魔王の娘に転生したので学園生活楽しみたい!
第1話「始まり、そして転生」
「──────」
「──、──────」
「───」
近くで会話が聞こえ目を覚ます。
辺りは薄暗く、ほのかに蝋燭の火が橙色に光っている。壁や天井の素材は石レンガで出来ており、まるで牢屋の様な部屋に見える。
その部屋の中で会話をしていた男性2人は私をまじまじと覗き込みながら楽しそうに話している。
1人は20代後半、もう1人は白髪なので60代くらいの歳に見える。
20代後半の男性は紺色のマントの下に、黒い軍服の様な服を着ており、60代の男性は執事服を着ている。
私は何処かの豪邸か何かで寝ていたみたいだ。
私は起き上がろうと全身に力を入れる。だが、力が入らず起き上がることができなかった。
おかしいと感じながらも、もう一度挑戦するが、起き上がれない。
筋肉に上手く力が働かず、だるい時の様な感覚が襲って来る。
身体を動かそうとするのを諦め、眼球だけを動かし辺りを見回す。
石レンガで出来ている部屋はガラス張りがされていない四角く穴が空いている窓があり、外が見える。
仰向けに寝ているので見えるのは真っ暗な空とほんのりと白く輝いている月だけだった。
「ん?起きたのか。どれ⋯⋯」
窓を見ていると20代後半の男性が気づき、私を抱き上げる。
ちょ、まって⋯⋯え!?
自分は一応女性なのでこんな軽々しく持ち上げられるのは嬉しいのだが、見知らぬ男性にされるのは人見知りである私にとってビックリするし、少し怖く感じた。
「よーしよし、いい子だ」
それはまるで赤ん坊の様に私の事を抱いていた。
突然の事で、頭の中がぐちゃぐちゃだったので整理する。
確か昨日は、いつもの様に学校から帰宅して、それから──
死んだんだっけ。
帰宅中、大規模な工事現場の方からガンッと大きな音がした。
工事現場の上の方を見てみると3、4本の鉄骨が降ってきていた。
その真下にはイヤホンをしている通行人が歩いており、鉄骨には気づいてはいなかった。
私は咄嗟に突き飛ばして助けたが、運悪く自分に刺さってしまい、鉄骨は完全に私を貫通していた。
意識が朦朧としていてそれからはあまり覚えてないが、刺さった部分が燃えてるかの様に熱かったのは覚えている。
そして今この現象である。
意味がわからなすぎて更に頭の中がぐちゃぐちゃになった気がする。
鉄骨から助けた通行人が病院に電話してくれたのだろうか。
それともそれを見て見ぬ振りをしていた通行人だろうか。
まあこの事を考えても分かるわけがない。
色々と考えていると段々と眠くなってくる。
しょうがない。考えるのは明日からにしよう。
そうして私は夢の中に落ちた。
◇◇◇
それから月日が流れ、一年が経つ。
あの日から始まった赤ん坊人生。
異世界転生なんて最初はこんな不可思議な現象信じられずに「これは夢だ、これは夢だ」と思い込んでいた。しかし、時間が経つにつれてこれは現実だと受け入れるしかなかった。
一年経つと私は色々と出来るようになった。
背骨や体幹、筋肉がしっかりとしてきてのか、移動手段であるハイハイを習得することができた。
初めてハイハイができる様になった時は、どんだけ嬉しかったか。
移動とは偉大だね。
移動手段がある事で人の会話を盗み聞きができ、色々と情報が分かるようになった。
まず、私自身のこと。
おそらく20代後半の男性が私の父親なのだろう。私に向けて「リディア」という名前を言ってくるので私の名前は“リディア”で間違いない。
ついでに父親の名前は「ダグラス」というらしい。
次に、場所。
ここは“セトヘイム”という名前の国で、魔族という種族の国らしい。
そう、魔族だ。
この国の殆どが魔族であり、此処に転生して産まれた私も人間ではなく魔族という事なのだ。
魔族と聞くと怖いイメージを想像したが、廊下で通る人達を見ると只の人間にしか見えない。
人によっては額にツノが生えていたり背中に羽が生えていたりしていたが、どうしてもコスプレしてる様にしか見えないのだ。
案外普通?で心底ホッとした。
そして私の住んでる家について。
それはセトヘイムの中心に建っているらしく、とても大きな建造物の様だ。
この家が広いのはハイハイしていて気づいていた。
無駄に長い廊下、無駄に多い階段、一部屋一部屋が無駄にでかくて赤ん坊に優しくない建物だった。
ここは魔族の王である魔王の住まう場所。
“魔王城”である。
そう、魔王城だ。大事なことなので。
それにしても何故私はここで寝ていたのだろう。
ダグラスが父親なのは分かるが何故ここで住んでるんだろう。
そうだ!
