異世界モンスターブリーダー ~ チートはあるけど、のんびり育成しています ~

柑橘ゆすら

VS アイアンゴーレム



「グゴオオオオオオォォォォ!」

 俺たちの前に現れたアイアンゴーレムは開口一番、耳をつんざくような咆哮を上げる。


「ご主人さま! お気をつけて! このモンスターは、眠りを妨げられて怒っているようです!」

「ああ。分かってる!」


 たぶんだけど鉱石を着服するために作った隠し部屋は、ゴーレムにとって凄く寝心地の良い場所だったのだろうな。

 せっかく発見したお宝であるが、簡単には持ち帰らせてはくれないらしい。


「くらえっ! 一撃必殺!」


 だがしかし。
 俺にとってこのピンチは……強力なモンスターを使役するチャンスである!

 相手がどんなに強力なモンスターであろうともカプセルボールを命中させれば関係ない。


「なにィ!?」


 今、たしかにボールが当たったはずだよな?
 どうして捕獲することが出来ないんだ!?


「グゴオオオオオオォォォォ!」


 そうか。分かったぞ!

 体に纏わりついた泥が邪魔をしていたんだ!

 数年……いや、数十年間、地面の中で眠っていていたのだろう。
 アイアンゴーレムの体には見事なまでの『泥の鎧』が完成していた。

 普通の戦闘であれば防御力が皆無の『泥の鎧』など気にも留めないだろう。

 しかし、ボールを投げて接触判定を得ることがキモである俺にとっては厄介なことこの上ない。

 今度はアイアンゴーレムの攻撃。
 アイアンゴーレムは人間の体ほどのサイズがある拳を地面に俺に対して振り下ろす。


「どわっ」


 動きはそれほど速くなかったが、その威力は絶大であった。
 先ほどまで俺が立っていたはずの地面は爆弾が落ちた後のように抉れていた。


「ふふふ! 絶体絶命のピンチってところかしら。ここはアタシに任せなさい!」


 颯爽と俺の前に駆け付けたアフロディーテは、大きな胸を張ってアイアンゴーレムの前に立つ。


「おい! 危ないから下がってくれ!」

「心配ご無用。アタシのステータスを忘れたの? 地上に降りてステータスは下がっちゃったけど生命力だけは元のままなんだから!」


 言われてみればそうだった!
 数値にして2万を超える生命力を有するアフロディーテならばアイアンゴーレムからの攻撃にも耐えることができるのかもしれない。


「さぁ! かかってきなさい! ゴーレムちゃ……ふぎゃっ!」


 アイアンゴーレムはその巨体を活かしてアフロディーテの体を押し潰す。


「ふふふ。効いたわよ……! 愛と美の女神であるこのアタシを倒すには貴方の体は小さすぎたようね」 


 ス、スゲー! 本当に無傷だよ!

 すまん。アフロディーテ!
 今の今まで俺はお前のこと無能だと思っていたわ。

 この瞬間だけは……お前のことを完全に見直したよ! 


「今よ! キャロ!」

「まったく……貴方という人は……」 


 アフロディーテの視線の先を追ってみると、そこには背中から2枚の羽根を生やして宙に浮くキャロライナの姿があった。


「ウォーターストーム!」


 キャロライナが呪文を唱えた次の瞬間。
 アイアンゴーレムの体に向かって大量の水が放たれる。


「そうか……! 水で泥を流しているのか!」


 キャロライナの水魔法はアイアンゴーレムに対して直接的なダメージを与えられているわけではなかったが、『泥の鎧』を洗い流すのには十分な威力を秘めていた。


「今です! ご主人さま!」

「よし! 今度こそ!」


 アフロディーテ&キャロライナのサポートを無駄にするわけにはいかない。
 2度目に投げたボールは見事にアイアンゴーレムの体に命中する。

 どうやら今回は何事もなくモンスターの使役に成功したらしい。
 カプセルボールは眩い光を発してアイアンゴーレムの巨体を吸い込んでいく。

 まったく……今回の遠征は味方に助けられてばかりだったな。

 こうして俺は超強力なモンスターを持ち帰ることに成功するのであった。


●使役魔物データ

 アイアンゴーレム
 図鑑NO 761
 種族  岩族
 等級  C
 レベル 1
 生命力 80
 筋力値 180
 魔力値 10 
 精神力 8

 スキル
 岩石弾


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 岩族の中位種族となるモンスター。
 体の一部を高速で射出する遠距離攻撃を得意としている。
 同名モンスターと合体することで強力なモンスターに進化する可能性を秘めている。

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