雫の想像主
第1章 再誕の想像主(3)
3話 模擬戦
一瞬に視界が切り替わり、よく周りを見てみれば、僕が眠っていた部屋の扉だったことに気付いた。
「……大丈夫?」
心配そうに顔を見上げるアテナさんに、僕は頷き返す。
「大丈夫だよ、でもこの感覚はちょっと……苦手かな」
「……ごめんなさい……配慮が少し……足りなかった」
アテナさんは俯いてぎゅっと握る手を強めたのをみて、少し申し訳無く思い、僕は何となく頭を撫でた。
「ッ!?」
恥ずかしくなり、僕は視線を合わせずに話す。
「その、気にしないって事は出来ないですけど、それでも僕はそこまで根に持ってませんから……あまり気にしないで下さい」
視線を戻すと、アテナさんは暫く目を点にさせて驚いていたが、直ぐに元に戻って頷く。
「……ん……分かった」
たったその一言だが、一瞬その幼い笑顔を懐かしく思って頬を緩ませた自分に驚き、直ぐに再起動させた。
「ここが僕の部屋になるんですよね?」
いつもの表情に戻り頷くが、さっきから髪の毛が尻尾のように左右揺れていた。
「……ん……そうだよ……必要そうな物は……補充済み……もし必要な物があれば……明日来る……専属メイドに言って……後これ……使い方は……紙に書いてる」
そう言って渡された物は、とても小さな小瓶に透明な液体が入った物と、それに関する説明書で、アテナさんの見た目とは裏腹に達筆な字で取り扱い説明書と書かれていた。
「日本語……それに僕より字が綺麗ですね」
「……ん……練習した」
胸を張ってる姿が子供のようで微笑ましく思っていると、アテナさんの髪の毛がピンと立ち、思い出したかのように動き出した。
「……用事を思い出した」
アテナさんは足速に出口に向かうと、途中で急停止して振り向く。
「……また来ても……いい?」
少し涙を潤ませて聞いて来たので、僕は少し考える様に目を瞑ると。
「いいですよ」
アテナさんの目を見て答えた。
その一言に僅かに頬を緩ませたアテナさんは、出口に向き直って部屋を後にした。
「……さてと、一旦使って見ようかな」
そう言って僕はさっきの小瓶を横の机に置くと、一緒に貰った説明書を読み始める。
「小瓶の蓋を開けて液体に魔力を通しながら武器などを想像する…………それだけ?」
僕は暫く呆けていたが、直ぐに次のページがある事に気付き開くと、以下の事が書かれていた。
ーーー
これは前世の乃恵流が作った『想像具』と言う代物で、貴方しか使えない誓約がある。
これで想像した武具などの強度は折り紙付きだから、上手く活用してね。
ーーー
「……とりあえずやってみるか」
僕は説明書を机に置いて小瓶を手に取り、蓋に力を込めて外すとキュポンッと軽い音を出して開く。
「次は魔力を通すか……」
僕は静かに目を瞑ると、手に意識を集中してある物を想像する。
「……やっぱり駄目かーーーなッ!?」
一発で成功するとは思わず、僕は少し焦ってそれを落とす。
「これが、想像具……」
目の前にころがるのは、無機質さを感じさせながらも、美しい透明な刀だ。
僕はそれを手に取り周りの机などを動かして広くすると、目を閉じて刀を振る。
一頻り振り終わると、ぱちぱちと手を叩く音に驚き視線をそちらに合わせると、そこにはディーテが微笑みを浮かべて手を叩いて居た。
「……いつから居たんですか?」
僕は少しジト目で見る。
「そんなに邪険にしないで下さい、わたしは今し方ここに来たばかりですよ?」
相変わらず微笑みを絶やさないので、何を考えているのかあまり分からないので、僕はため息をついて考えるのを止める。
「はぁ、もういいですよ。それで何か用でも?」
僕はさらにジト目を強くして聞く。
「もしその武器を試したいのなら、訓練場があるので案内しようかと」
僕は考える間もなく頷く。
「お願いします、確かに何処まで使えるのか知りたいので」
「分かりました、それでは『歩いて』、案内しますね?」
笑みを深めて言葉を強調させたが、
僕は気付かぬふりをして頷き返し、部屋を後にした。
「ふふふ……ますます愛おしくなりました」
後ろから聞こえた言葉と視線に少し身震いしてしまい、僕は後ろを振り向いた。
「……先に行って下さい、少し貴方が怖いです」
「分かりました。ちゃんと付いて来て下さいね?」
