失恋物語《ストラテジー》
第4話 主人公は告白されます
俺は今日一日そわそわしていた······わけではない。
昔ならラブレターがくればドキドキしたこともあったが、今ではもう慣れている。
ただ、告白かと詩織に聞いたとき、ちょっと迷う素振りがあったのが少し気になった。
気にはなったが、特に変に意識することなく、いつも通りの一日を送る。
そして放課後、屋上で待っていると詩織経由で伝えられ、屋上へと向かった。
ガチャッ
屋上に繋がる扉を開く。
またフラなきゃいけないと思うと少し気が重い。
それでも俺は毎回ちゃんと相手にあって、話を聞いてから返事をするようにしていた。
俺も昔、同じ立場だったから告白がどれ程の勇気がいる行為なのか知っているからだ。
屋上に一歩踏み出すと、女の子の後ろ姿が見える。
腰まで届く長くて綺麗な金髪と、頭にちょこんと乗せられたベレー帽。
なかなか可愛らしい。
すると、扉が開く音に気付いたのか、女の子が振り向く。
ふわっと長い髪が揺れ、スカートを翻しながら振り向いたその子は、告白の直前だというのに、リラックスをした自然な笑顔を見せてくる。
整った顔立ちと、さらに目を引くのは顔よりももう少し下の部分。
まぁ、なんだ、俺も一応年頃の男なのだ。仕方ないだろう。
「あっ! 来てくれましたか先輩。私、アンリ・ルクセンブルクと言います。気軽にアンリ、と呼んでください。えっと······内容は詩織さんから聞いてますかね? じゃあ、早速なんですけど本題に入りますね」
「いや、ちょっと待って」
思わずアンリさんの言葉を遮ってしまった。
なんなんだろうこの子、俺の噂を聞いてないのか?
俺の返事なんて既に決まってあるというのに、なんでこんなに淡々と進められるのだろう?
普通はなんか、こう······緊張してうまく喋れないとかあるだろ?
「その······なんだ。俺の噂って知ってるか?」
「もちろん知ってますよ。残念ハーレム王子さん」
あー、それね。うん、知ってる。
誰が言い出したんだよそのあだ名。
「なら、分かるだろ? 俺がどう返事をするかって」
「あ、大丈夫ですよ。別に愛の告白ってわけではないんで」
「えっ?」
「いやー、先輩って女の子のことフッてくれるんですよね? そこがいいんです」
???
なんだ? 何を言ってるんだこの子は。告白じゃない? なら、何のために俺を呼んだんだ?
「私のことをフってくれませんか?」
「······」
は?
なんだ? 今、この子はなんて言ったんだ?
あれか? 主人公特有の難聴か?
いや、でも確かにはっきり聞こえたんだけどな......
「先輩? 聞いてますか?」
「······あ、あぁ」
「反応が薄いですね······。もう一度だけ言いますからちゃんと聞いてくださいよ?」
「うん······」
「こほん。えー、それでは言いますね。 先輩、私はまだあなたのことが好きではありません。だけど、私はあなたのことを好きになります。そして、告白します。だからそのときに私のことをフってくれませんか?」
「······」
今まで受けてきた告白は全て断ってきた。その中で、相手をなるべく傷つけないで断る方法も会得したつもりだ。
では、この場合はどうすればいいのだろうか?
