私の世界〜「部活の後輩と付き合ってみた」スピンオフ〜

きりんのつばさ

まだ足りない


例のクズの退学の裏話回となります









常村の退学が決まったその日の放課後
私は広樹と良く来ていたファミレスにいた。
手元にはドリンクバーでの抹茶ラテと
ポテトフライがある。
「もぐもぐ…やっぱり美味しいな」
(フフ…まずは1人だ…にしても
あの最後の顔は無様だったなぁ〜!!)
私は内心で久しぶりの大笑いをしていた。
こんなに笑ったのはいつぶりだろう?
多分、彼がいなくなってから初めてだろう。
…まぁクラスでは無理矢理表情を作って
笑ってはいたが。
(とりあえず今回は成功したな…
最後らへんに誤算があって、計画は変更したけど)
とりあえず作戦が成功して、ほっとする。
警備員に見つかった時はかなり焦ったが
夜中だったのと黒いパーカーのおかげで
特定されずに済んだ。
(元々、あの一家は色々とやりすぎてたから
叩けば叩くほど、出てくる出てくる)
あの一家は広樹以外にも色んな事をして
気に入らない者を排除していた。
…まぁそれが家の権利をゴリ押しだったから
すぐにバレたのだが。
調べた後は彼らがやった事を、警察、マスコミ等に
送りつけて、はい完成。
(…保険でマスコミに送っておいたら
面白いぐらい取り上げていたし〜)
常村自身も色々と犯罪ギリギリをしていたので
捕まるのは当たり前だろう。
捕まったら、しばらくは出てこれないだろう。
それぐらいの事を彼はしてきたのだから当たり前だ。
(今日は実に気分がいいなぁ〜ポテトもこの抹茶ラテも
今は高級店の味がするみたい〜!!)
この抹茶ラテとポテトフライというか組み合わせは
広樹とよくこのファミレスで頼んでいた組み合わせだ。


「パクパク・・・もぐもぐ」
「翔子って本当にポテトと抹茶ラテ好きだよな」
「この2つは……私の……血と肉……大事」
「えっ、そこまでなのかこれって!?」
「2つあれば……私生きていける」
「……やっぱり翔子は面白いな」
「むっ、今……バカに……した
広樹のも食べる……パクパクもぐもぐ」
「ぎゃあぁぁー!?俺のポテトがぁぁー!!」
「ポテトを笑う者……ポテトで泣く」
「いやだな、俺が笑ったのは翔子なんだが……」
「パクパクもぐもぐパクパクもぐもぐ」
「ちょっと翔子さん〜!?さっきよりもポテトを
食べるスピード早めないで〜!?」

「ふぅ…楽しかったよね、あの頃は…」
私は改めて反対側の席を見る。
そこには今は誰もいない。
私にとって一番大事な人がいたはずだった。
だけど今、その席は空席だった。
「とりあえずは半分だ……だけどまだ半分」
(まだ足りない、まだ足りない!!
私の心に空いた穴を埋めるには足りない!!)
そう、もう1人いるじゃないか……
「次は貴様だ、担任」
まさか彼氏のために自分の教え子を学校から
追い出した張本人はまだのうのうと
生徒に勉強を教えている。
(まだ、あんたに人に教える資格あるのかね?)
今日の帰りに、ちらりと職員室をのぞいたが
明らかに落ち込んでいた。
(どうだ……大切な人を失う気分は……?)
正直あの担任を追い詰めるには今が一番だろう。
精神的にかなり病んでいるこの時期に一気に
畳み掛けてやろう。
……昔の私なら怖くて出来なかっただろう。
だけど……
(今の私には失う物は何も無い……!!
どんな手を使ってでもあいつを再起不能にしてやる)

ーー私の中では既に色々と壊れていた。
だけど、誰もそれに気づかない。
ーー自分すら気づいていない。
いや、もしかしたら気づかないフリを
しているのかもしれない。
でも、そんな事はどうでも良かった。
ただ目の前の復讐に全力を注くだけ。
(後の人生?はっ、どうにでもなれ……
私にはもう復讐しか残っていないし)
それに……
私はスマホに入っている広樹と
最後に撮った写真を見た。
この時の私は本気で笑っていた。
(何よりも広樹がいないのが何よりも辛い……
私はこれ以上耐えられない)
スマホをしまい、残りのポテトと抹茶ラテを
済ましてファミレスを出た。
「あっ、夕焼けだ……」
何故か妙に夕焼け色の空が目に眩しかった。






次回から担任が復讐の相手となります。

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