異世界モンスターブリーダー ~ チートはあるけど、のんびり育成しています ~
VS 偽魔王
それから更に30分後。
キャロライナのナビゲートに従って屋敷の中を探索した俺たちは、ついに目的地に到達する。
「間違いありません。この奥に件の魔族がいるようです」
「ふーん。ここがボスの部屋ってわけね」
「…………」
慣れないことをしたせいで体の中にドッと疲れがたまっている。
シエルの作った魔剣の威力が凄かったのだろうか?
幸いなことにグールとの戦闘事態は全く苦戦することがなかったのだが……。
その精神的ダメージは計り知れないものがあった。
戦いは終わっても、俺の服に付着したネバネバしたグールの体液は消えることはなかった。
俺は今……猛烈に怒っている。
どうして俺はこんなに理不尽な目に合わなくてはならなかったのだろうか……。
クソッ!
これもどれも全て屋敷の中に住み着いたとかいう魔族のせいだ!
こうなったからには容赦をしない!
ギタギタのメタメタに蹴散らして鬱憤を晴らしてやることにしよう。
「……よし! いくか」
決意を新たにした俺が部屋の扉を開けた直後であった。
ユウコ
性別 :女
年齢 :521
意外!
突如として俺の視界に飛び込んできたのは、クルウルの縦ロールの髪型をした1人の美少女であった。
気のせいかな?
この子……以前に何処かで会ったような気がするのだが……。
その少女はどういうわけか着替え中だったらしい。
「ぎゃわああぁぁぁっ! な、何を見ているんじゃ貴様はぁぁぁl!?」
舌足らずのその子の声を聞いた俺は、ようやくそこでピンときた。
間違いない。
この子はセイントベルの墓地にいたレイスのユウコである。
以前に会った『魔族モード』の姿と違い、『人間モード』の姿に変わっていたから気付くのが遅れてしまった。
というか……なんだろう。
このラブコメ漫画のラッキースケベみたいな展開は……?
先程までのピリピリとした空気をぶち壊しである。
「き、貴様はあの時の!? どうして貴様がここにおるのじゃ!? は、早く! どっかいくのじゃ!」
俺に下着姿を見られたユウコは茹でたタコのように顔を赤くしていた。
「色々とツッコミたいことがあるんだけど……ユウコって感情がないんじゃなかったの?」
「…………」
尋ねると、ユウコは仰々しく天に向けて腕を突き出して格好良いポーズを取る。
「ふっ。当然じゃ。妾は貴様たち人間とは違い……300年以上の時を生きているからのう。感情などという非合理的なものはとうの昔に捨てたのじゃ」
「そうか。なら男に裸を見られても問題ないんじゃないか? それともまさか……恥ずかしいという感情は残っているのか?」
「……ウグッ」
痛いところを突かれたのか、ユウコは言葉を詰まらせる。
「も、もちろんじゃ! 感情のない妾は、男に裸を見らせようとも何とも思わんからのう!」
半ばヤケクソになりながらも自らの肢体をさらけ出すユウコ。
今ので確信したのだが、このユウコという魔族は生粋の中二病患者のようである。
分かる。
気持ちはよく分かるぞ。
かくいう俺も中学生くらいの頃は『感情のない俺KAKEEE』って考えていた時期があったしな。
誰もが1度は通る道である。
それにしても……なんてチョロい子なんだ。
上手い感じに口車に乗せたことにより合法的に下着姿を見る権利をゲットしてしまった。
「ユウコ。貴方はここで何をしているのですか?」
「メイド長!? 何をするというか……元々ここはユウコの家なのですが……。妾は単に自分の部屋で着替えを行っているのです」
「…………」
下着姿のまま不安気な眼差しでユウコは答える。
ふむふむ。
なんというか今回の偽魔王騒動の真相がようやく見えてきた気がするな。
「ねえ。ソータ。これってつまり……どういうことなの?」
「ソータさんは……この人と知り合いだったんスか!?」
墓地探索の時にボールの中にいたアフロディーテ&シエルは、いまいちピンと来ていないらしい。
俺は二人に対して補足を交えながらも、ユウコから色々と事情を聞くことにした。
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