「えっと······、俺は断ればいいんだよね?」
「はい、そうです。さすが先輩、物分かりが良くて助かります。『お前のことは好きじゃない』って感じで私のことを振ってくれれば大丈夫です。そうすれば私は失恋できます」
胸の奥がチクリと痛む。
『好きじゃない』という言葉があのときのことを思い出させる。
ここで断ると彼女を傷つけることになるのだろう。
だから俺は彼女の告白を受け入れるしかない。
結局は彼女をフることになるから、俺にとっても問題はない。
「分かった。えっと······これからよろしく?」
「はい! あ、そうだ。大丈夫だとは思いますけど、私のことは好きにならないでくださいよね。そうじゃないと意味がないですから」
「あぁ、大丈夫。その心配はいらない」
本当にそんな心配なんていらない。
だって俺はあのときから、もう二度と恋などしないと決めたのだから──
昔ならラブレターがくればドキドキしたこともあったが、今ではもう慣れている。
ただ、告白かと詩織に聞いたとき、ちょっと迷う素振りがあったのが少し気になった。
気にはなったが、特に変に意識することなく、いつも通りの一日を送る。
そして放課後、屋上で待っていると詩織経由で伝えられ、屋上へと向かった。
ガチャッ
屋上に繋がる扉を開く。
またフラなきゃいけないと思うと少し気が重い。
それでも俺は毎回ちゃんと相手にあって、話を聞いてから返事をするようにしていた。
俺も昔、同じ立場だったから告白がどれ程の勇気がいる行為なのか知っているからだ。
屋上に一歩踏み出すと、女の子の後ろ姿が見える。
腰まで届く長くて綺麗な金髪と、頭にちょこんと乗せられたベレー帽。
なかなか可愛らしい。
すると、扉が開く音に気付いたのか、女の子が振り向く。
ふわっと長い髪が揺れ、スカートを翻しながら振り向いたその子は、告白の直前だというのに、リラックスをした自然な笑顔を見せてくる。
整った顔立ちと、さらに目を引くのは顔よりももう少し下の部分。
まぁ、なんだ、俺も一応年頃の男なのだ。仕方ないだろう。
「あっ! 来てくれましたか先輩。私、アンリ・ルクセンブルクと言います。気軽にアンリ、と呼んでください。えっと······内容は詩織さんから聞いてますかね? じゃあ、早速なんですけど本題に入りますね」
「いや、ちょっと待って」
思わずアンリさんの言葉を遮ってしまった。
なんなんだろうこの子、俺の噂を聞いてないのか?
俺の返事なんて既に決まってあるというのに、なんでこんなに淡々と進められるのだろう?
普通はなんか、こう······緊張してうまく喋れないとかあるだろ?
「その······なんだ。俺の噂って知ってるか?」
「もちろん知ってますよ。残念ハーレム王子さん」
あー、それね。うん、知ってる。
誰が言い出したんだよそのあだ名。
「なら、分かるだろ? 俺がどう返事をするかって」
「あ、大丈夫ですよ。別に愛の告白ってわけではないんで」
「えっ?」
「いやー、先輩って女の子のことフッてくれるんですよね? そこがいいんです」
???
なんだ? 何を言ってるんだこの子は。告白じゃない? なら、何のために俺を呼んだんだ?
「私のことをフってくれませんか?」
「······」
は?
なんだ? 今、この子はなんて言ったんだ?
あれか? 主人公特有の難聴か?
いや、でも確かにはっきり聞こえたんだけどな......
「先輩? 聞いてますか?」
「······あ、あぁ」
「反応が薄いですね······。もう一度だけ言いますからちゃんと聞いてくださいよ?」
「うん······」
「こほん。えー、それでは言いますね。 先輩、私はまだあなたのことが好きではありません。だけど、私はあなたのことを好きになります。そして、告白します。だからそのときに私のことをフってくれませんか?」
「······」
今まで受けてきた告白は全て断ってきた。その中で、相手をなるべく傷つけないで断る方法も会得したつもりだ。
では、この場合はどうすればいいのだろうか?
「えっと······、俺は断ればいいんだよね?」
「はい、そうです。さすが先輩、物分かりが良くて助かります。『お前のことは好きじゃない』って感じで私のことを振ってくれれば大丈夫です。そうすれば私は失恋できます」
胸の奥がチクリと痛む。
『好きじゃない』という言葉があのときのことを思い出させる。
ここで断ると彼女を傷つけることになるのだろう。
だから俺は彼女の告白を受け入れるしかない。
結局は彼女をフることになるから、俺にとっても問題はない。
「分かった。えっと······これからよろしく?」
「はい! あ、そうだ。大丈夫だとは思いますけど、私のことは好きにならないでくださいよね。そうじゃないと意味がないですから」
「あぁ、大丈夫。その心配はいらない」
本当にそんな心配なんていらない。
だって俺はあのときから、もう二度と恋などしないと決めたのだから──
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