヌメヌメした触手が俺の体の至るところを弄っている!

 ああ。
 俺はたった今……凌辱される女騎士の気持ちが分かったような気がするよ。

 女騎士さん。
 今まで「口では嫌がっていても体は感じているんだろ?」とか疑っていてすいませんでした。

 このヌメヌメの感覚は本当に不愉快の一言に尽きる!

 このサービスカットは正直、何処に対する需要もないだろうなぁ……。


 ~~~~~~~~~~~~


「ん……? もう着いたのか……?」


 それから。
 10分くらいはクラーケンの触手の中にいただろうか。

 ふいにクラーケンの触手から解放されたので、周囲の状況を窺がってみる。


「な、なんじゃこりゃー!?」


 その瞬間、俺は絶句した。

 竜宮城。
 竜宮城である。

 高さは30メートルくらい。
 城と呼ぶには少し小さいかもしれないが、海の中にこれほどの建築物が建てられたことに驚きである。

 一体、何故?
 どうしてこんなところに建物があるのだろうか?

 疑問を抱いた直後であった。
 まるで俺のことを誘うようかのように竜宮城の門がゆっくりと開く。


「――ようこそ。人魚城へ」


 レミス・リトルフォールド
 性別 :女
 年齢 :321


 1人の少女が俺の前に現れる。

 レミスだと……!?
 ということは、この子が巷で噂の天候を操る力を持った魔族なのか……!?

 背は低い。
 身長150センチにも満たないくらいである。

 顔つきは幼く、321歳という年齢ながらもシエルと同じくらいに感じられた。


「初めまして。わたくしの名前はレミス。レミス・リトルフォールド。周りの方々からは、人魚姫レミスと言われておりますわ。貴方がリトル・タートルの恩人さんですね」

「ああ。はい。たぶんそういうことになるんじゃないかと思います」

「うふふふ。わたくしは貴方と会える日を心待ちにしておりましたの」


 困ったな。
 率直に言ってレミスさんは格別な美少女であった。

 もし地球にお持ち帰りできたら「1000年に1人の美少女」とか言われて各種メディアで取り上げられそうなレベルである。


「? わたくしの顔に何かついていますの?」

「い、いえ! そういうわけではないです!」


 前回の竜王女クルルの一件があって以来、王女だとか姫だとかに対して個人的には不信感があったのだが……良い意味で期待を裏切ってくれた! 

 やっぱり姫属性の女の子は可愛くないとダメだよな。


「どうぞ、中へ。ソータさまにはリトルタートルを救って頂いたお返しをしたいと考えておりますの」


 分かっている。
 優しそうな顔をしているが、レミスさんはかつて魔王軍の師団長を務めたほどの高名な魔族である。

 安全性だけを考えるのならば誘いを受けるべきではないのかもしれない。

 だがしかし。
 虎穴に入らざれば虎子を得ず。

 せっかく手に入れた美少女とのお近づきのチャンスを無駄にはしたくない。

 そう考えた俺は周囲に警戒を払いながらも竜宮城――改め、人魚城の中に入っていくのだった。

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