私の世界〜「部活の後輩と付き合ってみた」スピンオフ〜

きりんのつばさ

近い







私達は元いた建物から少し離れた場所に移った。
「さて、説明してもらうよ」
「ん?何が?」
「だから何で国木田と広樹が知り合っているのか?
と、何で広樹が助けてくれたのかってこと!!」
「いや……樋口さん。前者の質問には答えられるけど
後者の質問には澁澤君が悶絶すると思うんだよな……」
と言葉を濁す国木田。
(広樹が悶絶する……はて私は何か広樹の秘密
握っていたっけ?)
「あっ、これってマジで分かってないみたいだ……」
「いや……大丈夫だ、俺は。昔から翔子は鈍感
なのかは分かっているからな……」
「えっ? 何が俺全く話が読めないんですけど?」
「……あれ、ひょっとして今、私って森と同レベル?」
「ひょっとしてじゃなくてまさしく同レベルかな……
うん、同レベルだ」
「ガーーン!! ショック……森と同レベルって
結構傷つく」
まさかあの森と思考が同じなんて私にとって
心にきたダメージは大きかった。
「あの……それでさりげなく傷付いているのって
俺もそうなんですけど……」
「ま、まぁとりあえず僕と澁澤君が出会った話だよね?
それは簡単。
ーー樋口さんの家の付近を調査目的で歩いていたら
明らかに変な野郎がいた。それが澁澤君」
「……広樹、ストーカー?」
「改めて言われるとへこむな……」
広樹は見るからにへこんでいた。
「で、明らかに不審者であった広樹が警察に通報されそう
だったから、僕が助け舟を出した。それから僕らの
親交は始まった」
「へぇ……で、何で広樹が私をストーカー?
広樹みたいな人が私をストーカーする理由が
見当たらないけど……」
私が広樹をストーカーするのなら納得するが
その逆な理由が分からない。
「それは最後にまわして、ちなみに澁澤君がどこに
住んでいるか知っている?」
「そんなの調べてないんだから分からないよ」
正直私ならすぐに調べる事が可能だったが
元担任にあんな事をした時点で広樹に合わす顔が無くて
調べてなかった。
「だよね……じゃあ澁澤君、答えをどうぞ」
「てかいい加減澁澤でいいって……言わなきゃダメか?」
「……教えて広樹?」
「そんな目で見るな……
ーー分かった、分かった!! 言えばいいんだろ!?
翔子が住んでる隣の駅だ!!」
「近っ……」

驚愕の事実。
広樹はすぐ側にいた。
「ちなみに澁澤が通っている大学は僕らの大学から
電車に乗って数駅の場所だよ」
「これも近っ!? 」

驚愕の事実その2
大学も近い。
というかそんなに近くにいるのに私一度も広樹を
見た事ないんだけど……?
いくらなんでも不遇過ぎない私?
「自分で言っておいて言うのもなんなんだけど
ーー君達、すれ違い過ぎでしょ」
国木田がそう言うと
「それは……」
「否定できないな……」
私達はまともな反論が出来ないのであった。
「というか広樹は私がこの大学に行っているの
知っていたの?」
「ま、まぁ……」
「何で知っているの?」
私がまだ広樹と一緒にいた頃はどの大学に行くとは
明言しておらず、まさか都内の大学に行くとは
思わなかったはすだ。
「それはだな……」
「それは?」
「ーー翔子のお母さんから聞いた」
「はぁ!? な、な、な、何で広樹がお母さんと
交流があるの!?」
「色々と深い事情があってな……」
「……まさか広樹って私のお母さん狙い?」
「違うわ!? 何でそうなる!?」
「だよね……私のお母さん美人だもんね……
そりゃ狙いたくなるよね……私みたいな
ジャガイモなんて興味無いよね……」
よくことわざで"トンビが鷹を産む"ってあるけど
私の場合は鷹がトンビを産んでいる。
私がお母さんから引き継いだのは身長の高さだけだ。
「翔子〜? 俺熟女好きって言う趣味ないぞ?
ーー俺が転校してから翔子には秘密で連絡が
あったんだよ。その時に翔子がこっちの大学を
受けるって聞いたんだ」
「やっぱり熟女好きなんだ……あぁショック」
「澁澤、君の幼馴染さ暴走一歩手前だよ」
「だから俺は熟女好きじゃないって!?
で!! 話戻すが!!」
「……話そらしたね」
「元々そらしたつもり無いけどな……
で、最初は翔子と同じ大学受けようとしたんだが
何せ学力足りなくてな……近い大学を選んだ」
「そうなんだ……」
広樹はそう言うが広樹が通っている大学も頭は良く
私が知っている頃の学力からはかなり努力したんだろう
って分かる。
「で、何で広樹はそこまでして私の近くに来たの?」
私はまだ分からなかった。
何でそこまでして、苦手だった勉強も頑張って
私の近く来たかったのかが。
「……樋口さん、まさかここまで言ってまだ分からない?
これ以上だと森以下になるよ」
(あっ、これ国木田のマジトーンだ)
彼が本心で呆れている際の声のトーンだ。
試しに比較対象の森を見てみると……
「すみません〜俺もまだ分かりません〜!!
何で大丈夫です樋口先輩!!まだ同レベルです!!」
森は私に向かって、腕を出して親指を立てていた。
「……森、そういうのはフォローとは言わないんだ」
本日2回目の国木田のマジトーンであった。
とりあえず森には彼女に森のいかがわしい趣味の秘密を
送る事が確定した。






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