異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~
暗殺者の失態
一方、その頃。
ここは悠斗の屋敷に作られた天井裏である。
一般的に天井裏と言うと、整備の行き届きにくい埃にまみれた場所であるが、悠斗の家に限ってはそのイメージに反している。
家事に対して妥協のできないリリナの手によって管理されたこの家の天井裏は、何時でもピカピカに整備されていた。
(……コノエ・ユート。噂通り奇妙な術を使う男です)
人気のない天井裏で1人の少女が息を潜めていた。
彼女の名前はサクラ。
凄腕の暗殺者の家に生まれ、この世界では珍しい黒色の髪の毛を持った少女である。
とある理由により、悠斗に対して恨みを抱いていたサクラは、悠斗抹殺という目的を掲げて屋敷の中に潜伏していた。
肌に密着するタイプの黒色のキャットスーツに身を纏ったサクラからは、洗練された大人の色香が漂っていた。
(……ハイヒール!)
呪文を唱えたその直後、サクラの掌からは癒しの光が放たれる。
サクラは肩で息をしながらも、スケルトン(美少女)たちとの戦闘で負ったダメージの治療に励んでいた。
(……思った以上に体力を消耗しますね)
ここに来るまでの道も平坦なものではなかった。
屋敷に侵入するなりサクラを襲ったのは、木の化身、岩の化身と言った悠斗が《魂創造》のスキルによって悠斗が作り出したオリジナルのモンスターたちである。
極めつけにサクラを苦しめたのは、1人1人が驚異的な戦闘能力を持ったスケルトン(美少女)たちであった。
一体どれほどの権力と財力あれば、これほどまでに優秀な人材を大量に雇えるというのだろうか?
美貌と戦闘能力を兼ね備えたスケルトン(美少女)たちの存在は、これまで様々な権力者の屋敷に侵入していたサクラですらも度肝を抜かれるものがあった。
(……しかし、ここまで来ればワタシの勝利は目前です)
相手が歴戦の猛者であろうとも関係がない。
闇に紛れての不意を仕掛ければ、どんな条件であろうともターゲットを仕留めることのできる絶対の自信がサクラの中にあった。
(……来ましたね!)
コツコツと廊下を歩く音が聞こえてくる。
天井の開いた直径1センチに満たない隙間から様子を確認すると、黒髪の少年がこちらに向かって歩いてくるのを確認することができた。
サクラは胸元に隠していた短剣を手に取ると、事前に切り込みを入れていた天井板を思い切り蹴り破る。
バキリッ!
衝撃に耐えかねた天井の床は、見事なタイミングで打ち破られることになった。
(……死ね! コノエ・ユート!)
細切れになった木片と同時に落下するサクラは、悠斗の首筋に向かって手にした短剣を振り抜いた。
失敗したらターゲットからの反撃は必須である。
暗殺者に求められるのは、どんな緊張の中でも必殺のチャンスをものにする胆力であった。
シュパンッ!
それは――時間にすると1秒にも満たない一瞬の出来事であった。
凄腕の暗殺者であるサクラの辞書に失敗の二文字はない。
サクラは悠斗の首筋深くに刃物を入れることによって。子気味良い音と共に頭部を胴体から分離された。
(あ……れ……!?)
だがしかし。
確実に人間の首を切り落としたはずなのだが、サクラの手に残っていたのは、とても生物を殺めたものとは思えない奇妙な感触だった。
それもそのはず――。
サクラが斬り付けたのは、悠斗の肉体本人ではない。
スキルによって作り出した水分身だったのである。
(な、なんですか……!? これは……!?)
コロコロと廊下を転がる悠斗の顔立ちは、サクラのことを嘲笑うようにディティールが無茶苦茶なものだった。
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