異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~
ギリィの罠
それから。
悠斗たちパーティーの快進撃は続いた。
異常なまでに打たれ強いオーガたちを倒すのには時間がかかったが、息の合ったチームワークによってその後は危なげなく討伐数を重ねていくことになる。
2時間ほど探索をした頃には、集まったオーガの角は7本にも上っていた。
「気を付けて下さい。この奥に何かいます……!」
ルナの警告を受けて慎重に通路を進んでいく。
すると、そこにあったのは意外な光景であった。
「うおおおお! チクショォォォー! イテェ! イテェよぉぉぉ!」
「お、お前は……!?」
洞窟の天井が崩れたのだろうか?
シルバーランクの冒険者《百面相ギリィ》は、巨大な岩の下敷きになっていた。
「い、いいところに来た! 彗星のユート! 頼む! 一生のお願いだ! オイラの体を引っ張り上げてくれ~」
目に涙を浮かべながら訴えるギリィ。
以前までの挑発的な態度から一転。
無様に助けを求めるギリィを前にした悠斗は完全に拍子抜けしていた。
「ユートくん。無視していいぞ」
「そうですね。先を急ぎましょうか」
「ぎゃわあああぁぁぁ! この人でなし! 鬼! このままじゃオイラ……オーガのやつに食べられちまうよ~!」
素通りしていく悠斗たちを目の当たりにしたギリィは、声のボリュームを上げて命乞いを始める。
「あの、やっぱり私……あの人のことを助けたいんですけどダメでしょうか?」
「甘いぞ。ルナくん……。先に挑発をしてきたのはギリィの方だ。わざわざ敵に手を差し伸べる必要もあるまい」
「けど、私……このまま本当にギリィさんがオーガに食べられるようなことになったら……」
「…………」
いかに気に食わない相手とは言っても困っている人を見過ごすことはできない。
3人の中で最も純真なルナにとっては、ギリィを見殺しにすることは我慢できないことであった。
「仕方がないですね。俺が助けますよ」
セクハラの常習犯であるギリィに女性たちを近づけるわけにはいかない。
そう判断した悠斗は拳で岩を破壊することにした。
「ほら。これで立てるだろ?」
「すまねぇ……。岩の下敷きになって足の骨が折れているみたいなんだ……。よければ体を起こしてくれねぇか?」
「ったく。仕方ないな」
「すまねぇ……。すまねぇ……」
瞬間、悠斗は背筋に何とも言えない悪寒を感じることになる。
その時、悠斗はギリィの口角が釣り上げるのを見逃さなかった。
「んじゃまぁ、オーガの討伐はお前たちに任せたぜぇ。悪いが、オイラは戦えるコンディションじゃないんでね……」
ギリィはそんな台詞を残すと、出口に向かって歩いていく。
ケガした足を引きずるギリィの足取りは覚束ないものであった。
(なんだ……? 俺の思い過ごしか? 結局、何もしないのかよ)
不可解なギリィの言動を目にした悠斗は、思わず小首を傾げるのであった。
コメント