異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~

柑橘ゆすら

装備を整えよう

 

 魔法の検証を終えた悠斗は、クエストの完了報告をするために一度ギルドに戻ることにした。
 慣れない魔法を使ったせいか体にどっと疲れを感じている。

 この問題は今後、繰り返し魔法を使って行けば解決するのだろうか?

 今日は今後の課題について色々と浮彫になってきた1日であった。
 なまじ卓越した武術の才があるばかりに悠斗は、異世界での生活について少し侮っていた面があった。
 明日、討伐クエストに出かける際は、装備を充実させた万全の状態で挑むことにしよう。

「おめでとうございます。こちらがバット討伐クエストの報酬である400リアになります」

「……どうも」

「同時にユウト様には20QPが付与されることになります。これによりQRがレベル2に昇格致しました。明日からは更に難易度の高いクエストに挑戦することが可能になっています」

「分かりました」

 悠斗は更新されたギルドの登録カードを確認する。


 近衛悠斗
 QR2
 QP(10/20)


 どうやら後10PでQR3に昇格するらしい。
 QRの昇格は結構だが、現状のままではイマイチ難易度の高いクエストというのは気乗りがしない。
 今は難易度の低いクエストでコツコツと資金と経験を貯めるのが得策だろう。

「お渡しした報酬の使い道ですが……よろしければ帰り道にギルド公認商店で装備を整えるのに使用して下さい」

「え? そんなものがあるのですか!?」

「はい。詳しいことはお渡しした小冊子の中に書かれていたと存じますが」

「…………」

(そういう重要なことは口頭で伝えてくれよ!)

