召喚された賢者は異世界を往く ~最強なのは不要在庫のアイテムでした〜
第7話 潜入
村長が声を掛け、村で手の空いた者は提供したフォレストボアの解体を始めていく。
多少の干し肉程度は村にも在庫はあるが、ここまでの大物が丸々一体を村人だけで食べるなど、よほどの事がない限りあることではないとのことだった。
――これくらいならいくらでもあるんだよな……。
フォレストボアだけでも次元収納の中には、数十体仕舞われている。
俺のはゲームの時と同じ感覚で、同じ素材なら【×99】までは一つの枠に収まっているし、重さを感じることもない。
一度、リアンの街でナタリーに話した時は、これほどまでかという程、大きく目を見開かれて飛びかかってきたのを思い出す。
一刻ほどかけて村人達が素材を解体し、他の者は材料を持ち寄り夕食の準備が進められていく。
何故か、村人全てを集めて俺のことを歓迎してもらうことになった。
あまり目立ちたくなかったので、一度は拒否したが、これだけの素材を頂くのに、何もしないなど出来るわけないとのことだった。
村長からは酒が配られ、村人たちは肉を焼き食事を進めていく。
やはり年頃の男性はほとんどが戦争に向かったのかもしれない。男については老人や子供が多かった。
出された食事を食べながら、村人たちを眺めていると、隣に村長が座る。
「まぁ一杯どうぞ。久々にこんなに楽しく飲みましたわい。――どうです? 気に入った子などいれば……」
村長は若い働き手が一気にいなくなった事で、俺にこの村に住まないかと間接的に勧めてくるが、首を横に振り、グラスを傾ける。
確かに若い女性も多いが、今は任務中でそれどころではない。
「冒険者の仕事がありますからね……。明日にはここを出る予定だし」
「……そうですが……。残念です」
村長は残念そうに俯き、グラスを傾けため息をつく。
今一番重要なのは、帝都の情報。シャルの両親の安否の確認など大きな役目は多々あることを脳裏に浮かべた。
食事を済ませ、酔う手前でお暇させてもらった俺は、用意された村長宅の部屋でベッドへと転がった。
早朝。早々に食事を済ませ、村長に挨拶をしたあと、村を出発する。
ここから二日ほど北上すると、帝都の手前の街に到着し、そしてその街からさらに二日で帝都に到着する。
リアンで貰ったルネット帝国内の地図を再確認し、小走りで道を進んでいく。
正直言ってコクヨウに乗っていったほうが早いのだが、サランディール王国でジェネレート王国の兵士を斬り倒し、さらにリアンでは兵士達に突撃し退けている。
どこかでトウヤだと露呈する可能性があることから、ナタリーたちから中心部に入ってきたら、コクヨウを見せるのはやめるように言われていた。
そしていざ逃亡の時に最後の手段にもなると俺も考えている。
戦争の傷跡か、道の周りの畑は帝都に近づくにつれ荒らされている。
これが戦争か、と思いつつも道を進んでいき、いくつかの道が合流して街まで一本道となった。
誰が見ているかわからないので、俺はのんびりと腰に短剣をぶら下げのんびりと歩く。
途中、少ないながらも、商人の馬車は見かけることもあった。
少し多めの冒険者を雇っているようで、俺の横を通り抜ける時の護衛の冒険者達は警戒を怠らないほどだった。
次に向かう帝都の一つ手前の街、〝トーレスの街〟はすでに占領されており、ジェネレート王国の支配下となっている。
そんな時でも商人は大人しくしている訳にもいかないのかもしれない。
通り過ぎる馬車を眺めながら歩みを進めて行くと、半日程度でトーレスの街が見えてきた。
ジェネレート王国に占拠されているだけあり、門の上にはジェネレート王国の国旗が下がっている。
俺は街に入るための検問の列へと並んだ。
並んでいたのは数組だった。
ギルドカードを手に持ち、いざという時のために銀貨を数枚出せるようにしておく。
「次だっ」
俺の番となり、門兵にギルドカードを提示する。
シルバーに輝くギルドカードはどの国でも共通した高ランクである。
「……サランディール王国所属か、Bランクがなぜこの街に……?」
少しだけ兵士の顔が歪む。
「えぇ、ジェネレート王国傘下となったこの国なら、依頼も増えると思ってね。見ての通り回復術師ですし……」
