老人伝〜年老いても暴れ足りない今日この頃〜

一般ユーザー

1話

 近頃世界は発展し、街にはビルが聳え立ち、AIが街のインフラを管理するようになり、人類は電脳空間に足を踏み入れた。

 目まぐるしく変化する中で、ぽつんと残されている場所もあったりする。

 例えば、街から外れ、山の麓にある町等は、古い木造の家が建ち並び、軒先で元気にお喋りする年配の方が見受けられる。

 それが俺の住む若池町。忙しなく回る世の中から反抗したみたいな町で、俺みたいな隠居する奴にはピッタリだ。

 新聞に目を通しながら珈琲を啜る。それが俺の日課。

 スポーツ欄を見ながら近くにある煎餅に手を伸ばした瞬間、スマートフォンのバイブ音が鳴り響く。

(ったく、誰だよこんな時に……)

 液晶画面をみると、『檜山 修』と映し出されている。

「はいもしもーし」
『おっすリュージ! 元気してたか?』
「元気も何もあっち・・・で会ったろ?』
『まぁ、昨日はあんだけ動いてたし元気じゃない訳ないか』

 両方いい年してるのでしわがれた声でやたらに砕けた会話をする。

「んで? 何か要件でも?」
『今日いつもの場所に21時に』
「そのぐらいメールで伝えろよ……」
『60絡みのジジィは退職して暇なの』
「そりゃこっちもだよ」

 相変わらず老人とは思えないラフな会話をその後10分続けた。暇だから仕方ないね。





 Island Online

 シンプル且つ、奥深いVRMMO。

 ワールドというモノは存在せず(国別のサーバーは存在する)、代わりに番号ナンバーを振られる島と、名前の付いたついた島が存在する。

 その違いは大きいか小さいかぐらいの違いで、名前の付く島には大きな交易都市だったり大規模なダンジョンがあったりするので結構な賑わいを見せる。

 プレーヤーのとれる行動は自由で、モンスターの討伐をメインとしてるが、のんびりと釣りをしたり、家具をデザインして販売したり……

 自由性の高さと今までにないコミニュティで若者に限らず幅広い世代の心を鷲掴んだ。

 勿論、俺達ろうじんの心も……





 午後9時、飯と風呂を済ませ、頭にヘルメット状の装置と首周りに4つ程パッドを取り付け、ベッドに横たわり、こめかみあたりにあるスイッチを押し、電脳空間へと旅立つ。

「虹彩識別開始………終了。ユーザーNo.152756 獅子戸 龍治 さんと識別しました。パスワードに入力して下さい……………パスワード確認。ようこそ、Island Onlineの世界へ」

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