どの道逃げ場もないので、僕は黙って付いて行った。
☆☆☆
色々と話を入れながら歩くと、かなり広い空に浮かぶ小島の様なものがあり、そこへ行くための橋が一本かけられていたが、僕はあるものを見て驚き呟く。
「もしかしてアレス?」
僕の呟きにディーテは頷く。
「ええ、アレスはいつも彼処で一人訓練していますからね」
僕は一人と言う言葉が気になり、ディーテに問いかける。
「?……何で一人なんですか?」
「簡単な事ですよ、アレスは軍神とも謳われているけれど、本当は『武神』なんですよ?……並大抵の神じゃ付いていけないですから」
確かに、僕よりも綺麗な太刀筋と速さと力を披露していて、正直に見惚れてしまいそうだった。
暫くすると剣を硬そうな地面に突き立て他のを見て、僕達は近づいて行く。
「ふい〜、訓練しゅーりょーっスッ!あ、ディーテじゃないっスかってぇえッ!?何でここにノエルがいるんすか?」
彼女はいつものオーバーリアクションの驚きをして、ディーテに視線を向ける。
「私に聞くよりノエルから聞いた方がいいと思うわ」
ディーテがちらりと僕を見て、合わせる様にアレスさんは僕を見つめた。
「さっきの剣舞、とても美しかったです。それに太刀筋に全く狂いもなくて、動作の1つ1つが丁寧でいて力強かったです」
僕の褒め言葉にアレスさんはにやけて体をくねくねさせた。
「いやぁそんなに褒められると照れるっスよぉ」
でも、勘が鋭いのか素なのか分からないが、照れるのをやめて僕を見据えてくる。
「それで?本題はここからっスよね?」
僕はそれに頷くと本題を話す。
「これからは僕と剣を、交えさせて下さい」
その言葉にアレスさんは好戦的な笑みを浮かべた。
「いいっスよ?でもタダ働きは嫌っスからねぇ?」
そう言ってちらちら僕を見るアレスさんに頷き、御礼の提案をした。
「もちろん礼はします。そうですね、僕が出来る範囲の事を1日叶える……それでどうでしょう?」
その一言にアレスさんが驚き、ディーテも想像してなかったのか驚きを表した。
「なッ!?ななな、ナントォッ!?それ破格の礼じゃあないっスか!!」
「どうします?」
僕の問いにアレスさんは高速で首を縦に振った。
「やるっス!いややらせて下さいっス!!」
僕はそれを聞いて今回の手合いをせつめいする。
「今回は性能と僕の力が何処までなのか知る為ですから、軽めでお願いします」
アレスさんはどんと胸を叩き鷹揚に頷いた。
「おーけーっス!じゃあオレサマの獲物は何がいいっスか?」
「もしかして他の武器も使えるんですか?」
僕がその言葉に驚くと、当たり前じゃないっスかと言われた。
「そりゃ〜武器なら全て振り回せないと、だってオレサマ武神っスからね?……あ、木刀の方がいいと思うっスけど」
木刀を勧めてきた理由を聞くと、僕が使う想像具の刀と釣り合うにはそれが丁度いいんじゃないかとの事で、僕はそれでいいと頷いた。
「よしっと、ちょっと武器庫からかっぱらってくるっスね〜」
そう言って目にも留まらぬ速さで走って行くと、数分もせずにアレスさんの姿が見え、その手には木刀と、何故か手足に付ける枷を持っていた。
「到着っス〜、さあ始めるっスよ〜!」
僕は一人進めようとするアレスさんをストップさせた。
「ちょっと待って下さい、その枷はなんですか?」
「これもオレサマの訓練っスからね!」
僕の問いに答えながら明らかに重そうな鉄枷を自分の手足につけ終えると、木刀を持って中央に歩いて行く。
僕もそれに従い歩くと、丁度良いところで止まり、木刀を地面に突き立てて不動になる。
「さあ!どっからでもかかってきていいっスよ!!」
好戦的な笑みがさらに深まるのを見据え、僕は想像具で刀を作り出して構える。
「……へぇ、それがノエルの想像具っスね。前とおんなじっス」
興味深げに僕の刀を見るアレスさんをよそに、僕は目を瞑って集中する。
「それでは始めの合図は私がするわ……両者構え、始めッ!」
僕は合図と共に一瞬で間合いを詰め、刀を袈裟懸けに振るう。 
「ははは、面白くなってきたっスッ!!」
彼女と刀が交わった瞬間、あたりに爆音と爆風が吹き荒れた。
一瞬に視界が切り替わり、よく周りを見てみれば、僕が眠っていた部屋の扉だったことに気付いた。
「……大丈夫?」
