紅月の夜王

神有月 風輝

一章 第1話 宵闇ノセカイ




「さぁ……平伏せ」

漆黒の翼は夜風の影響を阻み、紅の真円を描く月は共に空に在る唯一をスポットライトの様に照らし出す。

「闇より寵愛を受けし我が力………存分に味わうが良い、眷属共」

そう、嗜虐的に嗤い、弧を描くその唇の向こうから鋭く尖る歯が覗く。

短く黒い髪、左頬には蔦の様な赤黒い紋章が刻まれ、その瞳は血液よりも紅い、真っ直ぐな色をしている。

背丈は小さく、線も細い。しかし、指先から瞳の奥まで生命力に満ち溢れ、見ている者を絶対的に支配する。

夜闇を更に漆黒に染め、己の物とするその者は……。




「これで良いのか……?」

と、遥か遠く、地上に目線を向け、銀髪の青年と白髪の少年の反応を待つ。

『ね……兄さん最高!カッコカワイイ!完璧です!』

『良んじゃねー?』

思念波を通して聞こえる熱のこもった称賛と適当感のある声が聞こえた。

「さてはお前ら程々を知らないな?」

そう、夜王は呟いた。

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