私の世界〜「部活の後輩と付き合ってみた」スピンオフ〜

きりんのつばさ

崩壊〜序章〜




それはとある日だった。
私がいつもの様に1人で帰っていると
前方に広樹が1人で歩いていた。
(珍しい・・・1人なんて・・・)
最近はずっと彼女である三浦亜紀と帰り道は
一緒だったのに何故か1人だ。
(・・・何か様子・・・変だ・・・)
直感でしか無いがいつもの広樹と様子が変だ。
いつもなら真っ直ぐに伸びているはずの背も
今日に限っては猫背気味になっている。
(話しかけた方がいいかな・・・
め、迷惑にならないかな・・・どうしよう)
頭の中で色々と考えた結果、私は話しかける事にした。
「ひ、広樹・・・?
ーーど、ど、どうしたの ︎」
私が驚いたのは広樹が明らかに落ち込んでいたからだ。
広樹は人前で落ち込んでいる姿を見せたがらない。
「あ、翔子か・・・何でも無い」
私だと分かった瞬間、笑顔を作る広樹。
「な、な、何でもなく無いよ ︎
だって・・・明らかに・・・」
「気のせい、気のせい・・・ただテストが大変だ」
「定期テスト・・・終わった・・・嘘」
というかテストの点数良かったはず・・・。
「チッ、誤魔化せないか・・・」
「広樹・・・嘘・・・下手すぎる」
「ハハッ、辛辣だな」
「広樹・・・」
私は広樹に何をすればいいか分からなかった。
何をしたら彼が喜ぶのかそれが分からなかった。
(ど、ど、どうすれば・・・)
「翔子」
「何・・・かな?」
「帰るか」
「で、でも広樹・・・三浦さんは・・・?」
「あぁ・・・亜紀か・・・」
と途端に暗い顔をする広樹。
・・・多分彼女と何かあったんだろう。
それに私が触れていいのだろうか?
(でも・・・広樹が・・・悲しんでいる・・・)
「まぁたまには翔子と一緒に帰りたいんだ。
ダメかな?」
「私は構わない・・・けど・・・」
「なら帰ろうか」
と私達は何週間ぶりに一緒に帰った。
・・・ただ一言もお互い話すことは無かった。

そして私達は無言でお互いの家まで歩いた。
今まで一緒に歩いていて無言だったのは初めてだ。
(ど、ど、どうしよう・・・話振った方がいいかな?)
何て頭の中で必死に悩んでいると不意に広樹が
「翔子」
「ひゃい ︎」
いきなり呼ばれたのだから驚いた。
「・・・大丈夫か?」
心配するべきの広樹に心配された。
「だ、だ、だ、大丈夫・・・うん、大丈夫」
「?変な翔子。
まぁいいや話を聞いてくれるか?」
「う、うん?どうしたの?」
「実はな・・・
ーー亜紀と別れたんだ」
「えっ・・・」
今、広樹は何て言った・・・?
三浦さんと別れた?
「ど、どうして ︎あんなに仲良かったのに ︎」
(私が広樹を諦めるぐらいだったのに ︎)
「まぁ、俺の努力不足かな・・・」
と言いながら私から目を逸らす広樹。
「嘘だよね・・・そんな理由じゃ無いよね ︎
だって広樹はこんなにも優しいのに ︎」
「翔子は俺を買いかぶり過ぎだ。
俺はまだまだだったんだよ」
「広樹・・・嘘つかないで・・・
私、悲しいよ・・・」
と何故か私の目から涙が出てきた。
明らかに嘘をついている広樹を見ていると
悲しくなってくる。
「って翔子が泣くなよ〜せめて笑ってくれ。
彼女に振られた惨めな男なんだからさ」
広樹はあくまでもその嘘を貫き通すつもりらしい。
「広樹は違う・・・惨めなんかじゃ無い ︎
だって・・・こんなにもカッコいい ︎」
私はつい感情的になってしまう。
というか私にこんな怒る感情があったのかと
自分でも驚いている。
広樹は一緒驚いた顔をしたがすぐに笑顔に戻り
「翔子ありがとうな。気をつかってくれて」
私に向かって微笑んだ。
「わ、私は違うよ・・・気をつかってなんて・・・」
全て私の紛れも無い本心だ。
そもそも私は気をつかうのが苦手な方だ。
「そうだ、翔子」
「何・・・?」
「明日から一緒にまた学校行くか?」
「えっ・・・?」
それは私にとってはとても嬉しい提案だ。
だけど・・・
「広樹は大丈夫なの・・・?」
「俺は大丈夫さ〜」
というと私を急に抱きしめてきた。
「ひ、ひ、ひ、ひ、広樹 ︎ど、ど、ど、どうしたの ︎」
私はいきなりの事で驚いて、いつも以上に
声が吃ってしまった。
「大丈夫」
「だ、だ、だ、だから何?」
「翔子だけには絶対何もさせない
ーー俺の全てにかけて」
「えっ」
と私が驚いている内に広樹は私から離れて
「じゃあまた明日迎えに行くからな〜」
そう言うと彼は家に走って帰っていった。


"翔子だけには絶対何もさせない。
ーー俺の全てにかけて"
彼が何でこの言葉を私に言ったのか
未だに分からない。
ただこの時に気づけば良かったのかもしれない。

ーー何故ならこの後に起こる様々な事に
予防線を張ることが出来たかもしれなかったからだ。






ショートストーリー〜とある男子の決意〜

「さて明日からどうするか・・・」
俺自身も何となく予想がつく。
明日から大変な事になるという事は・・・
「俺は我慢すれば何とかなるが・・・」
あの幼馴染はそこまで強くない。
「翔子だけは絶対に守る・・・」

ーーだから翔子。

ーー君は変わらないでいてくれ。

ーーそれが俺の望みだ。

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コメント

  • あいす/Aisu

    例のクズ…
    やりやがったな!Σ(゚д゚lll)

    2
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