最強の種族が人間だった件 ~ エルフ嫁と始める異世界スローライフ ~

柑橘ゆすら

配下を増やそう

「スゥ……スゥ……主さま……」

 翌日。
目を覚ますと、隣で寝ているリアの姿が目についた。

よくよく考えると彼女の顔をマジマジと見るのは初めてかもしれない。
起きていると緊張してロクに目を合わせられないからな。

 それはともかく……。

 改めて見るとリアは圧倒的な美少女だった。

身長は160センチくらいだろうか。
手足はスラリと伸びており、モデルのような理想体型である。

胸はでかい。
 無粋な言い方をすれば少なく見積もってもFカップくらいあると思う。

 こんな可愛い女の子と同居生活を出来るなんて、日本で暮らしていた頃には想像もしてなかったよなぁ。


「……と。まずいまずい」


 ついつい時間を忘れて5分ほど魅入っていた。

さてさて。
リアが起きる前にトイレにでも行っておくか。

 そう考えた俺が洞窟の外に出ようとした時であった。


「な、なんじゃこりゃー!」


 洞窟の前に謎のドテカイ生物がいた。


「主さま!? どうなさいましたか!?」


俺の声を聞いて飛び起きたリアが顔を出す。

「……なるほど。どうやらそこにいるのはスライムみたいですね」

「この世界のスライムってこんなに大きかったのか!?」

 青色の体をしたスライム(?)は少なく見積もっても5メートル近い大きさであった。
人間どころか熊の1匹くらいなら余裕で飲み込んでしまいそうなサイズである。

「いえ。スライムというと駆け出しの冒険者が倒すことのできるモンスターです。このスライムは……何かしらの外的要因により過剰な魔力を取り込んだとしか考えられません」

「そうだったのか」

「ハッ……まさか……!?」

 リアは何かに気付いたような仕草を見せて俺に視線を向ける。

「何か分かったのか?」

「主さま。昨夜のことなのですが……もしかしてトイレは、アジトの外で行ったのですか?」

「もちろん。家の中でトイレをするわけにはいかないからな」

 リアの紹介してくれた隠れ家は各種設備が充実してはいたが、流石にトイレまで完備しているわけではなかった。

「それが原因ですね。あのスライムは、主さまの排泄物を体内に取り入れることで激的なパワーアップを遂げたようです」

「……マジで!?」

「出過ぎた真似と承知した上で進言させて下さい。これからトイレに行く際は出来るだけアジトの中でお願いできないでしょうか。今回のようなことを繰り返していると、一瞬で森の生態系は壊れてしまいます」

「…………」

 なんということだろう。
 
 まぁ、髪の毛の1本にまで絶大なパワーが宿っているのだから、当然と言うと当然の事態になるのか……。

「……どうしよう? このままでは俺たちは外に出ることもできないんだけど」

「ご心配には及びません。この程度の敵……主さまから力を授かった今の私なら……!」

 リアはそう前置きすると、洞窟の前にいるスライムに対して手を翳す。


「火炎連弾(バーニングブレッド)!」


 格好良く呪文を唱えたその直後。
 リアの掌からは巨大な火炎玉が立て続けに射出された。

 俺と間接キスをしたことが関係しているのだろうか?
 その威力は圧巻の一言に尽きるものであった。
 

「なっ……!」 


 おいおい。
 このスライム……どんだけ強化されているんだよ!?

 驚くべきことに巨大スライムは、リアの魔法を受けても全くのノーダメージであった。
 それどころか良い感じに魔法を吸収して以前よりも体積を増やしている様子である。

 つまり俺の体から摂取できる魔力の量は 唾液 <<< 排泄物 ということなのだろうか?

「つ、次は更に威力を上げて攻撃します! 火炎連……」

「待ってくれ」

 リアがスライムに攻撃を始めようとしたので慌ててそれを止めさせる。

 
「そもそもこいつ……俺たちに敵意がないんじゃないか?」


 考えてみもろよ?
 スライムの側からすれば攻撃のチャンスはいくらでもあった。

 それなのに未だに攻撃してこないということは、向こうに敵意がない可能性が高いのではないだろうか?


「主さま!? 危険過ぎます!?」


 俺がスライムの元に近づこうとすると、リアは顔色を青くしているようであった。

「なあ。お前……何か用があって俺に会いにきたんじゃないのか?」

「キュー! キュー!」

 俺が質問を投げかけると、スライムはみるみると体を圧縮していく。

 それから。
 最終的にはバスケットボールくらいのサイズになったスライムは、俺の足元に擦り寄り服従のポーズ(?)を見せる。


「し、信じられません……! モンスターが忠誠を見せるなんて……!」


 俺とスライムのやり取りを見たリアは目を丸くして驚いているようであった。

「よし。これからお前の名前は『ライム』だ。仲間にしてやるから俺たちのために頑張って働くんだぞ?」

「キュー! キュー!」

 俺のネーミングが気に入ったのか、ライムは嬉しそうな声を上げる。

 このような経緯もあって俺は……新しい仲間を得ることに成功するのであった。


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