強大すぎる死神は静かに暮らしたい

犬飼ゆかり

死神はなかなか起きない


七歳の時

人が死神と呼んで恐れ、嫌う神に私は拾われた

私は奴隷だった、髪が赤い人は珍しくないが私は眼も紅かった
父は私が高く売れると聞いた瞬間手放した
もう父とすら思っていない

奴隷の扱いは人以下だ、病にかかった
奴隷商人は不知の病なんて言ってた

捨てられた

今度は人以下になっても捨てられた

人以下でも必要じゃない私は生きる価値などないと思った

生きる必要も無いなら
せめて楽に死ねればいいな
そう思った

それから先の事は今でも鮮明に覚えている


目を閉じた、夢が見たくて

目を閉じても夢は見れない

目を開けた、死神がいた

そう、死神がいた

真っ黒な外套に骨の顔
大きい鎌まで持っていた

ああ、私はこれから死ぬんだ
そうしかありえない
それ以外ないと思った
だが違った



死神は言った

「綺麗な紅い眼だね」


死神は骨の顔を外した

真っ黒な髪に真っ黒な眼だった


死神は笑った

「ここは危ないからとりあえずうちに来なよ」


そしてその言葉は

その顔は、その仕草は



私には魅力的すぎた


これが私の十年前に起きた

絶望と幸福だ








正直に言おう
私はラト様が好きだ

顔だってカッコイイし
優しいし、頭いいし
不知の病もすぐ治しちゃうし

かつての父のように殴らないし
奴隷商人のように怒鳴らないし

死ぬほど憎かったこの紅い眼が
あって良かったと思えるくらい好きだ



でも悪い所もある

私の名前を覚えてくれない事

朝に起きてくれない事

髪を短くしたのに気付いてくれない事


ショートカットも可愛いねっていって欲しかった
私だって年頃の女の子だ、今年で十七になる

でも

昨日は眼を褒めてくれた
嬉しくて言葉が詰まってしまった


死神は永い時を見てきた
私の事を覚えてくれないのも仕方がないのかもしれない
でも私が死ぬまでに私の名前を覚えて欲しい
好きな人に自分の存在を覚えて欲しい
忘れないで欲しい







ここは私の家
今日も朝から愛情なんて入れて朝ごはんを作る
これから中々起きない死神を起こすという大仕事が待っている

私の幸せだ






ここでキャラの人物像を出したかったけど出たかな…

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