異能バトルの絶対王者が異世界落ち

チョーカー

夜、姫の秘め事

 
 『異能力戦争』

 それは異能力者が能力を使用するためのカルマ値を奪い合う戦争。
 自ら目覚めた能力を戦いの中で育み、鍛え————

 あるいは殺し、奪い取る。

 その戦いを制した者には、膨大に膨らんだカルマ値を対価に自分が望む……奇蹟にも等しい異能力を得る。
 例えば、俺の祖父は引き金を引くだけで世界中の……全ての異能力者を殺す異能を得ようとしていた。
 だから俺は、この異世界は――― 先代の絶対王者が創生した世界ではないのか?

 ――――いや、あるいは俺自身が作った世界なのではないか? 

 そういう考えがあった。

 例えば、目の前にいるアスカ姫。

 彼女を最初に見た時、日本人と西洋系のハーフかと思った。
 それは、日本人の特徴がありながらも、金髪碧眼と分りやすさがあったからだ。
 そう……わかりやすさ。まるでキャラ付けだ。 
 西洋人でも滅多にいないはずの金髪碧眼。
(たしか、成長過程で髪の色素が濃くなるから、西洋人でも大人の金髪は珍しいそうだ)
 そんな彼女が、俺に抱き付いている。疑うのは道理だろう?


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 「私は貴方さまに身を捧げる覚悟でまいりました」

 そう言って抱き付いたアスカ姫の肩に触れ、剥がすように距離を取る。
 「どうして」とかき消えそうな声。

 「どうしてと訊ねるなら、こっちの方だ。お前は一国の姫だろう。なぜ、俺に体を許そうと?まさか、一目惚れと言うわけでもないだろ」
 「それは……私が姫だからこそです!」
 「なんだそれは、俺も、魔王退治とやらに向かわせるための既成事実か?」

 あまりも出来過ぎた展開に俺は鼻で笑った。

 「違います。私も貴方様の旅に同行いたしたくて……気分を害したのならば謝ります」
 「むっ? それはつまり、姫自身が前戦に立つという事か?」

 アスカ姫は「はい」と答えた。

 「……戦場に立つ女は、何度か見た。しかし、分かっているのか? その意味を」

 ルール無用の戦いは、人の道徳感を歪める。
 戦場では、人が持つ欲望を止める物があまりにも……

 「その覚悟のため、せめて最初に抱かれるのであれば勇者さまが相応しいと思ったのです」
 「……俺の事は勇者さまと呼ぶなと言っただろ」
 「あっ、すいません」

 なるほど……拙いな。
 コイツは二重の意味で男を知らない。
 肉体的な意味でも……そして、なによりも異性に対して恋慕を抱く事がなかったのだろう。
 ならば、コイツのいう覚悟とやらも高が知れてるのではないか。

 「……お前、兄弟は?」
 「え? はい、弟が1人」
 「なるほどな」

 政敵か……。
 できるならコイツが戦場で死んでほしいって願ってる奴がわんさかいるって事か。
 この状況も、水面下でコントロールされた可能性もある。
 だったら―――

 「いいだろう」
 「はい?」
 「アンタを戦場で誰にも触れさせねぇ。誰からにも傷つけさせない。安心しろ。例え戦場でも、この城の玉座程度の安全は保障してやる」

 彼女の心は張り詰められていたのだろう。
 俺の言葉にうずくまり、嗚咽をあげた。
 戦火の渦が舞台となる国の姫。その心情を俺なんぞに理解し難く————いや、だからと言って理解しようとしないのは逃げである。

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・


 「……なぁ?」 
 「なんです? 異能殺しさま」
 「俺はお前を守り抜くと言った。信じるか?」
 「もちろんです」
 「だったら……」

 どうして、お前はベットに潜り込んできている!?

 「もちろん、守り続けた純潔を捧げるためですわ」
 「いや、今後も守り続ければいいだろ」
 「諦めてください『異能殺し』さま。人はいつまでも子供ではいられないのです」
 「なんで、俺の方が諭されてるんだ!?」

 「くすくす」とアスカ姫は笑った。 どうやら揶揄からかわれたみたいだ。

 「それでは」
 「おい、ネグリジェを脱ぐな!」

 ベットの端からアスカ姫が着ていたネグリジェが音もなく床へ落下した。
 そのままアスカ姫は俺に覆いかぶさるように抱き付き、そして上になる。
 彼女の重みと体温。そして鼻孔をくすぐる香りが……

 「これ以上、私を辱めないでください」

 アスカ姫は震えていた。
 「……わかった」と俺は彼女の震えを止めるように抱きしめた。
 どちらとなく口と口が触れ合う。
 唇と唇を重なるような口づけは徐々に激しさを増し、互いの存在を確かめるよう貪欲な動きへ変化していく。

 「うぐっ、口の中、に、舌がっ……んちゅっ、これ……」
 「ん……姫、どんな感じだ?」 
 「いや……じゅ……今は…んっ…今だけは、アスカと……アスカと御呼びください」

 俺は唇を離した。アスカ姫はどこか名残惜しそうな表情をみせている。

 「じゃアスカ……」
 「はい」
 「これからお前を抱く」
 「!? は、はい!」
 「だが、俺も経験は少ない。お前が想像するようなロマンチックな……事にはならないと思うが?」
 「……できるだけ優しくお願いします」

 「あぁ、わかった」と俺は頷いた。そして、再びアスカの唇に口づけを交わす。
 そのまま、背中を撫でる。 

 「んっ……」

 アスカは一瞬驚いたように体を跳ねたが、そのまま気持ちよさげに身を任せてきた。

 「すまないが、少しだけ上半身を持ち上げてくれ」
 「えっと、こうですか」

 俺の胸部を押しつぶしていた彼女の胸が離れていく。
 その広がった空間に手を差し込んだ。そのまま、俺は彼女の腹部を撫で始めた。

 「あっ……んっ…少し変な感じがします」
 「そうか、気持ちいいか?」
 「それは……んっ…まだ、わかりません」

 俺はもっと刺激の強い場所へ―———

 おそらく、まだ誰も触れた事のない場所へ————

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