あくまで回復術師を通せば、疑いも少しは減るだろうと俺の考えだ。
一般的な回復術師は、冒険者ギルドでも後衛で他のメンバーのサポートがメインになる。
俺みたいにバスターソードを持って前線にいるなんて奴は皆無だ。
「確かにな。まぁ、サランディール王国なら問題はない。通っていいぞ」
俺はギルドカードを受け取ると、軽く手を上げ、門を通り抜ける。
何事もなく街に入り、ホッと一息つく。
まずは宿を探しておかないとな。一応ギルドにも顔を出してみるか……。帝都に向かう依頼があれば、簡単に入り込める可能性もある。
街は、勇者がすぐに堕としたお陰でそこまで荒れてはいなかった。
トーレスは人間族が多く、獣人族は殆どいないとリアンで説明を受けていた。
賑やかではないが、それなりに店舗も開いており、店員が声をかけている。
途中、串焼きを売っていた屋台で串焼きを二本買い、冒険者ギルドの場所とおすすめの宿屋を教えてもらった。
宿はすぐ近くにあり、中に入ると、受付から中年の女性が顔をだした。
「いらっしゃい。泊まりかい? 夕食はまだ始まってないよ」
「泊まりで頼む。とりあえず一泊で」
「朝食と夕食が込みなら、銀貨一枚だよ。ごめんね。この状況だから値上げしてるんだ」
「いや、それくらいなら構わない」
戦争での敗戦国はそれなりに搾取されているのは仕方ない。しかも、この状況なら客の数もしれてるだろう。
銀貨を一枚取り出し、カウンターへと置く。
「ありがとう。部屋は二階の一番奥だよ」
鍵を受け取り、奥にある階段を上ると、四部屋ほどあった。その一番奥の部屋の鍵穴に鍵を差し込み扉を開けると、一人にしてはそこそこ広い部屋だった。
八畳くらいある。そしてベッドもシングルではなく、ダブルサイズだ。クローゼットやテーブル、椅子もあり、銀貨一枚なら不満もない。
まぁ、その前にサランディール王国で依頼を受けていたおかげで懐はかなり温かい。
部屋の確認をしてから、受付で「ギルドに行ってくる」とだけ伝えて、鍵を返し宿を後にする。
帝都の情報が入ればいいかな、と思いつつギルドへと向かった。
多少の干し肉程度は村にも在庫はあるが、ここまでの大物が丸々一体を村人だけで食べるなど、よほどの事がない限りあることではないとのことだった。
――これくらいならいくらでもあるんだよな……。
フォレストボアだけでも次元収納の中には、数十体仕舞われている。
俺のはゲームの時と同じ感覚で、同じ素材なら【×99】までは一つの枠に収まっているし、重さを感じることもない。
一度、リアンの街でナタリーに話した時は、これほどまでかという程、大きく目を見開かれて飛びかかってきたのを思い出す。
一刻ほどかけて村人達が素材を解体し、他の者は材料を持ち寄り夕食の準備が進められていく。
何故か、村人全てを集めて俺のことを歓迎してもらうことになった。
あまり目立ちたくなかったので、一度は拒否したが、これだけの素材を頂くのに、何もしないなど出来るわけないとのことだった。
村長からは酒が配られ、村人たちは肉を焼き食事を進めていく。
やはり年頃の男性はほとんどが戦争に向かったのかもしれない。男については老人や子供が多かった。
出された食事を食べながら、村人たちを眺めていると、隣に村長が座る。
「まぁ一杯どうぞ。久々にこんなに楽しく飲みましたわい。――どうです? 気に入った子などいれば……」
村長は若い働き手が一気にいなくなった事で、俺にこの村に住まないかと間接的に勧めてくるが、首を横に振り、グラスを傾ける。
確かに若い女性も多いが、今は任務中でそれどころではない。
「冒険者の仕事がありますからね……。明日にはここを出る予定だし」
「……そうですが……。残念です」
村長は残念そうに俯き、グラスを傾けため息をつく。
今一番重要なのは、帝都の情報。シャルの両親の安否の確認など大きな役目は多々あることを脳裏に浮かべた。
食事を済ませ、酔う手前でお暇させてもらった俺は、用意された村長宅の部屋でベッドへと転がった。
早朝。早々に食事を済ませ、村長に挨拶をしたあと、村を出発する。
ここから二日ほど北上すると、帝都の手前の街に到着し、そしてその街からさらに二日で帝都に到着する。
