天才軍師は俄か仕込の生兵法
戦乱 人対魔の総力戦
キキは女性だ。女性でありながら、武の才に優れていた。
そのため、父親と同じ13歳で元服。 翌年には初陣を飾り、将として兵を引き連れる立場となる。
城下では、父の後を継いで女性初の将軍誕生かと噂されるほどだった。
しかし、今度の戦―――――
人20万 対 魔9万
人と魔の総力戦
キキは将ではなく、父のそばで親衛隊として控えていた。
人類の進退を決める戦い。総大将だった父が、その司令官としての姿を後継者であるキキに見せるために配置したと言われている。
人類側の布陣は――――
『鶴翼の陣』
鶴が羽を広げた様子に例えられる陣だ。
部隊を5つに分けている。 本陣を中心に第二右翼、第二左翼、第一右翼、第一左翼。
第二右翼左翼は本陣よりも僅かに前方に陣を張る。
第一右翼左翼は第二陣よりも前方に――――
Uの字を想像してくれればわかりやすいかもしれない。
相手を囲みやすく、防御に優れた布陣と言われている。
この陣を総大将が採用した理由は、魔の主力にある。
当時、魔側の主力はオークやトロール。場合によってはゴーレムを戦場に投下されていた。
敵勢力は数が少なくとも、人よりも力が強く頑丈な種族。 突破力に優れている。
その反面、知能と忠誠心が低い。 何よりも進軍速度が遅い。
人類側はその弱点をついた。
敵よりも先に決戦の地に布陣を敷く。
地の利として、第一右翼左翼は山に布陣――――所謂、山頂布陣である。
山に陣を敷く事で地の利を得る。それだけではなく、数に劣る魔の軍勢を取り囲むように臨機応変な用兵術を持つ武将に兵を任せている。
やがて斥候から、本陣へ魔の軍勢の到着の情報が届けられた。
「うむ……であるか」
人の総大将は鷹に例えられるほど鋭い眼光を敵陣に向ける。
魔力による強化によって視力は跳ね上がり、敵陣の様子が見える。
9万の軍勢は横一列に陣を敷いていた。
そうかと思うと、部隊をこちらに合わせるように5つにわけ、1部隊を第一右翼に向けて進軍を開始した。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「こちら、第一右翼より伝令。 敵は損害大、味方被害は小。こちら有利なり」
本陣に歓喜の声が上がる。
「勝てる。勝てるぞ!」と安堵と熱狂の声。
山の斜面を利用した罠の配置と攻撃。 戦略が、人間の知恵が強靭な魔を打ち払っていたのだ。
しかし、新たな情報を持った斥候が到着した。
「敵勢力、第二陣が我が第二右翼に接触、第三及び第四陣にも進軍の兆しあり」
「うむ……」と総大将は眉間に深いしわを寄せる。
「敵は斜線陣か。しかし、なぜ……」
『斜線陣』
その名の通り、陣営を斜めに配置する陣。
斜めにする事によって、第一陣の戦闘開始、第二陣の戦闘開始……と各陣営の戦闘開始時間にズレと作る事ができるのだが……
総大将は考えた。 なぜ、敵は時間稼ぎをしているのか?
(伏兵?……いや、援軍か!?)
