叶えば所詮、夢物語

4.1 1.2 4.2

クラスメート


 真紅は宿に戻りお風呂場へと向かう。昼間とあって人があまりいないようだ。カゴに衣類がほとんど入ってない。

 カゴに衣類を入れ、貴重品であるカードだけを首から下げ、お風呂へと繋がる扉を開ける。やはり、人はおらず数人と言った所だ。この入浴場はそれなりの大きさがあるので、独り占めしてる気分になる

 そこでまず、体と頭を洗い、湯に浸かる。そこではまたも「ふう〜」と声が漏れる。自分で言っておきながら、毎度おじさんくさいと思ってしまう。

 そして今日は人がいないという安心から「いい湯だなぁ〜」とも言ってしまった。

 すると「そうですね」と隣から声が聞こえてくる。僕は人があまりにも近くにいて焦るのと同時に恥ずかしく、お湯に浸かって1分も経ってないの顔が赤くなっている。

 しかし、僕はこれも何かの縁だと思い、声のする方へ視線を移す。そして驚愕する。かつてのクラスメートがそこにいたから

「あっ………クラスメートの……」
「今の名前は『空』って言うんだ、よろしく………えっと………今の名前は?」

「僕の名前『真紅』、改めてよろしく 空くん」

僕は驚きを隠しつつも、お互いの近況を話し始めるのだが、最初に空が聞いてきてのは、あの日の教室での僕の言動だった

「あの……いきなりこんな事聞くのはあれだけど、あの日の教室での事って演技だよね?」
「それは勿論。あの時はどうやったら2人を守れるかを考えて、それをするにはああいうキャラを演じなくちゃんいけなかったんだ。それに僕は''俺''だなんて言わないしね」

「そうか、そうだよね。あんな事 言うような人じゃないよね。クラスの人達の数名は、『アイツはあんな事言うようなヤツじゃない』言ってたし」
「そう思ってくれてて、ありがたいよ」

取り敢えずクラスの人からの印象は凄く悪い訳では無いようだ。しかし、言ってしまった事はかき消さない。例えあれが演技だとしても、自分がした事に責任を取らないといけない。今度クラスの人に会ったらちゃんと謝ろう。そうしないと僕自身が遣る瀬無い

こうして教室での話は終わり、他愛もない話しを始める

「てか、この1ヶ月ちょいで、かなりガタイ良くなってないか?  腹筋も割れちゃって」
「そりゃー  僕たち森みたいな場所で1ヶ月みっちり特訓してきたからね。だから街に来たのは昨日が初めてだったんだ。それまで森で野宿」

「へぇー、1ヶ月の成果として立派な腹筋を手に入れた訳か。それにして1ヶ月も野宿して大変じゃなかったの?」
「いや、そこまで大変じゃなかったよ。水もあったし、食べ物もたくさんあったし。あっ、でも3日前の夜に120体くらいののゴブリンに襲われた時は焦ったよ。本当に死ぬかと思ったよ」

「へぇー…………」

その時、空は真紅の何気ない言葉に引っかかっていた。3日前といえば地主からゴブリン討伐に行く前日。そして今日、地主から聞いた話によると、あそこの死体の山には計124体のゴブリンが山積みにされていたようだ。そして死体の腐敗具合から討伐されて2日以内だと分かっている。

だとしたら、辻褄が合う。しかし、真紅のパーティーが120以上ものゴブリンの群れを?  この世界に来て1ヶ月で倒せるのか、Bランク相当の魔物たちを……ありえない。

「…………1つ聞いていい、真紅たちか野宿してたのって、ノルデンを真っ直ぐーーー」
「おーい、空くーん。そろそろ出ておいで」

「紫紺だ………わかったよ、今でる。真紅カード貸して」

空は紫紺と言う名の人物から名前を呼ばれる若干の焦りを見せると、真紅の首から下げてるカードを手に取り、空の持つカードをかざす。

「よし、これで俺のカードにも真紅のカードにもお互いの名前が登録できたから後で確認しといて。それじゃあ、また今度」
「そ、それじゃあ……」

そう言い残し空は颯爽と去っていき、結局  紫紺が誰なのかわからぬまま事は終わった。



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