私の世界〜「部活の後輩と付き合ってみた」スピンオフ〜

きりんのつばさ

崩壊〜その7〜




私達が来たのは地元から電車で1時間ぐらいのところに
あるショッピングモールだった。
実を言うと30分くらいの場所にも同規模の
ショッピングモールはあるのだけれども
そこには私達の学校の知り合いが沢山いると思い
わざわざ遠い場所を選んだ。
(でも、長い時間・・・広樹と隣で話せる・・・)
私はそんな時間でさえも幸せに感じていた。
そこに着いた私達は色々な事をした。

ーー話題の映画を見たり

ーーゲームセンターでプリクラを撮ったり
(なおこれは私の希望を広樹に押し通した結果
広樹は最後まで渋っていた)

ーーフードコートで一緒に食べたり

ーーカフェでお茶したり

まるでカップルが行う様な事をしていた。
(私・・・幸せ・・・もうやり残した事はないよ)
「お〜い、どうした翔子〜帰ってこ〜い」
「広樹・・・邪魔しないで・・・私の夢の時間を」
「いやいや俺ら今遊んでいるんだよな ︎
1人で楽しまないでもらえるかな ︎」
「チッ・・・空気読んでよ・・・」
「俺が悪いのか ︎俺なのか ︎」
「嘘だよ・・・多分」
「やっぱり多分なのか ︎」



そして夕方ぐらいになりそろそろ帰る時間になった。
母はふざけて帰ってこなくていいって言っていたが
流石に帰らないといけないだろう。
「翔子、帰るぞ」
「う、うん・・・」
と私達は駅に向かった。
駅に着き時刻表を見ると次の電車まで時間があるようだ。
私達はしばらく雑談をしていた。
「今日はどうだった?」
「私・・・?うん、楽しかったよ・・・広樹は?」
「俺はか・・・久々に心から楽しめたよ」
とそこへ電車が来た。
「電車・・・来たよ・・・」
私が立とうとした瞬間、広樹は私の手を掴んだ。
(え、え、え ︎な、な、な、何で ︎)
私の心臓の鼓動が一気に速くなった。
「ひ、ひ、広樹 ︎電車・・・乗らないと・・・」
「・・・」
何故か、広樹は黙ったまんまだった。
そしてそうしているうちに電車は行ってしまった。
「なぁ翔子」
「な、な、何かな?」
広樹は真面目な表情をして私に
「もしさ・・・俺がどこかに行くとしたらさ・・・
翔子を誘ったら来るか?」
と聞いてきた。
「い、い、いきなり・・・ど、ど、どうしたの?」
(それよりも手をどうにかして・・・ ︎)
でないと私がそろそろ危ない。
「心配すんな、もしもの話だ。とりあえず答えてくれ」
「う、うん・・・私は・・・付いて行くよ」
(だって広樹は私にとっての世界だもん・・・)
その世界がどこかに行くなら私も付いて行くだろう。

ーー広樹がいない空間に意味は無い

ーー彼がいてこその私の世界なのだから

ーー彼が行く場所、どこにでも行く

「私は・・・広樹に・・・付いて行くよ」
(広樹がいないなんて私には無理だよ・・・)
「そうか・・・
すまん、今の質問は忘れてくれ」
「ねぇ広樹・・・何でこんな事聞いたの?」
「いや思いつきだ、さっ帰ろうか」
広樹は何かをはぐらかした様に言った。
「広樹・・・?」
「あっ、あとさ翔子」
「ん?何かな?」
「翔子は何があっても変わらないでくれよ」
「えっ・・・ねぇ今日の広樹は変だよ。
何か悩みあるなら聞くよ・・・?」
「いや、大丈夫だ。心配すんなって
さっ帰ろうぜ」
「う、うん・・・」


私達は最寄りの駅で降りた後、お互いの家までの帰り道を
一緒に歩いた。
・・・まぁ家が隣なのだから当たり前だけど。
そして気がついたら私達の家がある場所が見えてた。
(もう終わり・・・寂しいな・・・)
「翔子」
「・・・ん?」
「手を出して」
「?はい」
と私が手を出すと、広樹はカバンから何かを取り出して
私の手の平に置いた。
「こ、これは?」
「まぁ俺からのプレゼントだ
翔子にはいつも世話になっているからな」
「わぁ・・・」
広樹がくれたのは花の髪留めだった。
(広樹が私にプレゼント・・・ ︎
な、何にこれ?夢かな?)
「夢なら覚めないで・・・ ︎」
「何をしてるんだ翔子・・・?」
広樹に呆れられてしまった。
「ほら、翔子って髪綺麗だからさ
この髪留め似合うかなって思って」
「うぅ・・・ ︎」
私はとうとう泣き始めた
「って泣いてる ︎す、すまん泣くほど嫌だったか ︎」
広樹が慌てて始める。
「ち、ち、ち、違う・・・ ︎その逆・・・ ︎」
「逆・・・?え、えっとじゃあ嬉しいのか?」
「(コクコク)」
(広樹からプレゼントもらって・・・嬉しくないはずが
無いよ・・・ ︎)
「なら良かった」
と言うと広樹はフッと微笑んだ。
「・・・つけて」
「はい?」
「これ、つけて」
という私は先ほどの髪留めを広樹に渡した。
「あの・・・翔子さん?」
「・・・つけて」
「はい・・・全く・・・」
と文句を言いながら、その髪留めを手に持ち
私の髪につけてくれた。
「・・・えへへ」
「ま、まぁ喜んでくれたならいいや」
どうやら広樹も照れているようだった。
「うん、ありがとう広樹・・・ ︎」
「どういたしまして。
あっそういえば俺、明日から高校に行くよ」
「えっ ︎ほ、ほ、本当 ︎」
「あぁ本当だよ。だけど明日は少し用事があるから
朝は一緒に行けないよ」
「そ、それでもいい・・・また一緒に」
(また一緒に学校生活を行える・・・ ︎やった ︎)
「なのですまんが俺が休んでいた間のノート見せて
くれると幼馴染はとても嬉しいかな・・・」
「う、うん ︎なんなら今から徹夜でテスト対策まで
つけたノート作るよ ︎」
今なら広樹からプレゼントもらったテンションで
2日は寝なくても大丈夫な気がする。
「いや徹夜はしなくていいよ ︎
普通のノートでいいからな ︎」
「広樹がそういうなら・・・」
「じゃあまた明日学校でな ︎」
と広樹は走って自分の家に戻った。
「う、うん ︎ま、また明日〜 ︎」
私も自分の家に戻った。

まぁこの後、例の髪留めと
私の表情を見て
母が猛烈にからかってきたのは
予想に容易いだろう。








ショートストーリー〜とある幼馴染の独り言〜

「今日は楽しかったな・・・」
久々に心から笑えた気がする。
あの幼馴染といると笑いが尽きない。
「とりあえずは渡せたな」
と俺は髪留めをあげた時の幼馴染の笑顔を
思い出す。
本来だったらあの幼馴染が笑っていられる様に
俺が守ってやりたい。
だけど、これからは無理だろう。
「これで良かったんだよな・・・俺?」
俺は多分幼馴染に辛い思いをさせるに違いない。
もしかしたら嫌われるかもしれない。
それでも俺は構わない・・・

ーーあの笑顔

ーー俺にとっての大事な笑顔を守るためなら



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