リアンで貰ったルネット帝国内の地図を再確認し、小走りで道を進んでいく。
正直言ってコクヨウに乗っていったほうが早いのだが、サランディール王国でジェネレート王国の兵士を斬り倒し、さらにリアンでは兵士達に突撃し退けている。
どこかでトウヤだと露呈する可能性があることから、ナタリーたちから中心部に入ってきたら、コクヨウを見せるのはやめるように言われていた。
そしていざ逃亡の時に最後の手段にもなると俺も考えている。
戦争の傷跡か、道の周りの畑は帝都に近づくにつれ荒らされている。
これが戦争か、と思いつつも道を進んでいき、いくつかの道が合流して街まで一本道となった。
誰が見ているかわからないので、俺はのんびりと腰に短剣をぶら下げのんびりと歩く。
途中、少ないながらも、商人の馬車は見かけることもあった。
少し多めの冒険者を雇っているようで、俺の横を通り抜ける時の護衛の冒険者達は警戒を怠らないほどだった。
次に向かう帝都の一つ手前の街、〝トーレスの街〟はすでに占領されており、ジェネレート王国の支配下となっている。
そんな時でも商人は大人しくしている訳にもいかないのかもしれない。
通り過ぎる馬車を眺めながら歩みを進めて行くと、半日程度でトーレスの街が見えてきた。
ジェネレート王国に占拠されているだけあり、門の上にはジェネレート王国の国旗が下がっている。
俺は街に入るための検問の列へと並んだ。
並んでいたのは数組だった。
ギルドカードを手に持ち、いざという時のために銀貨を数枚出せるようにしておく。
「次だっ」
俺の番となり、門兵にギルドカードを提示する。
シルバーに輝くギルドカードはどの国でも共通した高ランクである。
「……サランディール王国所属か、Bランクがなぜこの街に……?」
少しだけ兵士の顔が歪む。
「えぇ、ジェネレート王国傘下となったこの国なら、依頼も増えると思ってね。見ての通り回復術師ですし……」
あくまで回復術師を通せば、疑いも少しは減るだろうと俺の考えだ。
一般的な回復術師は、冒険者ギルドでも後衛で他のメンバーのサポートがメインになる。
俺みたいにバスターソードを持って前線にいるなんて奴は皆無だ。
「確かにな。まぁ、サランディール王国なら問題はない。通っていいぞ」
俺はギルドカードを受け取ると、軽く手を上げ、門を通り抜ける。
何事もなく街に入り、ホッと一息つく。
まずは宿を探しておかないとな。一応ギルドにも顔を出してみるか……。帝都に向かう依頼があれば、簡単に入り込める可能性もある。
街は、勇者がすぐに堕としたお陰でそこまで荒れてはいなかった。
トーレスは人間族が多く、獣人族は殆どいないとリアンで説明を受けていた。
賑やかではないが、それなりに店舗も開いており、店員が声をかけている。
途中、串焼きを売っていた屋台で串焼きを二本買い、冒険者ギルドの場所とおすすめの宿屋を教えてもらった。
宿はすぐ近くにあり、中に入ると、受付から中年の女性が顔をだした。
「いらっしゃい。泊まりかい? 夕食はまだ始まってないよ」
「泊まりで頼む。とりあえず一泊で」
「朝食と夕食が込みなら、銀貨一枚だよ。ごめんね。この状況だから値上げしてるんだ」
「いや、それくらいなら構わない」
戦争での敗戦国はそれなりに搾取されているのは仕方ない。しかも、この状況なら客の数もしれてるだろう。
銀貨を一枚取り出し、カウンターへと置く。
「ありがとう。部屋は二階の一番奥だよ」
鍵を受け取り、奥にある階段を上ると、四部屋ほどあった。その一番奥の部屋の鍵穴に鍵を差し込み扉を開けると、一人にしてはそこそこ広い部屋だった。
八畳くらいある。そしてベッドもシングルではなく、ダブルサイズだ。クローゼットやテーブル、椅子もあり、銀貨一枚なら不満もない。
まぁ、その前にサランディール王国で依頼を受けていたおかげで懐はかなり温かい。
部屋の確認をしてから、受付で「ギルドに行ってくる」とだけ伝えて、鍵を返し宿を後にする。
帝都の情報が入ればいいかな、と思いつつギルドへと向かった。
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