チートなはぐれ魔王の規格外な学園生活

つくつく

14過去の失敗

あれはいつのことだっただろう。いつも通りの朝にいつも通りの時間に目が覚めた。ただいつもと違ったのはベッドの横に剣があったことだけだった。
「汝は何を望む?」
剣にそう問われた。
この時の私はとても嬉しかったのを覚えている。だって勇者に選ばれたのだから。いつも真似をしたりしてたのを覚えている。だって憧れだったから。だから私は言ったのだ。
「私は誰にも負けないくらい強くなってみんなを守る!」
「…。いいだろう。汝の望みを叶えよう」
そして、私は嬉しくってその事を父さんに話した。父さんは母さんを亡くしてからずっと悲しそうだったが、この時はやつれたように笑ってくれたのを覚えている。
それから数日後に村に何十匹の魔獣が現れた。しかし聖剣の力は凄まじく、あっという間に返り討ちにしてしまった。それを見た村人達はまだ5才私に額を地面につけ懇願してきた。
ずっと村に残って欲しいと。
私の村は魔獣に苦しめられてきた。いつも駆けつける兵士は遅く人が死ぬのは珍しくなかった。ゆえに、未だ小さな私を、希望を手放したくなかったのだろう。だがそれは不幸の始まりだったのかもしれない。
それは私が7才になった頃だった。再び魔獣が攻めてきたのだ。私は聖剣を持ち戦い、魔獣を倒して村を救うーはずだった。
魔獣の中には、小さな魔族がいた。その魔族は強く、全く太刀打ちできなかった。
気を失う私を小さな魔族は冷たく、どこか切ない表情で見ていた。
次に目が覚めた時には全てが終わっていた。
村人達は全員が無惨に殺されていた。
どうして?と言う疑問が浮かぶが答えは知っていた。村で戦えるのは私だけ。いつも通りに避難していればこんな事にはならなかった。
「いや違う!私が弱かったから!私が負けてしまったから父さんは!村長は!みんなが命を落としたんだ!私のせいで!」
そして、地面に膝から崩れ落ちるとその小さな手をぎゅっと握る。地面の冷たい触感がする。
手に掴んだ砂を力一杯握りしめ
「もう!私は誰にも負けない!絶対に!」
そう言って小さな銀髪の少女エリカは決意した。

エリカ「ーない」
「あぁ?何ボソボソ言ってんだ」
そう言ってカイザーはエリカの首を絞める右手に力を込める。
エリカ「私は、負けない」
そう言うと、体がフワッと軽くなるのが分かった。目の前には驚愕しているカイザーの表情がある。今までエリカの首を掴んでいた右手が力なく地面に落ちる。
カイザー「な!?お前まさか!勇者か!」
そう言って、距離をとろうとする。死角からカイザーの尻尾がムチのようにしなってエリカめがけ飛んでくる。
先ほどの自分では対処できないだろう。だが
右手にある剣で横に一振りする。すると尻尾は綺麗に切れた。
カイザーの方向に地面を蹴る。
すると、目の前に何重もの透明な壁が出現する。魔力障壁だ。
突きをしながら突撃する。それだけでパリンパリンと乾いた音を鳴らしながらあっという間に魔力障壁がなくなる。
エリカ「終わりだ」
そう言って剣を振り下ろそうとすると
カイザー「舐めるなぁーー!」
そうカイザーが叫び、その顔に剣が振り下ろされる瞬間に聖剣が姿を消した。
すると、今まで軽かった体が突然重くなり膝から崩れ落ちる。それで何度目かの瞬きをした瞬間痛みが体中に走った。
思わず叫びそうになるのを懸命に堪える。
「いやぁー。今のは危なかったですねぇ魔王さん」
と随分と陽気な声が聞こえ、エリカはそちらの方を睨みつける。するとそこにはふざけた化粧をした男が立っていた。
カイザー「メフェスト」
メフェストと呼ばれた魔族はこちらをニコニコしながら見つめると
メフェスト「いやぁ。強いねお嬢ちゃん。顔も綺麗だし。聖剣の呪いがなかったら負けてたかも」
そう言われ、驚きの顔でそよふざけた顔を見る。それからメフェストはうーんと考えるような顔をすると
メフェスト「勇者と魔王の子供って面白そうじゃないですか?」
とニヤニヤしながらカイザーを見る。
カイザー「悪いがそう言う趣味はねぇ」
とカイザーが睨むつけるとメフェストはわざとらしく肩を上げると
メフェスト「じゃあ。こいつは実験道具にしますね」
そう言った時だった。メフェストとカイザーが同時にそちらを見た。
風が強く荒れ、急に気温が寒くなったかのように思えるほど背筋がゾッとするものがあった。なんだが、前にも感じた事のあるそれを感じながらエリカはおそるおそる、後ろを振り返った。
そこに立っていたのは
エリカ「ま、魔王?」
と声が漏れる。
魔王「テメェら覚悟は出来てんだろうな」
そこに立っていたのは激昂した魔王の姿だった。


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