私の世界〜「部活の後輩と付き合ってみた」スピンオフ〜

きりんのつばさ

祝賀会

「カンパイ〜!!」
「……乾杯」
カチン
私達はグラスを合わせた。
「いや〜ついに森にも彼女が出来たか〜
お姉さん嬉しいよ〜」
「樋口さんは森の姉かよ……」
と呆れているのは同期の国木田だ。
私と国木田は私の部屋で祝賀会をしていた。
「まぁまぁ〜細かいことは気にしない気にしない〜」
「結構大きい事だと思うんだよね……」
「そんな事気にしていたらシワができるゾ!!」
「……言い方ムカつく忠告ありがとう」
とやややけ気味に飲み物を飲む国木田。
「あらあらそんなに勢いよく飲むと酔うよ〜
国木田はお酒強くないんだから〜」
「ただの炭酸だ!! という君だってアイスの抹茶ラテ
じゃないか!?」
「違うよ〜カルーア抹茶だよ〜」
「嘘つけ!? 今君が飲んでいるの紙パックの
抹茶ラテをグラスに入れただけだからな!?」
「チッ……バレたか」
「バレないと思っていた君がおかしいよ……」
と頭に手を当てて溜息をつく国木田。
「まぁでもよかったね、森」
「あぁ、そうだね……自分が気がついていないだけ
だったから、あとは誰かが気づかせればいいだけ
まぁハプニング起きましたけど……」
「でも大事にならずに済んだじゃん。
どこかの大先輩が頑張ったからだと思うよ?」
「ならその大先輩を褒めてやってくれ
ーーって今度は夏目だ……」
「あぁカップル増えたから?」
「そう、あいつカップルいると見るからに機嫌悪く
なるからな……めんどくせぇ」
「ハハハッ、夏目も大変だね〜カップルいたら
いちいち怒っていてさ」
「笑い事じゃないよ……」
「あっ、そういえば国木田〜」
「……なんだ? また人をからかうのか?」
「ーー私まだこっちに残るよ」
「えっ?」
「だ・か・ら私はまだこっちに残るって言ったの
意味分からない?」
「い、いやそういう訳では無いんだけど……
でもどうして?」
「ん〜? なんでだろ? 分かんないや〜」
「おいおい……」
「でも何となく君らを見てそう思ったのさ」
「僕ら?」
「そう、国木田達」
あの森の事件だって私なら諦めていた。
だけど国木田はバカみたいに諦めずに突き進み
見事に森達を助けた。
なんかその様子を見たら、私の中で何が特定はできないが
何が変わった様な気がした。
「なんか見る相手間違っている気がするけど……」
「うん、見る相手間違えた」
私は笑顔で答えた。
「お〜い樋口さん!? 僕を泣かせたいの!?」
「でも見る相手を間違えたから私の何かが変わった。
変わったから私はここに残るって決めた」
そうだ。
彼らを見たから、私は変わった。
変わったからここに残ると決めた。
もう次こそは逃げない。

ーー高校時代、広樹に置いてかれた時

ーーつい最近、広樹に拒絶された時

私は家に引きこもり、何もかもから逃げようとした。
だけどあんな真っ直ぐな彼らを見ていたら
何故か向き合いたくなった。

ーー私は広樹に拒絶された

ーーだから会って何が出来るという訳では無い

ーーだけど諦められなかった

ーーただ会いたい

ーーあと1回でいい

ーー私の好きな人に会いたい

ーー前回は逃げた

ーーだから今回は逃げない

(でも、もう一度広樹に拒絶されたら……)
なんて思うと足がすくむ。
さっきの決意も挫けそうになる。
結局私は根っこの部分は変わっていないのかも……

「ーー大丈夫だよ、樋口さん」
「国木田……?」
「君が何に悩んでいるのか分からない。
けど困っていたら助けるよ」
「でも……私の事だし……」
「それを言うなら、例のクズの事件だって僕と七海の
事件だよ。でも君は助けてくれた」
「それは……」
あいつが死ぬほど嫌だったからと続けようとしたが
「大丈夫、樋口さんはとても優しい人だよ。
だから自分を卑下しないでもらえるかな?」
国木田は私が言う言葉を分かっているのかとごとく
優しく言ってきた。
「ま、まぁこの美少女翔子ちゃんだからね!!
全ての人に優しいのは当たり前だよ〜!!」
私は照れくさくなり、ふざけた。
「なら、いいや
ーーさてキッチン借りるよ、なんか料理作るよ」
「ローストビーフ」
「いやいや手間かかるよ」
「肉、肉、肉、肉〜!!」
「はいはい、じゃあ何か肉料理作るよ」
「ビーフ、ビーフ!!」
(ありがとうね、国木田)
私は改めてこのお人好しの同期に感謝したのだった。





次回から新章突入します

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