異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~

柑橘ゆすら

VS 伝説の武術家



 それから。
 無敗の拳法家――ジャック・リーを打ち破った悠斗は、破竹の勢いでトーナメント戦を勝ち進んで行くことになる。


(う~ん。このところ強い魔族との戦いも多かったし……ちょっと期待し過ぎだったかな)


 これで賞金が貰えることを考えると美味しい仕事であるとも言えるのだが――。
 強い相手との出会いを期待していた悠斗にとっては色々と肩透かしの面も強かった。


「会場の皆さん! 大変なことが起こりました! なんと今大会の決勝のカードは双方共に初出場の選手になります!
 東ゲートから登場するのはこれまで全ての対戦相手を瞬殺してきた期待の大型新人――コノエ・ユート選手! 対して西ゲートから登場するのは今大会の紅一点! サリー・ブロッサム選手です。両選手の方々は入場をお願いします」


 審判に呼ばれて決闘アリーナに足を踏み入れると、何処かで見覚えのある紅髪ショートカットの少女がそこにいた。


「「あっ」」


 サリーと悠斗が声を上げたのは、ほとんど同時のタイミングであった。
 一瞬ではあるが、2人は白虎討伐の際に顔を見せ合ったことがあったのである。


「お前はたしか……名前は忘れたけどアークが目をつけているやつや! ハハハ! 良かった~。ようやくこれで少しは面白そうな相手と戦えるやん!」


 大会に肩透かしを食らっていたのはサリーの方も同じであった。
 試合会場こそ違えど、2人はこれまでの試合を全て一撃KO勝ちで進んできたのである。


(おかしいぞ。俺の予想では、決勝戦の相手はジャック・リーっていう奴になる予定だったはずなのだが……)


 豪快な笑顔を浮かべるサリーと対照的だったのは悠斗である。

 戦いたかったライバルと最後まで戦うことが出来なかった悠斗は、怪訝な表情を浮かべてた。

 ピコーン、と。
 突如として悠斗の脳裏に1つのアイデアが浮かび上がる。


「そうか! 分かったぞ! お前が無敗の拳法家――ジャック・リーだったんだな!」

「……はい?」


 悠斗から謎の疑いをかけられたサリーは自然と首をかしげる。


「ふふふ。隠さなくても良い。まさかジャック・リーが女の子だったとは意外だったぜ!」

「何を言っているんか分からんなぁ。リーはお前が倒したんやろ?」

「???」

「???」


 体を動かすことは得意でも細かいことを考えるのが苦手な2人は、頭の中にクエッションマークを浮かべていた。


「まぁ、えっか。せっかく大会に参加したんや。少しはウチのことを楽しませてくれよ~!」


 サリーはそう前置きすると、悠斗に向かって自慢の飛び蹴りを浴びせにかかる。


「うおっと」


 これまでの対戦相手とは明らかに次元が違う。
 予想以上に鋭い蹴りを目にした悠斗の口からは感嘆の声が漏れていた。


「ふ~ん。今のを避けるとは……流石やなぁ」


 サリーの連撃。
 紅髪の少女は悠斗がこれまで見たことがないような独特のフォームから蹴撃の嵐を浴びせにかかる。


(なんだこの子……! まるでタコみたいな動き方をするな……!)


 よく曲がる軟体動物のような手足から繰り出される攻撃は、悠斗の眼からも新鮮なものがあった。


「ワハハハハ! 避けてばかりじゃウチには勝てへんよ!」


 悠斗が反撃しようとしなかったのは、決して苦戦をしていたからではない。
 見たことのない武術を自在に操るサリーの動きを観察したかったからである。


(……仕方がない。そろそろ終わらせてやらないと舐めプと思われるかもしれないし……決着を付けておくか)


 いくら真剣勝負とは言っても女の子の体は出来るだけ傷つけたくはない。
 そう考えた悠斗は出来るだけ手加減をしてサリーの足を払うことにした。


「~~~~っ!」


 けれども、その直後。
 悠斗の脛に激痛が走る。

 努力でなんとか出来るレベルを超えている。

 サリーの肉体強度は、常識の範囲外のものであった。


「へへーん。ウチの《幻鋼流》は柔剛自在! 魔族の攻撃にだって耐えられるんや!」


 先程までの『柔』を活かした戦闘スタイルから一転。
 サリーは『剛』を活かしたパワーとスピード重視の戦い方に切り替えていく。


「……クッ」


 これまで見たことのない未知の武術を前にして悠斗は防戦一方の展開を強いられていた。
 柔と剛を織り交ぜたサリーの動きは悠斗に狙いを絞らせない。


(おかしいな。ウチの全く攻撃が当たらへん……?)


 一方で攻めているはずのサリーは、頭の中に拭いきれない違和感を覚えていた。
 絶対に不可避のタイミングで攻撃を仕掛けているにも拘わらず――相手の体を捉えきることができない。

 上級魔族にすら通用するはずの連撃を悠斗は余裕でいなして見せたのである。


(……手段を選んでいられる状況やないか)


 相手が一体どんな手段を用いて自分の攻撃を見切っているのかサリーには分からない。

 だがしかし。
 出し惜しみをしていては到底勝つことが出来ないということは、本能で理解することが出来た。


「仕方がない。これからキミにはウチの奥義を見せたげる」


 人間を相手に本気を出すのは何時以来だろうか。
 次にサリーが見せたのは、対魔族用に開発した彼女の究極奥義であった。

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