「斥候に伝達! 索敵範囲の拡大。敵に伏兵及び援軍の可能性あり、各将にも同等の伝令。警戒と強めよと伝えろ!」
本陣に控える斥候たちが同時に飛び出した。
その直後だった。
「敵、第三陣進軍開始……速い! オークやトロールじゃないぞ!」
味方の叫びに似た報告が飛ぶ
敵、第三陣が直進したとなれば、狙いはここ。本陣になる。
「何!? 陣の幕を取れ!」
一斉に幕が外される。 姿を現せたのは本陣の主戦力。
巨大な丸太でできた柵の背後に杖を構える魔道士部隊だ。
従来、魔法使いと言うのは合戦において後衛部隊に配置され、集団で長時間の詠唱を行う。
極大魔法を使用して一撃で勝敗を決める役割だが、互いにその危険性は理解されており、何らかの対策を練られるのが常。合戦中に極大魔法が使用される事は稀だ。
それは人と魔。共にそのはずだった。
しかし、総大将の最大の武器は貨幣。潤った富は、新たな戦術を生み出した。
育成に時間と資金が必要な魔道士の育成。 希少な魔石を使った杖の大量生産。
それらの2つは備わった。
戦場に並んだ魔道士は短詠唱でも十分なほど殺傷力の高い魔法の連続使用が可能だったのだ。
「放て!」
総大将の号令に添って、魔石が火を噴いた。
それは業火である。
業火の連続が敵、第三陣に放たれたのだ。 
だが――――
「敵進軍速度、落ちません!」
総大将は魔力による視力強化を行う。
その目に映ったのは――――
「むっ……敵勢力は、ケンタウロスにミノタウロス……だと!」
人類が新たな戦術を有したのと同じだった。
魔の軍勢も新たな戦術。機動力を有した種族の部隊を編成して、突破力に機動力を手にしたのだ。
「放て!」と幾度と繰り返された号令と共に放たれる業火の群れ。
それでも敵の勢いは殺せなかった。
敵の一角に尋常ではない魔力が感じられた。
赤き魔方陣。 そこには強固な魔力の防御壁が展開されている。
「おぉ、そこにいるのは! 敵将自ら一騎打ちとは……かの軍神を思い出させるぞ」
魔方陣が展開されているのはケンタウロスの上。
そこには漆黒の鎧を身に纏った人――――否。魔人がいた。
敵の総大将たる『魔王』だ。
「皆の物、魔法攻撃を破棄。 抜刀せよ!」
魔道士部隊は無論白兵戦も想定されている。
しかし、帯刀――――その腰に刀を帯びていない。
魔法を放つ際に邪魔になる物は徹底的に排除されている。
ならば、どうするのか?
その背中から取り出したのは僅か30センチほどの抜き身の刃。
それは杖の先端に取り付けれる仕掛けが施されていた。
刃を杖の境を布で補強すると、短い薙刀のような武器となった。
その間、僅か10秒に足りず。
「キキよ。我が娘よ。その目に刻め。一騎打ちもまた、武の本懐よ」
そのため、父親と同じ13歳で元服。 翌年には初陣を飾り、将として兵を引き連れる立場となる。
城下では、父の後を継いで女性初の将軍誕生かと噂されるほどだった。
しかし、今度の戦―――――
人20万 対 魔9万
人と魔の総力戦
キキは将ではなく、父のそばで親衛隊として控えていた。
人類の進退を決める戦い。総大将だった父が、その司令官としての姿を後継者であるキキに見せるために配置したと言われている。
人類側の布陣は――――
『鶴翼の陣』
鶴が羽を広げた様子に例えられる陣だ。
部隊を5つに分けている。 本陣を中心に第二右翼、第二左翼、第一右翼、第一左翼。
第二右翼左翼は本陣よりも僅かに前方に陣を張る。
第一右翼左翼は第二陣よりも前方に――――
Uの字を想像してくれればわかりやすいかもしれない。
相手を囲みやすく、防御に優れた布陣と言われている。
この陣を総大将が採用した理由は、魔の主力にある。
当時、魔側の主力はオークやトロール。場合によってはゴーレムを戦場に投下されていた。
敵勢力は数が少なくとも、人よりも力が強く頑丈な種族。 突破力に優れている。
その反面、知能と忠誠心が低い。 何よりも進軍速度が遅い。
人類側はその弱点をついた。
敵よりも先に決戦の地に布陣を敷く。
地の利として、第一右翼左翼は山に布陣――――所謂、山頂布陣である。
山に陣を敷く事で地の利を得る。それだけではなく、数に劣る魔の軍勢を取り囲むように臨機応変な用兵術を持つ武将に兵を任せている。
やがて斥候から、本陣へ魔の軍勢の到着の情報が届けられた。
「うむ……であるか」
人の総大将は鷹に例えられるほど鋭い眼光を敵陣に向ける。
魔力による強化によって視力は跳ね上がり、敵陣の様子が見える。
9万の軍勢は横一列に陣を敷いていた。
そうかと思うと、部隊をこちらに合わせるように5つにわけ、1部隊を第一右翼に向けて進軍を開始した。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「こちら、第一右翼より伝令。 敵は損害大、味方被害は小。こちら有利なり」
本陣に歓喜の声が上がる。
「勝てる。勝てるぞ!」と安堵と熱狂の声。
山の斜面を利用した罠の配置と攻撃。 戦略が、人間の知恵が強靭な魔を打ち払っていたのだ。
しかし、新たな情報を持った斥候が到着した。
「敵勢力、第二陣が我が第二右翼に接触、第三及び第四陣にも進軍の兆しあり」
「うむ……」と総大将は眉間に深いしわを寄せる。
「敵は斜線陣か。しかし、なぜ……」
『斜線陣』
その名の通り、陣営を斜めに配置する陣。
斜めにする事によって、第一陣の戦闘開始、第二陣の戦闘開始……と各陣営の戦闘開始時間にズレと作る事ができるのだが……
総大将は考えた。 なぜ、敵は時間稼ぎをしているのか?
