異能バトルの絶対王者が異世界落ち

チョーカー

新たなる旅立ち

 「本当に行くのか?」

 「あぁ」と俺は答えた。
 見送りはライス1人だけだ。 その顔には傷が残っていて痛々しい。

 「姫さまは、お前と戦いたいと……」
 「無理だ。どうやら、俺はそこまで強くないらしい」
 「そうか」

 それだけ言って俺は城を後にした。
 アスカを守りながら戦う。そう決意したはずだったが、魔王との戦いで、力の差を思い知らされた。
 だから、これは修行だ。
 魔王領を単独で旅をして拠点を落とす修行の旅。
 それができないならば、俺は『異能殺し』ではない。
 だから、この旅は俺を取り戻すための旅になるだろう。
 それは決して魔王討伐を目的とするだけの旅ではなく―———俺は―———

 「待ってましたよ」

 振り向く。
 そこにはアスカ姫がいた。

 「私も行きます」
 「無理だ。もう、俺ではお前を守れない」
 「大丈夫。私が勝手についていくだけなので」
 「そういう問題じゃ……」
 「今度は私が貴方を守ります」
 「……守るって……お前、何か…」
 「教えてあげません。貴方が倒れそうな時、くじけそうな時に私が貴方を救います」
 「お前……まぁいいや。ついてくるのは勝手だ」

 「はい!」と跳ねるような声が響いた。


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