私の世界〜「部活の後輩と付き合ってみた」スピンオフ〜

きりんのつばさ

これはクセになりそうだ







私達は近くにあった喫茶店に入った。
ここは森の好きな人を誘拐した家からも
それなりに近く、森や織田が来やすいと思い
この場所を選んだ。
「コーヒー1つ〜2人は?」
「私は紅茶を、平塚は?」
「ココアをアイスで」
「かしこまりました」
と注文を終えると、店員さんは去っていった。
「にしても平塚〜彼氏が好きなものを頼むなんて〜
熱いんだから〜このこの〜」
「樋口先輩、センパイがココア好きなの
よく知ってますね?」
「そりゃ3年の付き合いだからね〜」
ちなみ国木田はココアを大体ホットで頼む。
「わ、わ、私の方がセンパイのこと知ってます!!」
「ほうほう〜言うね〜」
「ちょっと樋口先輩? あまり平塚をからかわない方が
いいのでは……」
平塚の隣に座っている与謝野が止めに入るが……
「じゃあ与謝野〜織田って炭酸が強い方が
好きって知ってる〜?」
「それぐらい知ってますが……」
「ふむふむ、では織田がラーメンを頼む際に
油少なめ、麺は硬め、トッピングが煮卵とほうれん草
っていうのも知ってるよね?」
「……というか何で樋口先輩がそんな事知って
いるのか疑問なんですが?」
「フッフッフ……そりゃ私だからね〜!!」
織田が与謝野と付き合う前に相談を受けた際に
たまたまラーメン屋だったので
その時の頼み方を覚えていただけだ。
「あっ、もしかしたら与謝野より織田の事知って」
「そ、そんな訳無いじゃないですか!!
彼女である私の方が知ってますよ!!」
「ほうほう、次は与謝野がそうきたか〜」
(よし、作戦通りかな)
私は1人心の中でガッツポーズをした。
私が彼女らをわざと煽ったのは、無理矢理話題を変えて
気分を変えようとしたからだ。
2人とも多少の差はあるにしても単純な性格をしている。
平塚はさっきまで泣いていたし、与謝野の泣いてないが
表情を見れば、明らかに悲しんでいた。
こういう時はバカみたいな事をするのが一番いい。
前に広樹がいた頃、私はしょっちゅう泣いていた。

「うっ……うっ……うっ」
「どうしたのしょうこちゃん?」
「ま、また……いじめられた……」
「ほら、しょうこちゃん、こっちみて」
「な、なに……?」
「がお〜!! たべちゃうよ〜!!」
「な、なに……それ?」
「かいじゅうひろきだ〜!! にげないとたべるよ〜」
「ひ、ひ、ひろきくん?
お、おいかけてきた……うわぁ〜ん!!」

……まぁこの時、私は広樹に追いかけられたため
更に泣いてしまったので逆効果だったが、広樹はよく
私が泣いているとバカみたいな行動をして笑わせて
気分を変えてくれた。
(この2人にもそれ通じるみたいだし〜
しばらくはこんな感じでいきますかね〜)


しばらく2人を煽っていると、2人も笑顔を浮かべる様に
なり私自身少し安心してきた。
そして……
「おっ、森久しぶり〜」
「樋口先輩?」
驚いた織田とその後ろには森と彼が好きな子がいた。
(ほほう、改めてみますと胸大きいな……
今度触らせてもらおうかな)
とよこしまな考えをしていると
「どうしてこちらにいらっしゃるんですか?」
織田が私に聞いていた。
「そりゃ君らの先輩に頼まれたからだよ〜
まぁ国木田に借りは作れたし。
私は帰宅!!じゃ!!」
と私は質問の答えと去り際のセリフを簡潔にまとめ
お金をかな〜り多めに置いて、喫茶店を出た。

(さて、私の仕事は終わったかな〜)
少し離れた場所から喫茶店の中を見ていた。
そこでは平塚が森の思い人に泣きながら抱きついて
森がその場面を見て笑っていた。
与謝野は平塚達に抱きつこうとして彼氏である
織田に抑えられていた。
(というかさっきまで平塚は泣いていたのに
また泣いているよ……与謝野は相変わらずかな)
そんな賑やかな光景を見ていた。
ふと自分のスマホを見てみると、そこには笑っている
私の顔が写っていた。
(あらら、どうやら私もつられて笑っているみたい……
まぁ悪い気分じゃないか)
むしろ心が満ち足りている気分だった。
なんとなくだが、国木田が人にお節介というかお人好し
なのも理解できる気がする。
(これはクセになりそうだ)
私は1人笑いながら思った。

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