失恋物語《ストラテジー》
第9話 ご飯にしますか? お風呂にしますか? それとも······わ・た・し?①
今日は普段通りにアンリと登校し、学校では詩織やクラスのみんなと過ごし、昼休みはアンリと詩織と一緒にご飯を食べ、帰りは詩織と共に帰る。
こう振り返ってみると、アンリと出会ってから一緒に過ごす時間がものすごく増えている。
今日はたまたま用事があるということで詩織と久しぶりに帰ったが、基本はアンリと帰っている。
詩織は俺たちのことを気にしてか一緒に帰らなくなっていたから懐かしく感じる。
「最近どうなの?」
「何がだ?」
「アンリとのことよ。進展してるの?」
ああ、そのことか。
妙にそわそわしてたから気になったけど、そのことは正直俺にも分からないんだよな......
「どうだろうな? 前から変わってない気がするけど」
「そう······。まあ、変な気は起こすんじゃないわよ」
「しねーよ。お前は俺のことをなんだと思ってるんだ」
「変態?」
真顔で聞かれた。
本心じゃないよな? ネタだよな?
「どうせ男子なんて胸なのよ。そう、胸······。貧乳に人権なんてないのよ······」
詩織は平らな自分の胸元を悲しげに見つめながら、ため息を漏らす。
「いや、その······なんだ。控えめな胸の方が好きだって人もいるし、そこまで悲観的になる必要もないと思うぞ」
「え? 優人はちっちゃい方が好きなの!?」
「? いや、俺はそんなこと──」
俺はそういう人もいると言っただけで、別に小さい方が好きとは言ってないんだが。
「も~素直じゃないのね。好きなら好きって言えばいいのに、ヘタレ優人」
「いや、ヘタレじゃ······って、おい待て! 誤解が──」
「もうもうもう。もっと好きになっちゃうじゃない」
色々と聞きたいことがあるのに、詩織は俺のことは何一つ耳を貸さず、別れの挨拶もなしに離れてしまった。
そして角を曲がり、完全に俺の視界から消えてしまう。
「明日にでも色々と誤解を解くか......」
おしゃべり好きな詩織のことだから、早めに釘を刺しておかないとべらべらと喋られてしまう。
「ただいま」
誰もいないはずだけど、なんとなく言ってしまう。
部屋に戻っても誰もいないというのは少し寂しいものがある。
これが一人で二人部屋を使っているデメリットだろうか。
だが、今日はいつもと違うようだった。
「お帰りなさい先輩。
ご飯にしますか? お風呂にしますか?
それとも、わ・た・し?」
ちゃんと鍵をかけ、誰もいないはずの部屋になぜかアンリがいた。
「じゃあ、アンリで」
「えっ!? い、いや······その······エ、エッチなのは良くないと思います!」
ピューーン!! という効果音がつきそうな程の速さで身を翻して部屋の中に入ってしまう。
前もそうだったけど、アンリは自分から言うのは得意な方らしいが言われ慣れていないらしい。
しかし困った。
アンリが今しがた入った部屋は俺の部屋で、このままずっと籠城されると困る。
コンコンッ
俺はアンリが入った部屋にノックをする。
回数はもちろん三回だ。
二回だと、トイレの空室を確認するものになってしまうらしい。
就活生は二回にしないように。
「············」
返事がない。
試しにドアノブを捻ってみるが、鍵がかかっているらしく開かない。
「アンリっ、開けてくれ」
アンリはさっき入ったばかりだし、聞こえていないはずがない。
「んっ······ダメですよ先輩。こんなにパンパンにして~。私が出して処理してあげますね?」
どうしてだろう......
今の言葉だけを聞くと、何か良からぬことをしているようにしか聞こえない。
というか、なんのことだ?
「何をしているんだ、アンリ?」
「タンスに大量に入っている本をチェックしています」
「そんなところに本なんてないぞ?」
俺の部屋にある本なんて、参考書ばっかのはず。
「先輩の趣味ってこんな感じだったんですね。てっきりいつも私の胸を見てきますし、巨乳の方が好きなのかと思ってました」
「はっ?」
アンリが言っている意味が分からなかった。
「この大量の本のことですよ。みんな小さい人ですね。先輩はロリコンだったんですか。だから、いくら告白されても断っていたんですね。高校生なんて眼中にないと」
なんとなくだが、からくりが読めた。
男子が野中さんの部屋チェックを逃れるために俺の部屋に勝手に入り、大量の本を隠していたのだろう。
「ああ、私はそんな先輩のことを好きになろうとしているんですね。考え直すべきなのでしょうか? あっ、でも私のことを好きになられると困るわけですし、これでいいんですかね? いや、でも私はロリ巨乳という最強の属性ですからね、手を出しちゃダメですよ?」
アンリの口は止まらない。
犯人は分かったわけだし、冤罪なのだから弁解しなければ、俺の高校生活が終了してしまう。
「アンリ、聞いてくれ。その本は俺のじゃなくてだな······」
「あ、もしもし詩織さん。今から先輩の部屋に来てくれますか? 一緒にキャンプファイヤーをしましょう」
『なっ、い、いきなりどうしたのよアンリ。キャンプファイヤーってどういうこと?』
「先輩の部屋からエロ本が見つかりました」
『オーケー分かったわ。今すぐ行く。ついでに優人も焼いて焼き肉パーティーでもしましょう。ふふふ』
「了解です。肉の調達は任せてください。ふふふ」
ピッ
携帯の切れる音がした。
ついでに俺の人生が終わる音もした。
こう振り返ってみると、アンリと出会ってから一緒に過ごす時間がものすごく増えている。
今日はたまたま用事があるということで詩織と久しぶりに帰ったが、基本はアンリと帰っている。
詩織は俺たちのことを気にしてか一緒に帰らなくなっていたから懐かしく感じる。
「最近どうなの?」
「何がだ?」
「アンリとのことよ。進展してるの?」
ああ、そのことか。
妙にそわそわしてたから気になったけど、そのことは正直俺にも分からないんだよな......