誰が魔王なのかも知りたいし確認がてら探してみよう!
誰もいない廊下をハイハイで進む。
すると突然身体が浮いた。
「こんな廊下の真ん中で歩いていると危ないですよ。動き回るのは元気でよろしいですが、1人で歩くのは危ないのですから」
背後から60代の執事服姿であるセバスに抱き上げられる。
誰もいないと確認したはずなのに気づかなかった。
足音も聞こえないしわざとやってるんじゃないかと疑ってしまう。
言葉の言い回しからして私を探していた様だ。迷惑をかけたな。
セバスに注意されていると前方から父親であるダグラスがゆっくりと近づいてくる。
「セバス、どうしたんだ?」
ダグラスがセバスに質問する。
「これはこれは魔王様。リディア様が1人で何処かに行ってしまいましたので探していたところ先程見つかりまして注意しておりました」
ん?今なんか変なこと言わなかった?
“魔王様”?ははは、何言ってんだこいつら。
そんな事を考えながらも2人の会話が進む。
「そうか、リディアは俺がセバスに任せたんだ。まあ、怒るのも程々にな。」
「甘やかしてはいけませんよ。リディア様は魔王様のお子様なのですからしっかりと育っていただきませんと」
はい確定。
“リディア様は魔王様のお子様”とか言っちゃったよ。
うん。ごめんちょっと待って。
頭の中整理するから時間をください。
ふぅ⋯⋯。
何も知らなかった事にしよう。そうしよう。
そうする事で私の精神は致命傷で済むはず⋯⋯。
「──、──────」
「───」
近くで会話が聞こえ目を覚ます。
辺りは薄暗く、ほのかに蝋燭の火が橙色に光っている。壁や天井の素材は石レンガで出来ており、まるで牢屋の様な部屋に見える。
その部屋の中で会話をしていた男性2人は私をまじまじと覗き込みながら楽しそうに話している。
1人は20代後半、もう1人は白髪なので60代くらいの歳に見える。
20代後半の男性は紺色のマントの下に、黒い軍服の様な服を着ており、60代の男性は執事服を着ている。
私は何処かの豪邸か何かで寝ていたみたいだ。
私は起き上がろうと全身に力を入れる。だが、力が入らず起き上がることができなかった。
おかしいと感じながらも、もう一度挑戦するが、起き上がれない。
筋肉に上手く力が働かず、だるい時の様な感覚が襲って来る。
身体を動かそうとするのを諦め、眼球だけを動かし辺りを見回す。
石レンガで出来ている部屋はガラス張りがされていない四角く穴が空いている窓があり、外が見える。
仰向けに寝ているので見えるのは真っ暗な空とほんのりと白く輝いている月だけだった。
「ん?起きたのか。どれ⋯⋯」
窓を見ていると20代後半の男性が気づき、私を抱き上げる。
ちょ、まって⋯⋯え!?
