異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~
砦の攻防(東門編)
一方、ところ変わってここは、ロードランド国境の東砦である。
元々はこれと言って何の変哲もないシンプルな作りの東砦は、1人の少女の手によって歪められて、歴史に名を残すかのような《大迷宮》に変貌を遂げていた。
暗闇の中、迷宮に足を踏み入れた兵士たちは阿鼻叫喚の地獄に突き落とされていた。
「うわっ! うわああああああ!?」
「来るな! 来ないでくれえええええ!?」
ダンジョンの中で彼らを待ち受けていたのは、幾重にも張り巡らされたトラップと凶悪なモンスターたちである。
ある者は底の見えない落とし穴にハマり、また、ある者はサラマンダーに体を食い千切られていた。
「うふふふ。またまたDPゲットです」
逃げ惑う男たちの様子を満足そうに別室で眺める1匹の骸骨がいた。
彼女の名前はナツメ・ユミ。
それぞれが物語の主人公級の力を持っているとされるナンバーズにおいて、【09】の地位に就く少女だった。
生前は病弱の美少女だったユミであったが、来世では健康な体に生まれ変わりたいと願い続けた結果、骸骨のモンスターとして《人外転生》を遂げることになる。
ダンジョンクリエイト@レア度 詳細不明
(自由にダンジョンを創造するスキル。ダンジョンの想像には一定のDPを消費する)
異世界転生時にユミが授かった固有能力は、《ダンジョンクリエイト》。
DPという特殊なシステムを利用して、自由にダンジョンを創造することのできるスキルである。
DP獲得の手段は幾つかあるが、中でも最も効率の良い方法は、ダンジョンの中で迷い込んだ人間を殺すことだった。
今回の戦いで設立したダンジョンは、保有していたDPの9割を継ぎ込んで作成したものだった。
だからユミは消費したDPを少しでも回収しようと躍起になっていたのである。
「ルーシーさん。そちらに敵の集団が行きましたよー」
ユミが水晶玉に語りかけると別の部屋で待ち伏せをしていた1人の少女に声は届く。
この水晶玉は《ダンジョンコア》と呼ばれるものであり、スキルホルダーがダンジョン全体を把握、管理するために使用する代物だった。
「……やれやれ。人遣いの荒いお嬢さまだなぁ~」
何処からともなく聞こえてきたユミの指示を受けて、溜息を吐く少女の名前はルーシー・ルゥ。
外見だけで判断するならば、元気にポニーテールを揺らす美少女なのだが、ルーシーの前世はブラック企業のSEの仕事をしていた中年のサラリーマンだった。
何の因果か異世界で美少女に転生を遂げたルーシーは、前世の知識を活かして邪神対策本部のシステム部門を担当していたのである。
「でもまぁ、この状況……。ボクの新兵器の試運転にはちょうど良い機会かもね」
ナンバーズの中にあっては珍しく戦闘向けのスキルを保有しない、ルーシーの戦い方は、特異なものであった。
「な、なんだ……! あれは……!?」
「ば、化物だ……!?」
兵士たちの前に全長5メートルを超えようかという巨大な金属の塊が立ちはだかる。
銀色の装甲が眩しいその機体の名前は《絶曵》と言った。
合計で8本の腕を同時に動かすことを可能にした兵器は、ルーシーが組み立てたオリジナルの戦闘用人型ロボットである。
「そぉぉぉ! れえええええ!」
ルーシーが運転席のレバーを倒したその直後。
戦闘用人型ロボット《絶曵》は歩き始めて、足元にいる人間たちを踏み潰す。
「ぐあああぁぁぁ! だ、誰か! あの怪物を止めてくれ!」
「無理だ! あんなん、どうしろって言うんだよ!?」
そこから先は一方的な展開であった。
合計で4本の剣と4丁の銃を同時に操る《絶曵》を前にした兵士たちは、次々に蹴散らされて行くことになった。
「くぅ~。やっぱり良いな~。ロボ最高!」
男たちの断末魔の叫びもルーシーの耳には届かない。
前世はロボットアニメの熱狂的なファンだったルーシーにとって、自ら組み立てたロボットで戦うのは何よりの生き甲斐だったのである。
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