スーパーウルトラ大冒険(仮)

極大級マイソン

第10話「オコメ・ヘイハチロウ」

 1回目のダンジョン攻略は見事失敗した。
 オオヤマは、街の噴水前でうな垂れていた。自分の痛い失敗を思い返して、やるせない気持ちが溢れてきているのだ。
 そして、何よりショックなのが自分が死んでも仲間達が戻ってこないことだった。

「彼奴ら……俺を置いてダンジョン攻略を続けているのか? まあ俺が居なくても、二人ならきっと第三のメインクエストをクリアしてくれるはず」

 足手まといでしか無いオオヤマをわざわざ連れ戻しに来るほどの利益がないことは、オオヤマ自身にもわかっていたことだった。
 しかし、内心複雑な思いは感じており、オオヤマは噴水前で大きくため息を吐く。

「……折角だし、街の中でも探索してみるか」

 オオヤマは、重い腰を上げて街を見回ることにした。
 街の中は、人の活気に包まれた豊かな場所。平和そのものな場所だ。外で盗賊が出て来たり凶悪なモンスターが蔓延っているとは思えない。
 治安も良いし、外でモンスターと戦うオオヤマ達とは比べようもない安全な場所だ。
 オオヤマは、近くの屋台で串焼きを買って、近くのベンチに腰掛けた。

「……うん、美味い。ゲームの中だけど普通に食えるし、本当にリアルの世界みたいだな」

 オオヤマは、ここがVRの世界であると忘れそうになるくらい、このゲームの中で普通の日常みたいに串焼きを食べている。
 少しだけのんびりしていると、オオヤマはふと思った。

「……そう言えば、ここって時間の流れとかあるのかな? オレらがこの世界に来てから、どれだけの時間が経ったんだ?」

 オオヤマは、近くに時計らしき物がないかと調べてみる。しかし、それらしき物は一つも見当たらなかった。
 そして、オオヤマがこの付近を歩き回っていると、謎の老人が彼の前に現れた。

「やあ君。もしかして人探しをしているのではないかね?」
「え、いや……はい」

 どう応えたものかと悩んだオオヤマは、その質問に首を縦に振った。

「よおし、ではその探し人に合わせてあげるから私について来なさい」

 と、老人は言ってきた。当然、オオヤマはその老人に警戒をする。

「誰だあんた?」
「ああ申し遅れた。私の名前はオコメ・ヘイハチロウと言うんだ」
「オコメ・ヘイハチロウ!?」
「実は、ある方に君を連れて来るように言われていてね。君が一人きりになるタイミングをずっと見計らっていたんだ
「見計らっていた? オレを尾行していたのか?」
「そうだ。君の他のメンバーには内密にしたい話をしたいんだよ。うちのリーダーが君を待っている」
「リーダー? 一体、お前は……お前らは何者なんだ?」
「我々は、君に助けられた者だよ。独房に捕らえられていた我々を、君はゴーレムを使って解放してくれた」

 またあの時の話かよ……!
 オオヤマは、この世界に来たばかりの時に、牢屋に閉じ込められていたことを思い出す。

「私、ひいては私の仲間達も君に会いたいと言っている。是非、君を我々のアジトへ招待したいんだ。来てくれないかね?」
「断るに決まっているだろう。大体、オレに何のメリットがあるんだ」
「……もし、君がアジトへ来てくれたなら、もしかしたら君達が探している人物、勇者カンバが何処にいるのかを教えてあげられるかも知れない」
「……な、何だと!? カンバ、って今言ったか!?」

 予想外な名前に、オオヤマの心臓が跳ねる。
 オオヤマとセイコーはカンバに半ば強制的にこのゲーム世界に連れ込まれた。そのカンバが居なくなったことで、2人は元の世界への帰り方がわからなくなった。
 この世界の脱出方法は二つ。ゲームをクリアするか、カンバと再会するかだ。
 もし、ゲームがクリア出来なくても、カンバとさえ出会えればオオヤマとセイコーにとっては喜ばしい。
 問題は、このヘイハチロウという老人が信用に値するかである。
 オオヤマは、ここでどう判断をするのかしばし長考する。
 そして、

「……わかった。お前たちのアジトとやらに行こうじゃないか」
「ほう、まさか本当について来てくれるとはね。正直驚いたよ」
「どうせゲームでは足手纏いだし、敵を倒せないなら他の方法で活躍するしかないからさ。……それに、この世界は所詮ゲームの世界。例えお前が悪者で殺されたとしても、死んでも何度でも蘇られる」
「ふんふんなるほど。それでは我々の住むアジトへ行こうか。リーダーがお待ちしてるよ」
「頼む」

 こうしてオオヤマは、ヘイハチロウの後ろについていき、彼の言うアジトへ目指すのであった。

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