童話集3

増田朋美

ほんのすこし

高校生は、一番難しい年頃である。それは、しっている。大学で習っていた。だから、きっと、私はうまくいくだろう、とおもいながら、この高校のつちをふんだ。

私は特別進学科の副担任をまかされた。担任がある程度年輩の方だから、教師になりたての私には都合がよかった。
しかし、特別進学科というモノは、相当厳しいものだった。みな、国公立大学を目指すのだ、と、担任はいうが、昨年に、国立へ行ったものは、二人しかない。それはそれでいいんじゃないか?と私は思う。例えば自衛隊に入るのであれば、防衛大学校にいかなければならないが、そうでなければ、大学という場所は、非常に専門的に学べる場所であるから、本人が好きにすればいいとおもうのだ。わたしも、高校では教師になりたいとはおもわなかった。しかし、大学で、おしえることが、とても面白いということがわかり、教師になったのである。
担任たちは、学費や、親御さんの事情や、真理のことなど、ありとあらゆるデマをつかい、生徒を脅かし、どうしても、国公立にいかせようとする。少しでも、反論すれば、物差しでひっぱたく。毎日がこの繰り返しだ。せめて、私が担当する体育の授業では、らくになってもらおうと、人気のあるサッカーだけでなく、柔道も教えた。このこたちに強くなってほしい、と願い、ひたすらにおしえていた。
そのなかに、千代子という子がいた。体育の技術的には、にがてなのだろうが、それはある意味しかたない。しかし、担任は、できの悪い彼女を無視し、他の子にするようにおしつける。私は彼女に、他の人とちがう能力があると、みやぶった。それは、彼女の感じる能力だ。彼女は、表情や、ことば使いからひとの心理を読み取るのがうまい。だから、過剰なサービスをする。担任は、それを捨てろというが、私はうまれもった能力だとおもう。ほんの少し回りの人とはちがうのだ。
あるとき、担任が授業をしているときであった。担任が、できの悪いせいとにむかって、怒鳴っていると、千代子は、古和がってなきだした。目の前で体罰をしたのに、怯えたのだ。
「千代子!」
担任は、怒鳴った。
「こんなことで、泣くなんて、社会に出たらつうようしないぞ、そんなものは、刑務所しか、いけないな!」
千代子は、さらになきだし、人間とはおもえない声をだした。そして、自分の机をけとばして、椅子を教室のそとへ放り出してしまった。
「おまえはな、先生方のいうことをきかないからわるいんだ。
先生がいうように、国公立にいけば、そんなにクルシムことはないぞ。」
担任は、優しく語りかけるようにいった。それは、優しさではない。悪魔のささやきだ。千代子は、大学にはいかない、と公言していた。彼女は、料理が好きなこだから、料理学校にいきたかったのだ。料理なんて、毎日普通に行われるから、一番実用的な学問だと、おもっていたが、担任は、国公立大学にいくしかあたまにないのだろうか。私は千代子が心配だった。私は、彼女に、退学をしなさい、その方があなたのためよ、といったが、彼女は、料理学校にいきたいといい、つうじなかった。
私は、担任や、その他の教師がかえってしまったあと、担任の体育館シューズを盗みだし、体育館の近くで、シューズをもやし、それを、どぶがわに捨てた。
翌日、担任教師が体育館シューズがないと、騒ぎだした。待っていましたとばかり、私は、千代子が、犯人だとつげた。
担任教師は彼女を強制退学とした。
私は、そうするしかなかった。
私自身も、つらかったから。

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