心配そうに顔を見上げるアテナさんに、僕は頷き返す。
「大丈夫だよ、でもこの感覚はちょっと……苦手かな」
「……ごめんなさい……配慮が少し……足りなかった」
アテナさんは俯いてぎゅっと握る手を強めたのをみて、少し申し訳無く思い、僕は何となく頭を撫でた。
「ッ!?」
恥ずかしくなり、僕は視線を合わせずに話す。
「その、気にしないって事は出来ないですけど、それでも僕はそこまで根に持ってませんから……あまり気にしないで下さい」
視線を戻すと、アテナさんは暫く目を点にさせて驚いていたが、直ぐに元に戻って頷く。
「……ん……分かった」
たったその一言だが、一瞬その幼い笑顔を懐かしく思って頬を緩ませた自分に驚き、直ぐに再起動させた。
「ここが僕の部屋になるんですよね?」
いつもの表情に戻り頷くが、さっきから髪の毛が尻尾のように左右揺れていた。
「……ん……そうだよ……必要そうな物は……補充済み……もし必要な物があれば……明日来る……専属メイドに言って……後これ……使い方は……紙に書いてる」
そう言って渡された物は、とても小さな小瓶に透明な液体が入った物と、それに関する説明書で、アテナさんの見た目とは裏腹に達筆な字で取り扱い説明書と書かれていた。
「日本語……それに僕より字が綺麗ですね」
「……ん……練習した」
胸を張ってる姿が子供のようで微笑ましく思っていると、アテナさんの髪の毛がピンと立ち、思い出したかのように動き出した。
「……用事を思い出した」
アテナさんは足速に出口に向かうと、途中で急停止して振り向く。
「……また来ても……いい?」
少し涙を潤ませて聞いて来たので、僕は少し考える様に目を瞑ると。
「いいですよ」
アテナさんの目を見て答えた。
その一言に僅かに頬を緩ませたアテナさんは、出口に向き直って部屋を後にした。
「……さてと、一旦使って見ようかな」
そう言って僕はさっきの小瓶を横の机に置くと、一緒に貰った説明書を読み始める。
「小瓶の蓋を開けて液体に魔力を通しながら武器などを想像する…………それだけ?」
僕は暫く呆けていたが、直ぐに次のページがある事に気付き開くと、以下の事が書かれていた。
ーーー
これは前世の乃恵流が作った『想像具』と言う代物で、貴方しか使えない誓約がある。
これで想像した武具などの強度は折り紙付きだから、上手く活用してね。
ーーー
「……とりあえずやってみるか」
僕は説明書を机に置いて小瓶を手に取り、蓋に力を込めて外すとキュポンッと軽い音を出して開く。
「次は魔力を通すか……」
僕は静かに目を瞑ると、手に意識を集中してある物を想像する。
「……やっぱり駄目かーーーなッ!?」
一発で成功するとは思わず、僕は少し焦ってそれを落とす。
「これが、想像具……」
目の前にころがるのは、無機質さを感じさせながらも、美しい透明な刀だ。
僕はそれを手に取り周りの机などを動かして広くすると、目を閉じて刀を振る。
一頻り振り終わると、ぱちぱちと手を叩く音に驚き視線をそちらに合わせると、そこにはディーテが微笑みを浮かべて手を叩いて居た。
「……いつから居たんですか?」
僕は少しジト目で見る。
「そんなに邪険にしないで下さい、わたしは今し方ここに来たばかりですよ?」
相変わらず微笑みを絶やさないので、何を考えているのかあまり分からないので、僕はため息をついて考えるのを止める。
「はぁ、もういいですよ。それで何か用でも?」
僕はさらにジト目を強くして聞く。
「もしその武器を試したいのなら、訓練場があるので案内しようかと」
僕は考える間もなく頷く。
「お願いします、確かに何処まで使えるのか知りたいので」
「分かりました、それでは『歩いて』、案内しますね?」
笑みを深めて言葉を強調させたが、
僕は気付かぬふりをして頷き返し、部屋を後にした。
「ふふふ……ますます愛おしくなりました」
後ろから聞こえた言葉と視線に少し身震いしてしまい、僕は後ろを振り向いた。
「……先に行って下さい、少し貴方が怖いです」
「分かりました。ちゃんと付いて来て下さいね?」
どの道逃げ場もないので、僕は黙って付いて行った。
☆☆☆
色々と話を入れながら歩くと、かなり広い空に浮かぶ小島の様なものがあり、そこへ行くための橋が一本かけられていたが、僕はあるものを見て驚き呟く。
