ニート 異世界で チート になる。

抹っちゃん

7話 飛行練習

「〈チェンジ〉朱雀!」

足元から火の粉が舞い上がる。不思議と熱くはない。
なぜ朱雀にしたかと言うと、一番使いやすそうな神獣だったからだ。遠距離と近距離の攻撃魔法がある 朱雀
 は一番安全に戦えるだろう。
すぐに変化が完了する。
だが、

「なっ...!!」

朱雀は二の腕くらいまでの赤いストレートヘアだった。
うわ、2連続。

「ほんとに女子にみられちゃうよ…。」

もともと女子っぽかったのになぜ俺は異世界の方が女子っぽいのだろう?
神様、理不尽です、換えてください。
胸の前で手を組んでみたが変化はなかった。


耳の上くらいから紅い羽根が垂れてふわふわと風になびいている。同じように、長い紅い尾羽も三枚生えている。
鳥って感じだな。翼は無いけど。

「まずは飛んでみるか...。」

見た目のことは置いておこう。気にするな、誰もいないんだし。

ヘルプによると、考えることで飛べるみたいだ。
早速やってみよう。

                                         ◆


「うわぁぁっ!!!」

なんだこれ!視界が安定しなくてバランスが全然取れないッ!
いざ飛んだはいいが上下感覚がない。
お陰で風で落ちる凧みたいにぐるぐる回って現在に至る。ちなみに落下中だ。

動物本人の経験(?)から こうすればいい と分かるのだがなかなか出来ない。アシストも全て完璧ではない、自分で知らないといけないのだろう。

地面に突っ込まないように、空に向かって飛ぶ。グルンッと景色が一回転するが、尾羽を思いっきり広げてなんとか地面と平行になれた。
これならなんとか安定するな。

真っ直ぐにただ飛ぶ。それだけなのにかなり難しい。それは俺が飛んだことがない以前に、風が原因だ。向かい風ならゴリ押しでなんとかなる。問題は追い風だ。
なんでと思うだろうけど、追い風は速度は上がるが、後ろから押されると尾羽が動いてバランスが崩れてしまうからだ。はっきり言って、飛ぶなんてほぼ無理ゲーだ。
それでも、俺は使える能力はフルで使わないと戦闘に勝ち目なんて無いだろう。俺がいくら速くても避けられない場合、逃げ場はなるべく多く欲しい。

どさっ

横からの突風に対応出来なくて墜ちてしまった。
ゴロゴロと転がって衝撃を和らげる。これはスキルが教えてくれた。Lv8の今でも俺のHPは13、これでも少ない。
俺はレベルアップする度に1ずつしか上がらないみたいだ。もし100Lvになっても俺のHPは105、つまりずっと油断できない。だから慎重に、出来ることは全て出来るようにしておこう。

服に付いた砂をはらう。
今まで気付かなかったが服がパーカーから かわっていた。灰色のシャツに黒い踝までのズボン、そして白のマントだ。
腰にはスチールソードが下がっている。靴は学校で履いていた上履きの形の黒いやつ。硬いから布製ではないだろう。
マントが邪魔だったから早速収納した。ストレージに小麦色のチョッキがあったから代わりに着る。ついでに普通の鞣し革の軽装とやらも装備する。よくわからなかったがどうやら胸部を守るためのものらしい。紐の長さを調整して固定し、その上からチョッキを着た。
やっぱりストレージは便利だねぇ。

再び飛ぶ。
それからしばらく飛ぶと墜落を繰り返した。なかなか上達しない。ニート生活が長かったせいかもね。

練習中に近くの草からウサギが飛び出したからファイヤーアローを試しに5で射ってみた。ウサギはケシズミになってしまった。でも、いい匂いがしたから今度出たらもっと弱く射ってみよう。よければ丸焼きに出来るかもしれない。
じゅるり
おっと、考えていたらヨダレが......。いけない いけない。今は飛ぶ練習中なのだから、次まで我慢だ。


短距離を真っ直ぐ飛べるようになってからは少しずつ移動を始めた。一度、上に飛んでしまったときに街が見えたからおそらくあそこが 最初の街〔オリジナ〕だろう。
かなり遠くで山とかがあったが、飛べるようになればすぐに着けるだろう。飛べなくても歩けばいい。当分の食料はあるしね。


                                           ◆


異世界に来てから5日目。
皆が一度は憧れたことがあるだろう異世界生活は、ファンタジーの欠片もない死闘の日々だった。

まず、魔物がうようよしている。飛ばなくても視界に1、2匹はいる。目が合った瞬間襲ってくるのはマジ勘弁して欲しい。
闘っていると集まってくるし、長引くと群れになるし。空中に早速逃げてもファイヤーグラウンドリザードって赤いワニサイズのトカゲが火球をぶっぱなしてくるから避けるのに苦労するし。まぁ、そのおかげで飛ぶのが上手くなったけど。もろに当たった時はHP残り4になって死ぬかと思った...。一度トラウマになったらほんとにまた戦わなきゃいけないのが辛い。

夜は仕方なく近くの木の太い枝で寝た。
下は魔物天国(いや、地獄か)だった。魔物の目も猫みたいに光るんだね。かなり怖かった。だって下には俺を食べようって思ってる奴等がじっと俺が枝から落ちるのを待ってるんだよ?!

で、俺は今 木の上にいるにいるわけですよ。朝っぱらから暇なのかい?君らは。
下はオオカミっぽいのからウサギっぽいのまで何でもありの魔物集団が待ち構えている。
俺が飛んで離脱しているのがよっぽど悔しかったのかファイヤーボールの射てるファイヤーグラウンドリザードが5体編成されてるよ。打ち落とす気満々だな、オイ。
軽く飛び上がって足を枝から離す。
途端に魔物が攻撃準備、リザードっちはファイヤーボールの予備動作をし始める。
すうーっ と深呼吸。
よし。

「絶対に食べられねぇぞーっ!」

やる気(?)を声とともにだし、俺は木から飛び出した。




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