チートなはぐれ魔王の規格外な学園生活

金田拓也

20決別

俺は、いや、俺たちはお互いを見れないでいた。
それも当然だろう。ここにいるのは、犯人と被害者であり、その犯人を育てていたのが被害者の母親で、その母親は、被害者の村人達が殺した。自分と同じ被害者は、実は、犯人と変わらなかった。そして犯人はその復讐をした。犯人も見方によれば被害者でもあったのだから。

ただただ時間だけが流れる。
初めに声を発したのは
エリカ「…ねぇ魔王」
エリカだった。声はとても弱々しく、小さいものだったが、それに気づけないほどの距離にはいなかった。
魔王「…なんだ」
そう返す魔王の声もまた、弱々しいものだった。
エリカ「私の母さん。どんなだった?」
魔王は目をつぶり息を吸い込んだ。
魔王「…いっつもふざけてて、だらしなくて…それでいて…」
様々な思い出が脳裏をよぎる。楽しい思い出がたくさん。その度に会いたい気持ちが募っていく。どうしようもない気持ちが。
魔王「優しくて…強くて…いつも笑顔が絶えない人だった…」
ーあぁ。会いたいー
とまた、思ってしまう。
エリカはその間ずっと体育座りで手を組み、顔を埋めていた。
エリカ「そっかぁ」
そうエリカが言う。
とても優しい風が吹く。だけどその優しさが心を締め付ける。
暖かく、今にも壊れてしまいそうな空間が広がる。それを壊したくなくてそれっきり、お互い一言も話さずにいた。

しばらくしてエリカが意を決したように立ちがった。
落ちている剣を手に取り、魔王の方を振り返る。
エリカ「魔王。ちょと付き合いなさい」
そう言うと、学校の地下の訓練所に歩いて行った。
訓練所に着くとエリカは聖剣ではない腰の剣を手に取った。
そして、真っ直ぐに魔王を見つめた。
エリカ「私を負かして欲しいの。私が前を向くために、過去を受け止めるために。お願い」
そこで思う。こいつは強いな。もう向き合っている。これがあの時俺が感じだ強さだ。
それに比べて俺はまだ引きずっている。しがらみにいつまでも囚われて、、、
でも、お前の前だ。少しでも強くあろう。
魔王「…分かった」
そう言って瞳を見つめ返す。
そうして、お互いで見つめ合う。

エリカは剣を構えると、地面をトンッと蹴る。
エリカは負かして欲しいと言った。だが、彼女は負ける気など毛頭ないそんな表情だった。真剣な。彼女は勝つために剣を振るう。
二度目、彼女に再会した時も彼女はそうだった。とても強くて。その強さが眩しくてしょうがなかった。
『シャキッとしろ!シャキッと!図体ばかりデカくなりやがって』
ーあぁ。分かってるよー
『もう十分お前は強くなったよ。誇っていい。お前は強くなった』
ーうるせぇよ。…まぁ。俺、それなりに頑張ったんからー
『ふん。可愛くない奴』
ー余計なお世話だー
『よく頑張ったな』

『私はもう必要ないだろ?』
ーそんな訳…ー
『ほら前を見ろ!前を!』
ー俺はー
『大丈夫。お前はもう一人でもやれるよ。なんたって私の息子だからな!じゃあな』
ーあぁ。じゃあな。フェリド。今までありがとなー
それにフェリドは、ふんと言いつつも笑った。

エリカは魔王にめがけ剣を振り下ろした。
だが、気づけば、剣先がなくなっていた。
魔王の周りには、黒い炎が纏わりついていた。
エリカはその先がなくなった剣を捨て、聖剣を出現させた。
そして、魔王にめがけ、今度は突きを。
魔王は右手を上げる。すると黒い炎が手から放出され、全てを燃やす業火がエリカの真横を通り過ぎていった。


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