(伏兵?……いや、援軍か!?)
「斥候に伝達! 索敵範囲の拡大。敵に伏兵及び援軍の可能性あり、各将にも同等の伝令。警戒と強めよと伝えろ!」
本陣に控える斥候たちが同時に飛び出した。
その直後だった。
「敵、第三陣進軍開始……速い! オークやトロールじゃないぞ!」
味方の叫びに似た報告が飛ぶ
敵、第三陣が直進したとなれば、狙いはここ。本陣になる。
「何!? 陣の幕を取れ!」
一斉に幕が外される。 姿を現せたのは本陣の主戦力。
巨大な丸太でできた柵の背後に杖を構える魔道士部隊だ。
従来、魔法使いと言うのは合戦において後衛部隊に配置され、集団で長時間の詠唱を行う。
極大魔法を使用して一撃で勝敗を決める役割だが、互いにその危険性は理解されており、何らかの対策を練られるのが常。合戦中に極大魔法が使用される事は稀だ。
それは人と魔。共にそのはずだった。
しかし、総大将の最大の武器は貨幣。潤った富は、新たな戦術を生み出した。
育成に時間と資金が必要な魔道士の育成。 希少な魔石を使った杖の大量生産。
それらの2つは備わった。
戦場に並んだ魔道士は短詠唱でも十分なほど殺傷力の高い魔法の連続使用が可能だったのだ。
「放て!」
総大将の号令に添って、魔石が火を噴いた。
それは業火である。
業火の連続が敵、第三陣に放たれたのだ。 
だが――――
「敵進軍速度、落ちません!」
総大将は魔力による視力強化を行う。
その目に映ったのは――――
「むっ……敵勢力は、ケンタウロスにミノタウロス……だと!」
人類が新たな戦術を有したのと同じだった。
魔の軍勢も新たな戦術。機動力を有した種族の部隊を編成して、突破力に機動力を手にしたのだ。
「放て!」と幾度と繰り返された号令と共に放たれる業火の群れ。
それでも敵の勢いは殺せなかった。
敵の一角に尋常ではない魔力が感じられた。
赤き魔方陣。 そこには強固な魔力の防御壁が展開されている。
「おぉ、そこにいるのは! 敵将自ら一騎打ちとは……かの軍神を思い出させるぞ」
魔方陣が展開されているのはケンタウロスの上。
そこには漆黒の鎧を身に纏った人――――否。魔人がいた。
敵の総大将たる『魔王』だ。
「皆の物、魔法攻撃を破棄。 抜刀せよ!」
魔道士部隊は無論白兵戦も想定されている。
しかし、帯刀――――その腰に刀を帯びていない。
魔法を放つ際に邪魔になる物は徹底的に排除されている。
ならば、どうするのか?
その背中から取り出したのは僅か30センチほどの抜き身の刃。
それは杖の先端に取り付けれる仕掛けが施されていた。
刃を杖の境を布で補強すると、短い薙刀のような武器となった。
その間、僅か10秒に足りず。
「キキよ。我が娘よ。その目に刻め。一騎打ちもまた、武の本懐よ」
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
314
-
-
140
-
-
1512
-
-
4
-
-
20
-
-
59
-
-
59
-
-
39
-
-
93
コメント