私の世界〜「部活の後輩と付き合ってみた」スピンオフ〜

きりんのつばさ

ハッピーエンド?









それからの私達はホテルの部屋でのんびりしていた。
尚ホテルの部屋の日数延長に関しては国木田がフロントで
聞いてみたら大丈夫だったみたいだ。
「……」
私は相変わらず布団にくるまり、スマホのゲームを行い
「……」
国木田は向かいの椅子に座り、本を読んでいた。
朝ごはんで会話した後、私達の間で会話は無い。
そして国木田も気を使ってだろうか
私に話しかけてこない。
……だが正直それが個人的に助かっていた。
私自身、何を話せばいいのか分からない。
(もうどうでもいいや……家に戻ったら
ぐだぐだと自堕落に生きよう。
あっ、レアキャラ当たった)
今までやっていて中々当たらなかったキャラだったので
私が1人で少し喜んでいると
「ふぅ……」
国木田は読んでいた本をパタンと閉じた。
そしてまた別の本を鞄から取り出した。
(えっ、2冊目入っていたの?)
彼は結構本を読むのは知っていたが、普通手元に
2冊も置いておくだろうか?
(まぁいいや、私もゲーム見てよ)
と私もスマホに目を移した。


そしてしばらく経ち
「ふぅ……今回も中々良い話だった」
どうやら国木田は2冊目も読み終えたみたいだ。
(さて2冊目を読み終えたけど……どうするのか?)
と国木田は自分の鞄に読んでいた本をしまった。
そしてまた別の本を取り出してきた。
(3冊目!? 待って待って!? おかしくない!?
普通手元に3冊おく!?)
私の頭は混乱していた。
「どうしたの樋口さん?」
「……い、いま3冊本が出てきた」
「本? あぁこれね」
と国木田は自身が持っている本を手元に改めて見た。
「さ、さっきから……本が次々と出てくる……」
「僕って多少活字中毒なんだ。だから長旅だと
本を3冊ぐらいはストックしておくんだ」
「へ、へぇ……」
同期の隠れた特性を知った日だった。
「ちなみに僕が持ってきたのはこれだよ」
と国木田は手元の1冊と鞄の2冊を取り出して
私の前に広げた。
「……全部……恋愛モノ?」
そこにあったのは純愛、ラブコメ、異世界転生系恋愛
という種類が違うとはいえども全て恋愛系だった。
「そうだよ。僕は前から恋愛系を読むのが好きなんだ。
特にハッピーエンド系のがね」
「ハッピーエンド……?」
「そりゃ悲愛系のも読むけど、やっぱりハッピーエンドが
一番読んでて楽しいからね」
「……ハッピーエンドね……」

ーー私も昔は憧れた

ーー王子様がカッコよく登場して

ーー最後は結ばれるハッピーエンドを

ーーその王子様が私にとって広樹だった

(今の私には二度とハッピーエンドは来ない。
くるのはバットエンドのみ)

ーー何故なら私は王子様に嫌われたのだから

「まぁだからという訳ではないのだが……」
「……ん?」
「樋口さん、君にとってのハッピーエンドを
迎えて欲しいんだ」
「……なんで?」
「だってまだ完全に終わってはないでしょ?」
「……もう終わった……」
「でも、不思議だと思わない?」
「何が……?」
「普通嫌いな人間を助けるかな?」
「……それは広樹が……優しいから」
(だって広樹は優しいから。その優しさに甘えて
今までいたんだよ、私は)
「普通どんなお人好しでも嫌いな人間を助けないよ。
彼にとって君が大切だったからじゃないの?」
「……そう、かな?」
「僕はそう思うよ?まぁ彼と君の関係を詳しくは
知らないから、何とも言えないけどさ」
「……」
「と、話をしていたらお昼の時間だ」
そう言われスマホの時間を見てみると正午を指していた。
「お昼……」
「まっ、難しい事を考える前にお腹を満たそうか?」
「……買ってきて……もしくは……作って……」
「はいはい、そんな感じしてましたよ」
と国木田はお昼の準備をし始めた。
(広樹にとって私って……何だったのかな……?)
その考えが頭の中でぐるぐると回っていた。

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