異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~

柑橘ゆすら

VS シーフエイプ



 ユナからの最終試練を課された悠斗は、予定通りに北の山を目指していた。


「ところで2人は温泉に行ったことってあるのかな?」

「もちろんです。北の山の温泉は、幻鋼流を極めるためには欠かせないものですから」

「せやな。たしかウチは8歳の時、ソフィちゃんは11歳の時に先生から同じ試練を与えられていたはずや」


 もしかしたら温泉に入るまでの道のりが、とんでもなく難易度が高いのでは? と危惧していたのだが、2人の口ぶりから察するにそういうわけでもないらしい。

 最終試練の難易度に対して身構えていた悠斗としては拍子抜けした気分であった。


「ただな。この山には1種類だけ注意せなアカンモンスターがおるねん」

「……そうですね。あのモンスターにだけは注意をしなければなりません」


 2人が気まずそうに顔を見合わせた直後であった。
 突如として複数の黒影が悠斗の背後から走り抜けて行く。


 シーフエイプ 脅威LV18


「「「ウキー! キキキキッ!」」」


 悠斗たちの前に現れたのは、体長50センチ程度の小型の猿モンスターであった。


「総員! 持ち物を確認して下さい! もしかしたら今の攻撃で既に何か盗まれているかもしれません!」

「ぬああああっ! しまった! オレ様の杖が! 杖がないぞっ!?」


 シーフエイプの1匹に杖を盗まれていることに気付いたミカエルは、ガックリと地面に膝を付ける。


「まったく。流石はミカエル。レジェンドブラッド最弱。シーフエイプごときにしてやられるとは……だらしがないですね」


 持っているバッグが無事だったことを確認したソフィアはムフンと鼻を鳴らす。


「あのな。ソフィちゃん。凄く言いにくいんやけど……」

「なんでしょう。サリー。ハッキリ言って下さい」

「下、見た方がええで?」 

「……はい?」


 サリーの指摘を受けて、視線を下げたソフィアは絶句した。

 何故ならば――。
 シーフエイプにスカートを盗まれたソフィアは、パンツを丸出しにしながらドヤ顔をするという醜態を晒していたことに気付いたからである。


「うわぁぁぁぁ! なんで!? どうして!?」


 ソフィアは動揺していた。
 いくらシーフエイプが素早いと言っても所詮はモンスターレベルでの話である。

 本来であればレジェンドブラッドであるソフィアの敵ではないはずであった。

 どうやら以前に訪れた時と比べて、シーフエイプはそのスピードに磨きをかけているようであった。 


「テメェ! コノエ・ユート! ソフィのパンツを見ているんじゃねー!」

「お前が見るなです! ポンコツラーメンッ!」

「ふごっ!?」


 ソフィアの全力パンチを受けたミカエルは、地面に転がってピクピクと体を痙攣させていた。


(……なるほど。ステータスをスピードに特化させたモンスターか)


 先程のやり取りで悠斗は、シーフエイプの性質を瞬時に理解していた。

 更に厄介なのはシーフエイプが極めて高い知能を持つという点である。
 ミカエルの杖、ソフィアのスカートを狙ったのは決して偶然ではない。

 シーフエイプには、相手の何を盗めば効率的に動きを封じられるかを考えることの出来る頭脳があった。


「この猿ゥ! ウチのブラジャー返せや! あれがないと胸が邪魔で戦いにならんねん」

「な、なんだって――!?」


 サリーの悲鳴を聞いた悠斗は思わず集中力を乱してしまう。

 頭の中を戦闘モードに切り替えようにもソフィアのパンツ、サリーのブラジャーのことが気になってしまう。


(クソッ。やるなシーフエイプ! 俺たちの弱点はお見通しっていうわけかよ!)


 ソフィアとサリーが警戒するのも頷ける。
 シーフエイプはこれまで悠斗が出会ってきたどのモンスターよりも、ある意味では厄介な性質を持っていた。


(逆に考えろ! ここで女の子の下着を見るよりも、シーフエイプを倒して好感度をアップさせた方が後々になって美味しい想いができる可能性が高い!)


 悠斗は得意の妄想を駆使して頭の中を強引に戦闘モードに切り替える。


「さぁ。俺の何を盗むんだよ? エテ公」

「「「ウキー! キキキキッ!」」」


 1人だけ集中力を乱さない悠斗のことを警戒したのだろう。
 シーフエイプは三位一体のチームプレイを以てして悠斗に向かって突撃する。


「――魔法のバックか。だと思ったよ」


 悠斗が持ち歩いている魔法のバックには、食料、武器、貴重品の他に、全財産の半分にあたる現金が入れられていた。

 警備に課題が残る屋敷の中に全資産を預けるよりは、一部をバック中に入れた方が安全だと考えていたのである。


「「「グギャッ!?」」」


 魔法のバックの強奪に成功して、慢心していたシーフエイプは突如として鈍い悲鳴を上げる。
 いかに相手が素早くとも、次にどう動くかが分かっていれば対策は容易い。

 あらかじめバックが盗まれることを予想していた悠斗は、素早くシーフエイプの首の骨を折っていたのである。

 悠斗はそこでステータスを確認。


 近衛悠斗
 固有能力: 能力略奪 隷属契約 魔眼 透過 警鐘 成長促進 魔力精製 魂創造 魔力圧縮 影縫
 魔法  : 火魔法 LV4(12/40) 水魔法 LV6(10/60)
       風魔法 LV5(13/50)  聖魔法 LV6(37/60)
       呪魔法 LV6(6/60)
 特性  : 火耐性 LV6(9/60) 水耐性 LV3(0/30)
       風耐性 LV4(6/40)


 風魔法の経験値が9上がっていた。
 シーフエイプから獲得できるスキルは風魔法プラス3らしい。


「――どうやらこの盗み合いは俺の勝ちだったみたいだな」


 思惑通りに能力略奪を発動させた悠斗は、誰に向けるでもなく呟くのだった。

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