 等と思わない訳でもなかったが、悠斗は言葉を胸の中に押し込むことにした。
 破壊神乃怪腕ザ・ブレイカー固有能力ユニークスキルを所持しているエミリアを怒らせると後が怖い。
 それに出かける前にしっかりと小冊子に目を通さなかった自分の方にも非はあった。
 エミリアと別れた悠斗は、装備を整えるためギルド公認商店に向かうのであった。


 ~~~~~~~~~~~~


「いらっしゃい。おや。初めて見かける顔だね」


 アドルフ・ルドルフ
 種族:ヒューマ
 職業:ギルド職員 
 固有能力:鑑定


 鑑定@レア度 ☆
(装備やアイテムのレア度を見極めるスキル。魔眼とは下位互換の関係にある)


 店の中に足を踏み入れるなり悠斗のことを出迎えてくれたのは、無精髭を生やした筋骨隆々の中年男性であった。

「冒険者の方かい? クエストに出かけるのだったら装備を整えるのも良いが、まずは酒場でパーティーを組んだ方がいい。1人で討伐クエストに出向くなんて自殺行為も良いところだからな。ガッハッハッハ!」

「…………」

(だから……そういうことは早く言ってくれよ!)

 今回のクエストは武芸を積んだ悠斗だから何とかなったものの、全くの戦闘未経験者がソロで挑むのは無謀に過ぎるものだろう。

 しかし、そう考えると冒険者という職業はいよいよ怪しくなってきた。
 ただでさえ報酬金額は低めなのに、2人でパーティーを組めばその収入は2分の1にまで落ち込んでしまう。

 それとも……何処の世界も日雇いの仕事なんてそんなものだということなのだろうか?

 底辺労働者は搾取されるしかないということなのだろうか?
 悠斗は改めてここが現実の世界であるという事実を痛感する。

「装備を買いに来たっていうのなら、まずは初心者にオススメしたいのがこいつだな!」


 冒険者のナイフ@レア度 ☆
(駆け出しの冒険者が好んで使用するナイフ。使い捨てのナイフと比べると切れ味が格段に増している)


「……あー」

 言われてみれば納得である。
 ギルドから貰った《初心者支援セット》の中に入っていたナイフは切れ味が悪い。
 ナイフを専用のものに買い換えれば、素材を剥ぎ取る時間を短縮できるに違いない。

「こいつの定価は700リアだが……兄ちゃんは良い男だからな。今回は特別に600リアに負けておいても良いぜ」

(値段的には……妥当なところかな)

 異世界生活が2日目を迎えたところで悠斗は、大体この世界の貨幣価値を理解してきた。
 おおざっぱに言うと1リア≒10円くらいで間違いないだろう。

 切れ味の良い冒険者用のナイフであれば、定価がおよそ7000円で売られていることは不自然な話ではない。


 ロングソード@レア度 ☆
(駆け出しの冒険者が好んで使用する武器。使用感に癖がなく誰にでも扱いやすい)


「この剣はいくらですか?」

 店の中に飾られている剣を指差して質問する。

「ふむ。そいつの定価は1500リアだな。兄ちゃんは剣の腕に覚えがあるのかい?」
「……ええ。まあ、多少は」

 使用するシチュエーションを選ばないという意味では、メインとして使う武器は槍よりも剣の方を選びたい。

「それならさっきのナイフと合わせて合計2000リアでどうだ? 兄ちゃんは良い男だからな。今回は特別だぜ~」
「買います」

 悠斗は即決した。
 値段的にも妥当なところだと感じたし、何よりもここはギルド公認店である。

 個人が経営している店では、ぼったくられるリスクが付きまとうが、この店ではそういう事態は起こり得ないと考えても良い。
 それに《鑑定》の固有能力を所持しているアドルフなら見当違いな値段を付けられる可能性も低いだろう。

(1つ不満を挙げるのなら……この人が俺を見る視線が妙に熱っぽいところだが……)

 それに関しては気にしたら負けだろう。
 何処の世界にも変わった性癖を持っている人はいるということだ。

「ちなみにクエストで手に入れたアイテムってこの店で売ることも出来るのですか?」

 ギルド公認店の利点を踏まえた上で、悠斗は相談を持ちかけることにした。

「ああ。物にもよるが値段の付きそうなアイテムなら買い取るぜ」

「では鑑定の方よろしくお願いします」

 そう前置きした悠斗は、魔法のバックから次々にアイテムを出して行く。


 オークの槍  ×7本
 オークの杖  ×1本
 伝説のオークの宝剣 ×1本
 コボルトの煙管 × 1本
 冒険者の服   ×11着


 これで鞄の中のアイテムは大体、出し尽くしただろう。
 今後のことを踏まえて、オークの槍2本と冒険者の服4着は売らずに取っておくことにした。

「おいおい。ランク6!? 兄ちゃん。こいつを何処で……」

 アドルフは言いかけた所で口を噤む。

「……っと。これはマナー違反だったな。一応この店では冒険者が持ち込んだアイテムに対して詮索をしないっていうのがルールになっているんだ。俺たちの商売は信用が第一だからな。忘れてくれ」

「いえいえ。別にやましい物ではありませんよ。ちょっと知り合いから譲り受けまして」

 悠斗は平然とした口調で誤魔化すことにした。

「そうだな。オークの槍は1本800リア。杖は1100リア。冒険者の服は一着200リアで買い取ることが出来るが……他のアイテムに関しては、此処で買い取ることは出来ないな」

「……それは値段が付かないという意味ですか?」

「いや。そうじゃねえ。むしろ逆だ。高価な品だからこそ、買い取りが難しいってこった。こっちで買い取っても構わないが、一般的にレア度がランク3以上のアイテムは競売に掛ける方が高値が付く場合が多いぜ。
 ……と言っても《鑑定》の固有能力がない兄ちゃんには、分からない話だろうが。ギルド公認店では競売の出品に関する仲介も執り行っている。もしよければコイツは俺が預かってやろうか?」

「なるほど。では《伝説のオークの宝剣》と《コボルトの煙管》に関しては、競売にかけて貰えますか?」

「あい。分かった。それじゃあこれが、今日渡す分の8900リア」

「ありがとうございます」

「競売品の落札期間は48時間っていうのがギルドの取り決めになっている。つまりは明後日には換金されていると思うぜ」

「分かりました。色々と有難うございます」

 悠斗が店を出ようとするとアドルフは意味深に笑う。


「俺は職業柄これまで沢山の冒険者を見てきたが……兄ちゃんは只者ではないね。なんというか……大物になる雰囲気があるよ。今後の活躍、楽しみにしているよ」


「……それはどうも。けれど、あまり期待しないで下さいね」

 悠斗は角の立たないように適当な言葉を返す。

(……良かった。ひとまずこれで盗品に関する懸念は片付いたな)

 クエスト報酬の400リアと比較すると8900リアの臨時収入は途方もなく大きい。
 これで悠斗の所持金は64950リアにまで膨れ上がった。

 更にここに競売品の収入が加わることを考えると、今後の生活に大きな余裕が生まれたことは確かだろう。
 銀貨8枚と銅貨9枚を鞄の中に入れると悠斗は意気揚々と店を出るのであった。

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