異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~

柑橘ゆすら

VS 憤怒の魔王1



「おい……!? 何をやっているんだよ……!?」

「ワハハハ! これがウチの奥義《火轟》やっ!」


 サリーの奥義を目の当りにした悠斗は驚きで目を見開く。
 何を思ったのかサリーは火属性の魔法を使用して自分の体に炎を灯し始めたのであった。

 彼女が身に付けている服は特別製で表面のみが燃えやすい材質で作られている。

 結果。
 サリーの体からは激しい火柱が上がることになった。 


「……いや。なんの意味があるんだよ?」

「分からんかなぁ」


 悠斗の言葉を受けたサリーはニヤリと白い歯を見せる。


「このままじゃ……火傷で死んじまうぞ?」

「正解! つまり……そうなる前に決着を付ける必要ができたいうことやっ!」

「うおっと」


 次にサリーの放った飛び蹴りは僅かに悠斗の体を掠めることになる。 

 その時。
 悠斗は直感的にサリーの奥義の意味を理解することになる。


(……なるほど。原理としては《鬼拳》と同じ構造か)


 人体というのは不思議なもので、生命の危機に瀕した時に最高の力を発揮することがある。
 つまり彼女は自分から『早期に決着を付けなければ焼死する』という状況に身をおくことにより、自らの潜在能力を引き出しているのだろう。


(……厄介だな)


 奥義を発動させたサリーの能力は、悠斗の予想を遥かに上回るものであった。
 流石の悠斗も現在のサリーを正面から戦って組み伏せるのは骨が折れる。


 かといって長時間放置をしていたら今度はサリーの命が危ない。

 
 彼女は文字通りの意味で『命を燃やして』戦闘能力を底上げしているのである。

 ここは手段を選んでいられる状況ではない。


「ウォーター」


 そう考えた悠斗は掌から勢い良く水魔法を繰り出して、サリーの体に灯っている火を消しにかかることにした。

 悠斗の攻撃を受けたサリーは、寝耳に水をかけられたかのような表情を浮かべる。


「なっ。ちょっ! 卑怯やぞっ!」

「卑怯なはずがあるか。この試合には魔法の使用を制限したルールはなかったはずだぞ」


 元はというとサリーの《火轟》も魔法を使用して発動したものである。

 水魔法を使って阻止したところで非難を受ける謂れはない。 


「それに自分の好みのタイプの女の子が危ないのに放っておけるはずがないだろう」

「……はい?」


 自分が口説かれていることに気付いたサリーは、ボンッと! 頭の上からヤカンのように蒸気を上らせる。


「なななっ。卑怯やぞっ!」


 前と同じ台詞を今度は違う意味で言う。
 幼少の時からサリーは、トライワイド最強の武術《幻鋼流》の道に邁進しており、同年代の男子と会話する機会に恵まれていなかった。

 アークたちと出会ってからは多少の改善はしたのだが――。
 サリーは異性に対する免疫が少なかったのである。

 悠斗はこの隙を見逃さない。
 知らぬ間にフィールドの隅に立たされていたサリーは悠斗に優しく押されて、大きく体のバランスを失うことになる。


「はい。俺の勝ち」


 場外に体を出されたサリーはポカンと呆気に取られた表情を浮かべる。


「ひ、ひきょ……」


 3度目の台詞を言うことは憚られた。

 何故ならば――。
 今回のことでサリーは、完全に相手の方が一枚上手だったことを痛感してしまったからである。


 これにて試合終了。


 勝負の決着を受けて会場が割れんばかりの喝采に包まれたその時だった。

 突如として闘技場の壁に爆弾が落ちたかのような穴が開くことになる。


 サタン
 種族:悪魔
 職業:七つの大罪
 固有能力:なし


「見つけたぞ。テメェがマモンを殺った……コノエ・ユートだな」


 壁の中から現れたのは禍々しいオーラを纏った1人の魔族であった。


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