天才軍師は俄か仕込の生兵法
プロローグ 転生
「だって歴史って何の役にも立たないじゃないですか」
俺は頭を叩かれたような衝撃を受けた。
(コイツは一体、ナニを言っているんだ?)
切っ掛けは何だっただろうか?
会社の飲み会。 適当な話題として、最近見た映画の話だった。
女性陣の誰かが戦国時代を舞台にした男性アイドルが主人公の作品を上げた。
それに対して、後輩のタナカが言ったのだ。
「ほら、急に新説とか、今まで学校の授業で習ったのは間違いでしたとか言い始めるとか。勉強する内容じゃないでしょ。タイムマシンとかない限り、正解なんてわかんないじゃないですか」
そんな後輩に対して俺は―———
「バカやろう! それじゃ焚書とかやれとでもいうのか? 歴史を蔑ろにして文化を否定した国がどうなったか! 実例はいくらでもあるんだぞ!」
とその場で言える勇気はなく……飲み会が終わり、解散となった帰り道。
俺は1人で叫んでいた。
「畜生め! こうなったら、家で蒼天航路と横山三国志の一気読みだ!」
俺は歴史オタクではない。
歴史人も歴史街道を定期購読しているわけではない。
ただ、歴史マンガが好きなだけ……所謂、俄。
その後ろめたさもあって後輩のタナカに強く言えなかったのだ。
酔いが体に回りふらつく体。
俺も目前に2つの光が現れた。 車の光・・・・・・トラックのライトが左右にフラフラと揺れている。
蛇行運転をしている。
(居眠り運転? あれ? このままじゃ、トラックが俺に・・・・・・)
衝撃。 体がバラバラになるほどの衝撃。
これが俺————藤村猛(36)が、この世で見た最後の光景だった。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
(あれ? どこだここ? 俺は確か……)
眼が覚めると俺は水中にいた。
水中!?
息が、息が! ……できる?
どうして水中で呼吸ができるんだ?
混乱する俺は最後の光景を思い出す。
そうか、俺はトラックにぶつかったんだ。
じゃ、この状況は近くの川とかにはね飛ばされた?
でも、呼吸できるのはどうしてだ? 最新医学の機械の中・・・・・・とか?
そう言えば、この音はなんだろうか? 水の中、一定の音が聞こえてくる。
不思議と安らぐ、不思議なリズム。 これを聞いていると異常に眠くなって……
かつて、藤村猛だった人間は、自分が置かれた状態を理解できずにいた。
彼は異世界に転生したのだった。
今、彼がいる場所は母親の腹の中。
暗闇の中、彼は発狂と覚醒を繰り返し、人格崩壊と精神崩壊を繰り返し――――
彼が新たな人間として再誕生するのは数か月後だった。
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