召喚された賢者は異世界を往く ~最強なのは不要在庫のアイテムでした〜
第29話 帰還
オークの襲撃以外に何もなくフェンディーの街へ到着した。
入り口でギルドカードを提示し、街へと入る。商会の前まで行って護衛は完了だ。
商会の前でルミーナが依頼表にサインを貰い、全員でギルドへと報告に向かった。
「それでは依頼完了確認しました。皆さんお疲れ様です。それと……納品はトウヤさん、倉庫の方にお願いします。あと、ルミーナさんは少しお話しが……」
俺は倉庫へ納品へ向かい、ルミーナは打ち合わせ、ダイ達四人はお疲れ様会をするために、ギルド併設の酒場の場所取りと別れることになった。
倉庫でオークの死骸を次々と出していくと、ギルド職員も顔を引攣らせながら納品書を書いていく。
次元収納の容量については、多少、人より多いと説明してあるし、これが初めてではない事から、毎回、苦笑されながらも受け取ってもらっている。もちろん、個人情報となり、ギルド職員のみで共有され、公開されることはない。
受け取った納品書を持ち、ギルドホールへと向かうと、ミリアが手招きしてくる。
「トーヤさん、納品書を貰います。あと、ギルドカードも出してください」
何故ギルドカードが必要なのかと疑問に思いながら、ミリアに差し出す。
ミリアは「ちょっと待っててくださいね」と言い、カウンターの奥へと入っていった。
数分で戻ってきたミリアはギルドカードをカウンターに置いた。
「トーヤさんは、Bランクに昇格しました。本当はもっと早く出来たんですけど、Bランクに上げる為には護衛の経験が必要なんです」
受け取ったギルドカードを見ると確かに“B”ランクと書かれていた。
そしてぎっしりと詰まった布袋が3つ置かれる。
「これがオークの納品分ですね。肉の劣化もしていないので高評価になっていましたよ。3パーティーなので分けておきました」
笑顔で言うミリアに頷き、お礼を言った後に酒場へと向かう。
酒場ではすでに、席をキープしていたダイが手招きをする。ルミーナも話が終わって席に着いていた。
「待たせたな。オークの分も受け取ってきたぞ」
俺はテーブルの中央に銀貨の詰まった袋を3つ置いた。
ルミーナも護衛の依頼料の袋を3つ置き、各自に配る。
「人数で割らなくていいのか……?」
俺の言葉に否定をしたのはダイだった。
「基本はパーティーで割るんだ。だからこれで合っている。しかも……オークの納品分なんて、ほとんどトーヤが倒しただろ? うちらからしたら逆に得したくらいだよ。気にせず受け取っておけ」
行きとは違い、柔らかくなった態度に俺も笑顔で頷く。
「それじゃ、遠慮なく」
俺は銀貨の詰まった袋を2つとも仕舞い込む。
「それと……すまない。行くときに『寄生でCランクに上げた』なんて言って。トーヤの実力を見て理解したよ」
ダイが俺に頭を下げ、パーティーの他のメンバーは笑顔で頭を軽く下げる。
「気にしなくていい。一応は回復術師だしな……」
「それにしては……とんでもない武器を振り回していたけどな……」
思わずダイは小声で呟く。
そして注文したエールが見計らったように、各自のところに配られた。そしてルミーナが立ち上がり乾杯の挨拶をする。
「オークの襲撃という予想外の事もあったが、無事に護衛依頼が終わった事を感謝だ。そして――」
ルミーナが言葉を止め、俺を見つめる。
そして予想外の言葉を放った。
「エールを冷やしてくれ……頼む……」
思わず椅子から崩れ落ちそうになる。苦笑しながらも俺は頷いてこっそりと全員分のエールを冷やした。
「それでは改めて! 皆の無事に感謝し、かんぱーーーい!!」
全員がジョッキをぶつけ合い口へと運ぶ。
「やっぱり冷えたエールが最高だな!!」
笑顔の宴会は遅くまで続くのであった。
◇◇◇
時は少し遡る。
冒険者ギルドでルミーナは個室に案内され、一人で席に座り待っていた。
そして扉が開かれ入ってきたのは、サブギルドマスターであるエブランドであった。
ルミーナは席を立ったが、すぐに座るように促され席につく。
エブランドはルミーナの対面に座った。
「一体……なんの御用でしょうか。わざわざサブギルドマスターの呼び出しとは……」
少し心配そうな表情をするルミーナに、エブランドは頬を緩める。
「いやいや、そんなに緊張しなくていい。聞きたいのはな――トーヤの事だ。一緒に護衛してどうだった?」
その言葉にルミーナの表情が固まる。
「――トーヤですか……アレは一体……戦いを見ましたが……バケモノかと。従魔の黒曜馬も鬼のように強かった」
「ルミーナからしてもそう見えるか……」
「あれでなんでCランクなんですか!? 私なんか目じゃないくらい強い。Aランク、いや……Sランクでもおかしくないと……」
ルミーナはオークとの戦闘を思い出しながら答える。
その言葉にエブランドは大きなため息をつく。
「わかった……。ありがとう。その情報が知りたかったんだ。今日はもういいぞ。護衛で疲れただろう。帰ってゆっくりとしてくれ」
一礼してルミーナは部屋を退出し、エブランドは一人で考え込む。
「とんでもない新人が現れたな……」
エブランドは再度ため息をつき、天を見上げた。
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コメント
ノベルバユーザー374069
此方で連載中だったら、小説を読もうはもう更新しないのですね。残念ですが、新しい投稿を此方で待ちます。