叶えば所詮、夢物語
街
朝日が昇り、それぞれ目を覚ます。
真紅はみんなが起きる時間に合わせて朝ご飯を作る。普段なら何品か作るのだが、昨日の今日だ、そんなに食欲なんて湧いてこないだろうと思いスープしか作らなかった。なにせ、ここにはまだ死体や臭いが残っているのだから。
案の定、真紅の読みは見事に的中し、食欲もなければ元気もない。かくゆう真紅自身も寝てないので元気がない。そんな中 真紅は少しでもこの空気を和ませるため、空元気を出しこの場を盛り上げる
「みんな!!みんなに話したい事があります!!  それはここを離れて街に向かいたいと思います!!」
「そんなに大き声出さなくても、聞こえてるから大丈夫だよ〜」
「あっ、すみません」
どうやら僕の想像していた以上にみんな疲れてるようだ。あの翡翠ですらこんな感じなのだから。故に真紅はは普通のトーンで話す事にした。
「えっと……予定として朝ごはんを食べ終わったあと、すぐにここを出発しようと思ってます。このまま真っ直ぐ行ってどのくらい歩くかわからないから早めに出て様子を見たいと思うけど、何か質問はありますか?」
真紅の皆への問いかけに、蜜柑が答える
「私からいいですか?  どうして急に離れる事にしたんですか?  やっぱり、昨日の事があったから?」
蜜柑の問いに『やっぱりそうくるよな』と、真紅は内心思った。それは急にこの場を離れるとなれば、原因は昨日のゴルリンだと誰でも推測できる。
だが真紅は敢えて昨日の事は理由にあげず、別の理由で蜜柑を説得させる。
「まぁそれも少しあるけど、僕たちがここに滞在した理由は強くなる為だったから、みんな強くなった今、ここを離れても大丈夫かなーって思って」
真紅から帰ってきた答えに納得しているようだ。そして真紅と蜜柑のやり取りを聞いていた翡翠もこの雑木林を離れることに賛成のようだ。
「そうですね。確かにそうしてもいいかもしれません」
「ウチもいいと思うよ」
蜜柑と翡翠の2人からもOKサインが出たため、朝食を食べ終えたのち、早速 雑木林を離れる事にした。
出発して数時間
やはり歩くペースは遅い。頻繁に休暇を挟めてもペースは変わる事はなかった。
途中、1キロ程先を馬車が通り過ぎた時翡翠がそれを見て駄々をこね、それを宥めるのに大変だった。
こんなプチハプニングもありながらも、順調に歩き続け、街に着いたのは日の暮れる少し前だった。
真紅たちは日が暮れる前に街に着きたかったので、後半はほとんど休まず歩き続けた。そのため体はヘトヘトだ。
そんな真紅たちは、いち早く宿を見つけ疲れた体を癒したいのだが、異世界モノの街あるある、  門番さんによる身分検査が行われているため、中々市街地に入らない。
待つ事数分、ようやく僕たちの番がやってきたと心躍らせていたが、一瞬で踊るのやめた。
「なんだ君達は!  別室に来なさい!!」
どうやら真紅たちの形相は相当酷かったらしく、真紅たち5人は有無を言わず裏の別室に連れていかれた。
速攻で別室に案内された真紅たちは、何故連れてこられたかわからず門番にいちゃもんをつける。
しかし、門番から渡された手鏡で自分の顔を見て納得する。そこには、血の気の引いた顔、褐色の悪い唇、目の下の真っ黒なクマ、土と血がついた顔。これは街角アンケートを取ったら、満場一致で不審者認定される
別に自分の顔がイケメンとかは思っちゃいない。しかしここまで酷い顔になっているのかと、自分自身の顔に幻滅している。
だが門番たちは、テンションだだ下がり僕たちにお構いなしに、カードの提示を求めてる。僕たちは自身の犯罪者ヅラに抗う気力すら湧かず、素直にカードを提示する
そんな犯罪者ヅラの僕たちが提示したカードを見て門番が二度見し、手のひらを返したように頭を深々と下げ
「申し訳ありませんでしたーー!!!!」
と叫び謝りだした。真紅たちはあまりの突然の事で目が点になる。しかし門番が謝った理由を聞き、真紅たちは納得する。
「あなた達が、神の使徒様である事に気づかず、無礼な態度をとってしまい、本当に申し訳ありませんでした!!」
なるほど、どうやらこの世界では神の使徒は崇められる存在らしい。故に僕たちより年上の人でもこんな感じなのだ。
真紅は自身にも非があると思っているので「気にしなくていいですよ」と言うものの、門番が「そう言う訳には」と言い聞く耳を持ってくれない。これでは拉致があかないので、僕は門番の方にある提案を持ちかける。
「そんなに言うなら、願いを一つ聞いてもらいます。それは………」
その瞬間、門番はゴクリと生唾を飲み、どんな要求されるかヒヤヒヤしている。が
「……この街で1番美味しいご飯の出る宿にを教えてください」
「………えっ?」
普通な願いに拍子抜けし、門番の思考は停止してしまった。だがすぐに再起動し、真紅たちの問いに答える。
「………あっ、はい、この門を真っ直ぐ行った先に最初の十字路があります。そこを右に曲がって直ぐに『フリッシュ』とゆう宿があります。そこはノルデンでは有名な宿です」
「なるほど、ありがとございます。ところで僕たち、もうここから出ても大丈夫ですよね?」
「はい、大丈夫です。お時間取らせて申し訳ありません」
僕たちはそんな門番に軽く会釈し検査室を後にした。
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