Tailorandressmaker

ぴよ凛子

第二夜 真夜中の城

「いやぁー、一雨降ってきたと思ったらあっという間にザーザー降りとは、私もついてないねぇ」
降りしきる雨のなか、真っ暗な森を1人の男が小走りに走る。身なりはよく、長身で黒い髪はまるで闇に溶け込むよう。仕事道具と思われる革製品の鞄を胸に抱きしめ、コートで雨をしのぎながら男は雨宿りできる場所を探した。
「おや?あれはどうやら建物かな?」
少し遠くに小さく黒い建物の影のようなものを発見した。
「いやいや、助かった。今晩はあそこにお世話になるとしようじゃないか」
男は安堵の息をつき、なんとはなしに独りごちた。

建物が近づくにつれ、どうやらそれは城であると判明した。高くそびえる塔に重厚な造りの門扉。だが、もう使われていないのだろうか。どこもかしこも錆び付いていた。
「こんなところに城が…はてさて思っていたよりも立派な建物だったなぁ」
窓を眺めても城の中は真っ暗で無人のようだ。廃墟、いや廃城のようだ。
…と思った瞬間。

ユラユラと揺らめく炎が見えた。炎はまるで蝋燭に灯されているかのように揺らめき、そこにはなにもいないはずなのにまるで執事が城の中を見回りする様が思い浮かばれた。
「これはどうやらただのお城じゃないようだねぇ」
男はまた1人、呟いた。

いつの間にか先程見た炎は影も形もなく消えて闇に飲み込まれたようだった。

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