スロー・デスゲーム

青井さいこ

第一章 異世界への扉

プロローグ『デスゲーム』
――なんだよこれ......

血だ。こんな血の海は初めて見た。アニメや漫画などでは見るが、現実でまさかこんな大量の血を見るとは思わなかった。
体が寒くなってきた。目も開かない。


ーー嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ。


既に体に痛みは無く、全身が麻痺している。意識が朦朧としてきた。これはもうヤバイ。段々と意識が遠のいていく。

ーーあぁ。人生こんな早く終わるのかよ。


そうして目を閉じた。すると、体が軽くなっていく。これは気持ちがいい。今までに味わったことのない感覚だ……

「ーーきてっ!」

綺麗で体が癒される。この声を聞いてると落ち着く。死んだはずなのに声が聞こえるわけがない。天国にでも来たのか。

「起きてっ!ーー」

静かに目を開けると、そこには綺麗な白髪の色白の女の姿。
これは漫画やアニメでよく見るやつだ。本当にこんな世界があるんだな。体の痛みが消えている。これは……


「あなたがこの木の下で倒れているのを見かけて声をかけたのだけれど……」

あぁ。これは天使だ。耳に髪をかける仕草。これはたまらない。この性癖は前から変わらない。

ーーここどこだ。

「何を言っているの?ここはルターノの王国ファリエウスじゃない。あなた頭でも打ったの?」


どうやら異世界に転生されたらしい。確かに「異世界に行きたいなぁ。」などとは思った事はあるが本当に来れるとは。
それにしてもこの王国とやらは綺麗な国だ。

「ーーけて……」


ーー助けて……

どこからか助けを求める声が聞こえる。しかし、どこかで聞いたような声の気がする。取り敢えず声の聞こえる方に行ってみる。

「ちょっと、どこ行くの?」

「お前も聞こえただろ?今の声。助けに行くんだよ。」

「待って!そっちは行っては駄目なの!危険よ!」

声が聞こえる先には暗く、灯など一切無い。だが、この聞き覚えのある声が凄く気になる。行かなきゃ始まらない。その先を行く。すると光が見えてきた。

ーー着いたぞ。

そこには、鎖で縛られている女がいた。聞き覚えのある声だと思ったら、顔も見覚えがある。本当にそうなのか説いてみる。

「お前、美咲か?……」

「あれ、なんでここに時英がいるの……?」

「なんでってお前、俺は死んで……っ!」

そうだ、俺は死んだんだ。あの学校で。
何者かによる殺人事件か。あの時周りを見たらもう既にみんな倒れて血を流していたんだ。俺は一人で戦ったんだ。だけど刃が立たなかった。美咲も殺された一人。という事はクラスの奴ら全員いるのか。

「んなことよりこの鎖外さねーと……なんだこれ、外れないぞっ!」

「どきなさい。はぁーっ!!」

「あん時の銀髪美少女!?なんで来たんだ!?危ないんじゃなかったか?」

「馬鹿ね。助けに来たのよ。魔獣が来る前に早くここから出ないと……っ!」


ーーえっ……


なんだ。何が起こったんだ。血?血が飛んで来た。銀髪美少女が急に倒れて。
待て待て待て、異世界転生開始早々死ぬのか!?そんな早く死ぬつもり無いぞ。

「お前不味そうだな。お前は殺す。死ね。」

どデカい剣を振り下ろして来た魔獣。ちょっと待てよ。こんな早く死にたく無いんだよ。これは本当にヤバイ。剣と1センチの距離。まだ終わりたく無い。くそっ!……

ーーえ……っ!

目を開けると魔獣が止まっている。何が起こったのか分からないが、これはチャンスだ。銀髪美少女が持っていた剣を持ち、魔獣を斬り刻んだ。

「あなた……今何をしたの。」

「喋ると体に悪いぞ。何か、何か無いのか?」

「大丈夫よ。後10秒もすれば傷が塞がるわ。」

嘘のように傷口が塞がっていく。これは凄い、治癒魔法でも使ったのか。

「これは治癒魔法よ。」
それにしてもこの男何者?あの魔獣はS級認定されてるのよ?それを一瞬で……

「あなた。さっきのはどうやって?」

「私も気になる!全然見えなかったよ!」

「そんな事言われても。魔獣が急に止まったから、それで今しか無いと思ってお前の剣使わせて貰ったんだけど……」

「えっ?私の剣はここに……無い!いつの間にっ!」
ここまで来るとびっくりね。

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