「もしかしてアレス?」
僕の呟きにディーテは頷く。
「ええ、アレスはいつも彼処で一人訓練していますからね」
僕は一人と言う言葉が気になり、ディーテに問いかける。
「?……何で一人なんですか?」
「簡単な事ですよ、アレスは軍神とも謳われているけれど、本当は『武神』なんですよ?……並大抵の神じゃ付いていけないですから」
確かに、僕よりも綺麗な太刀筋と速さと力を披露していて、正直に見惚れてしまいそうだった。
暫くすると剣を硬そうな地面に突き立て他のを見て、僕達は近づいて行く。
「ふい〜、訓練しゅーりょーっスッ!あ、ディーテじゃないっスかってぇえッ!?何でここにノエルがいるんすか?」
彼女はいつものオーバーリアクションの驚きをして、ディーテに視線を向ける。
「私に聞くよりノエルから聞いた方がいいと思うわ」
ディーテがちらりと僕を見て、合わせる様にアレスさんは僕を見つめた。
「さっきの剣舞、とても美しかったです。それに太刀筋に全く狂いもなくて、動作の1つ1つが丁寧でいて力強かったです」
僕の褒め言葉にアレスさんはにやけて体をくねくねさせた。
「いやぁそんなに褒められると照れるっスよぉ」
でも、勘が鋭いのか素なのか分からないが、照れるのをやめて僕を見据えてくる。
「それで?本題はここからっスよね?」
僕はそれに頷くと本題を話す。
「これからは僕と剣を、交えさせて下さい」
その言葉にアレスさんは好戦的な笑みを浮かべた。
「いいっスよ?でもタダ働きは嫌っスからねぇ?」
そう言ってちらちら僕を見るアレスさんに頷き、御礼の提案をした。
「もちろん礼はします。そうですね、僕が出来る範囲の事を1日叶える……それでどうでしょう?」
その一言にアレスさんが驚き、ディーテも想像してなかったのか驚きを表した。
「なッ!?ななな、ナントォッ!?それ破格の礼じゃあないっスか!!」
「どうします?」
僕の問いにアレスさんは高速で首を縦に振った。
「やるっス!いややらせて下さいっス!!」
僕はそれを聞いて今回の手合いをせつめいする。
「今回は性能と僕の力が何処までなのか知る為ですから、軽めでお願いします」
アレスさんはどんと胸を叩き鷹揚に頷いた。
「おーけーっス!じゃあオレサマの獲物は何がいいっスか?」
「もしかして他の武器も使えるんですか?」
僕がその言葉に驚くと、当たり前じゃないっスかと言われた。
「そりゃ〜武器なら全て振り回せないと、だってオレサマ武神っスからね?……あ、木刀の方がいいと思うっスけど」
木刀を勧めてきた理由を聞くと、僕が使う想像具の刀と釣り合うにはそれが丁度いいんじゃないかとの事で、僕はそれでいいと頷いた。
「よしっと、ちょっと武器庫からかっぱらってくるっスね〜」
そう言って目にも留まらぬ速さで走って行くと、数分もせずにアレスさんの姿が見え、その手には木刀と、何故か手足に付ける枷を持っていた。
「到着っス〜、さあ始めるっスよ〜!」
僕は一人進めようとするアレスさんをストップさせた。
「ちょっと待って下さい、その枷はなんですか?」
「これもオレサマの訓練っスからね!」
僕の問いに答えながら明らかに重そうな鉄枷を自分の手足につけ終えると、木刀を持って中央に歩いて行く。
僕もそれに従い歩くと、丁度良いところで止まり、木刀を地面に突き立てて不動になる。
「さあ!どっからでもかかってきていいっスよ!!」
好戦的な笑みがさらに深まるのを見据え、僕は想像具で刀を作り出して構える。
「……へぇ、それがノエルの想像具っスね。前とおんなじっス」
興味深げに僕の刀を見るアレスさんをよそに、僕は目を瞑って集中する。
「それでは始めの合図は私がするわ……両者構え、始めッ!」
僕は合図と共に一瞬で間合いを詰め、刀を袈裟懸けに振るう。 
「ははは、面白くなってきたっスッ!!」
彼女と刀が交わった瞬間、あたりに爆音と爆風が吹き荒れた。
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コメント
Sancor
全体的にストーリーが急いでいたり、主人公の心情描写が少ない気がしますが、コンセプトやキャラ設定はとても面白くていいと思います!
これからも頑張ってください!