自分は一応女性なのでこんな軽々しく持ち上げられるのは嬉しいのだが、見知らぬ男性にされるのは人見知りである私にとってビックリするし、少し怖く感じた。
「よーしよし、いい子だ」
それはまるで赤ん坊の様に私の事を抱いていた。
突然の事で、頭の中がぐちゃぐちゃだったので整理する。
確か昨日は、いつもの様に学校から帰宅して、それから──
死んだんだっけ。
帰宅中、大規模な工事現場の方からガンッと大きな音がした。
工事現場の上の方を見てみると3、4本の鉄骨が降ってきていた。
その真下にはイヤホンをしている通行人が歩いており、鉄骨には気づいてはいなかった。
私は咄嗟に突き飛ばして助けたが、運悪く自分に刺さってしまい、鉄骨は完全に私を貫通していた。
意識が朦朧としていてそれからはあまり覚えてないが、刺さった部分が燃えてるかの様に熱かったのは覚えている。
そして今この現象である。
意味がわからなすぎて更に頭の中がぐちゃぐちゃになった気がする。
鉄骨から助けた通行人が病院に電話してくれたのだろうか。
それともそれを見て見ぬ振りをしていた通行人だろうか。
まあこの事を考えても分かるわけがない。
色々と考えていると段々と眠くなってくる。
しょうがない。考えるのは明日からにしよう。
そうして私は夢の中に落ちた。
◇◇◇
それから月日が流れ、一年が経つ。
あの日から始まった赤ん坊人生。
異世界転生なんて最初はこんな不可思議な現象信じられずに「これは夢だ、これは夢だ」と思い込んでいた。しかし、時間が経つにつれてこれは現実だと受け入れるしかなかった。
一年経つと私は色々と出来るようになった。
背骨や体幹、筋肉がしっかりとしてきてのか、移動手段であるハイハイを習得することができた。
初めてハイハイができる様になった時は、どんだけ嬉しかったか。
移動とは偉大だね。
移動手段がある事で人の会話を盗み聞きができ、色々と情報が分かるようになった。
まず、私自身のこと。
おそらく20代後半の男性が私の父親なのだろう。私に向けて「リディア」という名前を言ってくるので私の名前は“リディア”で間違いない。
ついでに父親の名前は「ダグラス」というらしい。
次に、場所。
ここは“セトヘイム”という名前の国で、魔族という種族の国らしい。
そう、魔族だ。
この国の殆どが魔族であり、此処に転生して産まれた私も人間ではなく魔族という事なのだ。
魔族と聞くと怖いイメージを想像したが、廊下で通る人達を見ると只の人間にしか見えない。
人によっては額にツノが生えていたり背中に羽が生えていたりしていたが、どうしてもコスプレしてる様にしか見えないのだ。
案外普通?で心底ホッとした。
そして私の住んでる家について。
それはセトヘイムの中心に建っているらしく、とても大きな建造物の様だ。
この家が広いのはハイハイしていて気づいていた。
無駄に長い廊下、無駄に多い階段、一部屋一部屋が無駄にでかくて赤ん坊に優しくない建物だった。
ここは魔族の王である魔王の住まう場所。
“魔王城”である。
そう、魔王城だ。大事なことなので。
それにしても何故私はここで寝ていたのだろう。
ダグラスが父親なのは分かるが何故ここで住んでるんだろう。
そうだ!
誰が魔王なのかも知りたいし確認がてら探してみよう!
誰もいない廊下をハイハイで進む。
すると突然身体が浮いた。
「こんな廊下の真ん中で歩いていると危ないですよ。動き回るのは元気でよろしいですが、1人で歩くのは危ないのですから」
背後から60代の執事服姿であるセバスに抱き上げられる。
誰もいないと確認したはずなのに気づかなかった。
足音も聞こえないしわざとやってるんじゃないかと疑ってしまう。
言葉の言い回しからして私を探していた様だ。迷惑をかけたな。
セバスに注意されていると前方から父親であるダグラスがゆっくりと近づいてくる。
「セバス、どうしたんだ?」
ダグラスがセバスに質問する。
「これはこれは魔王様。リディア様が1人で何処かに行ってしまいましたので探していたところ先程見つかりまして注意しておりました」
ん?今なんか変なこと言わなかった?
“魔王様”?ははは、何言ってんだこいつら。
そんな事を考えながらも2人の会話が進む。
「そうか、リディアは俺がセバスに任せたんだ。まあ、怒るのも程々にな。」
「甘やかしてはいけませんよ。リディア様は魔王様のお子様なのですからしっかりと育っていただきませんと」
はい確定。
“リディア様は魔王様のお子様”とか言っちゃったよ。
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