「どうだろうな? 前から変わってない気がするけど」
「そう······。まあ、変な気は起こすんじゃないわよ」
「しねーよ。お前は俺のことをなんだと思ってるんだ」
「変態?」
真顔で聞かれた。
本心じゃないよな? ネタだよな?
「どうせ男子なんて胸なのよ。そう、胸······。貧乳に人権なんてないのよ······」
詩織は平らな自分の胸元を悲しげに見つめながら、ため息を漏らす。
「いや、その······なんだ。控えめな胸の方が好きだって人もいるし、そこまで悲観的になる必要もないと思うぞ」
「え? 優人はちっちゃい方が好きなの!?」
「? いや、俺はそんなこと──」
俺はそういう人もいると言っただけで、別に小さい方が好きとは言ってないんだが。
「も~素直じゃないのね。好きなら好きって言えばいいのに、ヘタレ優人」
「いや、ヘタレじゃ······って、おい待て! 誤解が──」
「もうもうもう。もっと好きになっちゃうじゃない」
色々と聞きたいことがあるのに、詩織は俺のことは何一つ耳を貸さず、別れの挨拶もなしに離れてしまった。
そして角を曲がり、完全に俺の視界から消えてしまう。
「明日にでも色々と誤解を解くか......」
おしゃべり好きな詩織のことだから、早めに釘を刺しておかないとべらべらと喋られてしまう。
「ただいま」
誰もいないはずだけど、なんとなく言ってしまう。
部屋に戻っても誰もいないというのは少し寂しいものがある。
これが一人で二人部屋を使っているデメリットだろうか。
だが、今日はいつもと違うようだった。
「お帰りなさい先輩。
ご飯にしますか? お風呂にしますか?
それとも、わ・た・し?」
ちゃんと鍵をかけ、誰もいないはずの部屋になぜかアンリがいた。
「じゃあ、アンリで」
「えっ!? い、いや······その······エ、エッチなのは良くないと思います!」
ピューーン!! という効果音がつきそうな程の速さで身を翻して部屋の中に入ってしまう。
前もそうだったけど、アンリは自分から言うのは得意な方らしいが言われ慣れていないらしい。
しかし困った。
アンリが今しがた入った部屋は俺の部屋で、このままずっと籠城されると困る。
コンコンッ
俺はアンリが入った部屋にノックをする。
回数はもちろん三回だ。
二回だと、トイレの空室を確認するものになってしまうらしい。
就活生は二回にしないように。
「············」
返事がない。
試しにドアノブを捻ってみるが、鍵がかかっているらしく開かない。
「アンリっ、開けてくれ」
アンリはさっき入ったばかりだし、聞こえていないはずがない。
「んっ······ダメですよ先輩。こんなにパンパンにして~。私が出して処理してあげますね?」
どうしてだろう......
今の言葉だけを聞くと、何か良からぬことをしているようにしか聞こえない。
というか、なんのことだ?
「何をしているんだ、アンリ?」
「タンスに大量に入っている本をチェックしています」
「そんなところに本なんてないぞ?」
俺の部屋にある本なんて、参考書ばっかのはず。
「先輩の趣味ってこんな感じだったんですね。てっきりいつも私の胸を見てきますし、巨乳の方が好きなのかと思ってました」
「はっ?」
アンリが言っている意味が分からなかった。
「この大量の本のことですよ。みんな小さい人ですね。先輩はロリコンだったんですか。だから、いくら告白されても断っていたんですね。高校生なんて眼中にないと」
なんとなくだが、からくりが読めた。
男子が野中さんの部屋チェックを逃れるために俺の部屋に勝手に入り、大量の本を隠していたのだろう。
「ああ、私はそんな先輩のことを好きになろうとしているんですね。考え直すべきなのでしょうか? あっ、でも私のことを好きになられると困るわけですし、これでいいんですかね? いや、でも私はロリ巨乳という最強の属性ですからね、手を出しちゃダメですよ?」
アンリの口は止まらない。
犯人は分かったわけだし、冤罪なのだから弁解しなければ、俺の高校生活が終了してしまう。
「アンリ、聞いてくれ。その本は俺のじゃなくてだな······」
「あ、もしもし詩織さん。今から先輩の部屋に来てくれますか? 一緒にキャンプファイヤーをしましょう」
『なっ、い、いきなりどうしたのよアンリ。キャンプファイヤーってどういうこと?』
「先輩の部屋からエロ本が見つかりました」
『オーケー分かったわ。今すぐ行く。ついでに優人も焼いて焼き肉パーティーでもしましょう。ふふふ』
「了解です。肉の調達は任せてください。ふふふ」
ピッ
携帯の切れる音がした。
ついでに俺の人生が終わる音もした。
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