異世界モンスターブリーダー ~ チートはあるけど、のんびり育成しています ~

柑橘ゆすら

合法セクハラ




 最初に言っておくと、決して俺はホモではない。

 普通に可愛い女の子が好きな異性愛者である。
 そこだけは本当に信じて欲しい。


「クッ……。約束通り来てやったぞ。カゼハヤ・ソータ……」


 日が沈んで部屋の中の温度が少し下がってきた夜。
 俺は使用人室にいるメイドを部屋の中に呼びつけていた。

 丈の短いスカートの中からムチムチの太モモを覗かせる美少女の名前は、ロスト・トリザルティ。
 色々と訳があって♂から♀にと性転換を遂げたサキュバスの美少女である。


「よう。ロスト。例のものは身に着けて来たんだろうな?」

「~~~~っ!」


 ロストは頬を赤らめながらもモジモジと内モモを揺らす。


「まぁ、今から確かめれば分かることか。【さぁ、服を1枚ずつ抜ぐんだ】」


 魔物使いは契約した魔物に対して、絶対服従の命令を下す能力を持っている。
 俺の命令を受けたロストは恥じらいながらも、着ているメイド服をゆっくりと脱ぎ去っていく。


「クソッ……。一体なんなのだ!? この下着はァァァッ――!?」


 ロストは絶叫していた。
 何を隠そうロストが身に着けるよう命令した下着は『我ながらよく見つけてきたな』、と自分で自分を褒めてやりたくなるような恥ずかしいデザインをしていた。

 胸の部分はギリギリ乳首だけが隠れるような過激なスタイルであり、お尻の部分なんかは、ほとんど丸出しの状態であった。


「この色情魔めっ! 仮にもボクは精神的には男なのだぞ? 貴様は女の体をしていれば誰でも良いというのか!?」


 いやいや。
 サキュバスであるお前にだけには、色情魔呼ばわりされたくないって。

 痴女丸出しの格好で説教されてもなぁ。


「……勘違いしてもらっちゃ困るぜ。これはお前を更生させるために罰を与えているだけさ」


 ロストのことも人聞きの悪いことを言いやがる。

 そう。
 これは決してエロい意味ではない。

 もともと男であるロストにとっては、エロい下着を身に着けるのは死ぬほど屈辱的なことだろう。

 イカサマカジノを運営して多くの人間からカネを騙し取ったロストは、本来であれば牢屋の中に閉じ込めておかなければならない大罪人である。

 だから俺はこうして罰を与えることによって、ロストに更生を促しているのである。
 故にこれはエロい意味ではない。エロい意味ではないのである。


「さてと。せっかくだし。【その格好のまま、肩でも揉んでもらおうかな】」

「クッ……。この鬼畜が……!」


 新たに命令権を与えるとロストは悔しそうに歯ぎしりをする。

 ぬおっ!
 ロストのやつ……なかなか上手くマッサージするじゃないか!

 前々から思っていたのだが、ロストは家事について万能だったり、何かと器用なやつである。

 これからはちょいちょい呼び出して肩揉みしてもらおうかなぁ。


「ちょっ。おいっ。ロスト……!」

「ん……? どうかしたか?」


 こ、こいつ……!
 まさか気付いていないのか……!

 そうだよな。
 魔物配合のスキルによって女の体になったのは、つい最近のことだから、異性との距離感が掴めていないのだろう。

 しかし、だからって無自覚のまま、おっぱいを背中に押し当てられると、流石にこっちが恥ずかしくなってくるんですけど!?

 いや。
 俺はホモじゃないから全然ドキドキはしないけどね。

 どちらかというとTS属性のヒロインとかは苦手にしている方だし。
 他人の性癖についてとやかく言いたくはないのだが、TS好きな奴に関してだけは少しだけ将来が心配である。


(クソッ……! カゼハヤ・ソータ……。この屈辱、いつか100倍にして返してやる!)


 俺が頭の中で様々な言い訳を巡らせている傍。
 背後から肩を揉んでくれているロストは、コンタクトのスキルによって恨めしそうに心の声を漏らすのであった。

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