叶えば所詮、夢物語

4.1 1.2 4.2

討伐

 
 登録に少し時間がかかってしまったが、いきなりBランク討伐者としてギルド登録を終えた僕たちは、当初の予定通り討伐依頼を受ける為、依頼書が貼られている掲示板の前でみんなでどの依頼を受けるか考えてる最中だ。

 考えた末、今回は初めての依頼という事で、ランクを一つ下げCランクの討伐依頼を受ける事にした。討伐内容はウィンドベアーを5頭討伐。

 実際、どんな魔物かあまり想像できない。ベアーと名前にあるから、熊のような魔物だと思うが、風のように速いのか、風を操るのか、その辺は全く見当がつかない

 取り敢えず風を操ると仮定し、僕たちはウィンドベアー討伐へと足を運んだ。

 
 
 

 ノルデンの街を奥に進むにつれ街の賑やかさは徐々に消え、木々がまばらに生える草原へと姿を変えていく。

 その頃になると、魔物の侵入を防ぐための防壁が目立ってくる。その防壁を潜り抜けた先にある森が今回の討伐目標、ウィンドベアーが生息している森である。

 僕たちはここが魔物の巣窟で、生と死が隣り合わせだと意識し森の奥へと進んでいく。その道中、ゴブリンが3体現れたが、ここは若紫の一振りで難なく討伐する事が出来、誰も怪我をせずに済んだ。

 そしていよいよ、ウィンドベアーが多く生息していると言われている、森の中層域に到着する。そこからは中層域を出ないように慎重にウィンドベアーを探す

 と  言うのも、この中層域を進むと上層域になり、更に進むと神獣の森と言う名の危険区域が姿を現すからだ。

 神獣の森とは、恐ろしく強い魔物が存在している森で、4つの大きな街の奥にある森の主である。その魔物の目撃された姿が伝説の生物に似ている事から神獣と言われている。

 その神獣の森に生息する魔物は神獣ただ一体だけ。他の魔物は神獣の森に入らない。いや入れない。入ったものは必ず死ぬからだ。

 そんな強大な魔物だ。いつ街を襲うか分からない。故に各支部のギルドは討伐者を集い、神獣を討伐任務を決行した。使徒であるSランク討伐者を15名集めた。しかし、帰ってくる者は誰1人といなかった。全員死亡したと推測できる。

 だが、それでもギルドは諦めなかった。

 数年に一度、Sランク討伐者を集い神獣の森に向かわせているが、一向に誰一人帰ってこなかった。そもそも、誰1人として戻ってきた者はいない為、神獣に関する情報が全く無ないのだ。これが神獣討伐が難航してる理由の1つでもあるらしい。

 現在は神獣討伐を半ば諦め、仮に街に侵入してきた時の対策を考えているようだ。

 そんな恐ろしい魔物の縄張りに入らないように慎重に移動している。とは言ったものの、神獣の森はかなり奥に進まないと現れないし、少し歩いたくらいじゃなにも問題ない。現状、僕らが注意しないといけないのは、上層域に踏み込まない事と、怪我人を出さずにウィンドベアーを5頭討伐することだ。


 警戒しながらも探索すること数分。本命であるウィンドベアーが姿を現した。その姿はすこし緑がかったクマであり、容易にウィンドベアーであると推測できる。そのウィンドベアーとの距離およそ40メートル

 突然現れたのではなく、遠くにいるのを発見した為、皆落ちき焦りはない。ウィンドベアーも真紅たちに気づいてる様子はない。

 そうなれば、わざわざ近づく必要なく瑠璃の遠距離射撃で問題なく討伐できそうだ。しかし、念には念を入れ若紫の''目''を使っておこう。

 若紫の目の能力は見た物の一定範囲内の動きを遅くする能力である。ウィンドベアーの動きを遅くし、より弾を当てやするする作戦だ。

 若紫は目を瞑り集中し、深呼吸する。

 それを数回繰り返し、ゆっくり目を開ける。再び目を開けると若紫の黒い瞳は若紫色に変わっていた。

 全ての神経を目に集め、集中が切れぬうちにウィンドベアーを凝視する。すると若紫色の半円がウィンドベアーの周りを覆うと、一気に行動速度が遅くなった。

 そして、瑠璃がウィンドベアーに銃口を向け、胴体と頭部に1発づつ撃ち込み、若紫色の半円に銃弾が到達すると、銃弾の速度が遅くなり、確実に胴体と頭部に当たる事が確認できると瑠璃は若紫に合図を送る

「もう解いて大丈夫だぞ」
「りょーかい」

 若紫は息を吐き出し集中を解いた。それと同時にウィンドベアーを覆っていた若紫色の半円も姿を消した。

 すると半円の中で止まっていた時間が動き出し、銃弾が一瞬でウィンドベアーの体を貫き地面に崩れて落ちた。

 それを見ていた僕たちは周りを警戒しながら草木をかき分け倒れたウィンドベアーに近づく。そして死体を見た時、ふと思ってしまう、『こんなにも小型なのか』と。

 ウィンドベアーの体長は横たわった状態で約1.5メートルほど。とても成体には見えない。しかし隣りにいる翡翠は「こんなもんだよ」とポジティブに考え、1人で歩き始めてしまった。

 確かにそんなの今はどうでも良い事だ。仮にこれが成体だとしたら討伐しやすくなる。ただそれだけの事。僕たちは考えるのをやめ、少し先を歩く翡翠の元へ向かった。


 しかし、それは突然現れる。

 並んで歩くみんなの前に巨体が姿を現した。その体長3メートルほど、さっき討伐したウィンドベアーとあまり距離が離れてない事から、さっきの親だと推測できる。

 その突然現れた脅威に瞬時に臨戦態勢に入る。そしてウィンドベアーの雄叫びと共にウィンドベアーは5人に一気に飛びかかり距離を詰め、強靭な腕を斜めに振りかざす。

 その距離は余りにあまりに離れており、ウィンドベアーの攻撃は当たらないと思えた。しかし腕を振りかざした瞬間、見えない何か………いや風だ。風が迫ってきた。

 その風は普通の風とは全く違う。音、空間の歪み、木々が倒れたりと、触れてはいけないとそう本能が言っている。

 そう思い皆が攻撃を避ける中

「翡翠ーーー!!!」

 翡翠は動かず、その声は翡翠には届かなかった

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