Endlees・Magic〜二人の天才が出会う時やがて世界の魔法と混沌が加速する

水定ユウ

FirstMystere2

校門のところで、僕がぶつかったのは一人の男であった。格好から見て、真新しいブレザーの制服だ。つまり、僕と同じ一年生であることが見てわかる。

 倒れていた体を起こし、その男へと向き直る。どうやら、向こうも立ち上がった様子だ。頭を少し抑え込んでいる。

 「っ、痛。ちっ、悪かったな、大丈夫か?」
 「ああ、こちらこそ悪い。そっちは、どうだ?」 
 「俺か、まあな、こんぐらいなれてるわ」
 
 その男を見てパッと見で受けた印象。その第一印象として目立つのは二つ。ところどころが寝癖ではねた、やや赤みがかった栗色の髪と、まるで太陽の輝きがそのまま宿ったかのような紅玉の瞳。しかし、どちらかと言うと太陽と言うよりは、血色に染まったような少し黒みがかった瞳のようだ。

 「どうした、何か付いているのか?」
 「いや、何でもないさ」
 「ふうーん。お前名前は?」
 「僕かい?僕は、狼上霧、君は?」
  
 一瞬の間があった後に、

 「俺は、豹堂ひょうどう紅蓮ぐれんだ。よろしく」

 手を差し出してきた。それに答えて握手をかわそうとすると、引っ込めてきた。

 「なんてな。俺はそんなことはしない」

 とスカした顔で、歩いて行った。この時のこの態度は一体なんだったのかと思う。単なる自信家なのだと思うのは未来永劫変わることはないだろう。



 
 世間一般的に見て、この学校のことをどう思うだろうか?

 普通に考えれば、「魔法」って何?とか、「魔法」なんかを再現できるの?とかと疑問の念しか出てこないだろうが、確かにそれには一理ある。「魔法」がどうとか言われてもピンとこないのは確かだ。それに今の時代「科学」が一般に定着した世界で、「魔法」をいくら広めようとしても、過去の創作だけでは何にもならないのは事実だ。

 しかし、現に「魔法」は再現されている。それを学ぶまでの学びやこそがこの学校の意味。そして、より多くの「魔工師」を輩出することを関としている。

 
 「失礼しまーす。ふうん、こんな感じなんだ」
 
 教室に入ると、そこは普通だった。騒がしいように、同じ中学卒業の者たちが、アーチ状を描く何段がある教室の机に着席している。僕も、適当に隅の方に座ることにした。すると、目の前に座る生徒に目が言った。赤みがかった栗色の髪、寝癖立っていて所々が跳ねている。朝、校門のところであった豹堂紅蓮だった。

 「やあ、さっきは悪かったね」
 「うん?!何だ確か狼上霧だったか、お前もこのクラスなのか」
 「そうみたいだね」

 僕はにこやかに笑ってみせた。作り笑顔は得意だ。たまにそれが本心なのか曖昧になるほどに、性格は…温厚?なのかなと思う。

 「悪いが、俺はじゃれ合う気などない」
 「僕も同じだよ」

 相手が嫌がっているのは見た目でわかる。近寄るなと合う気配オーラを出しているのはあからさまだ。しかし、何だろうか?どこか違う気配もする。殺気と言っていいのか?その気配からは尋常ならざるものを感じ取れる。

 その気配に同調するかのようにするのも慣れている僕なので、その気配を読み取ることができた。そして、僕はその存在を瞬時に消した。

 「うん?」

豹堂の驚くような声が聞こえた。別に姿を消したわけではない。同調しただけだ。突然気配が消えたことへの不信感から貸切に背後を気にしている。しかし、どう言うわけか振り向いてこない。僕はその様子を見ると、すぐに気配を元に戻した。

 これが僕の「魔法」属性の始まりであることをこの時の僕はまだ知らない。

 そして、豹堂紅蓮のこともまだ何も知らなかったのである。

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