S女‼(えすじょ‼)

よこたん

episode9 拳法

我が家の場所は河川敷のすぐそばである。
少し行けばテニス・バスケットコート、サイクリングロード、遊具などを兼ね備えた、「そこら辺の公園行くんだったら河川敷に行く」ぐらいのアウトドアスポットである。
俺はあまり行かない、疲れるから。

河川敷の散歩コースにたどり着くと、この犬の飼い主と思われる人を発見。

「おい、つつr」

「きょえーー!!」

いやなんちゅう声出してんだ。

「…おーい」

「きぇえーほうっ!」

どうやら、中国拳法のようなものを朝からやっているようだ。
…いや?確か朝のトレーニングの前にするルーティーンだったっけな。
あまりこのような絵面に直面したことが無かったからな。

その後も、いくら話しかけようと試みるも、「といやぁーっ!」とか「ぬんんんっ!」など、よく俺の言葉と被るので、本人は気づいてない様子。
…実際、視界に入るように回り込めば、気づいてくれるのだろうけど、なんかこう…もういいかなって。

結局、最後まで見ている事にした。
20分位だろうか、かなり長くウネウネしていた。

「っよし!やるぞぉー」

と、大きく背伸びをして、まわりを気持ちよく見回す飼い主。

目が合う。


「………………………………………………………はぇ?」


思考が停止しているようだ。

「犬、首輪外れてたぞ」

「……………はゎ…あ、え、あ、お、おっ…と、おっ、おもしろ?!」

「俺は面白くねえぞ」

「あー、うん。おはよう」

特にさっきの行動については言及しないでおこう。

「あ、こらマルぅ、勝手にリードから抜け出さないって何回もいったのにー」

こちらに来て、マルを叱る。
彼女は今今 つつらいまいま、中学の時からの同級生だ。
彼女も俺と同じ、御茶々目学園高等部に今年入学したみたいだ。

「て言うか、友広昨日学校サボったでしょ」

「ん?…ああうん。サボったような…………って、何でつつらが知ってんの?」

「いや、だって同じクラスじゃん」

「…………あえ?そうなんだ」

「うん、また3年間宜しくねー」

「…………」

中学3年間、俺とつつらは同じクラスである。
何故かしら席も、2回に1回は隣だった…………あれ?確かずっと同じ班だったような……同じ委員会…………。

「どうしたのそんなストーカーを見る目で私を見て」

「…お前って、俺のストーカー…?」

「へ?」

少し驚いた顔をみせるが、すぐに二へェとした顔に戻る。

「こっちのセリフかもね」

「…差別だぁ」

「かなしいなぁ」

「かなしいなぁ」

……………といった他愛もない会話が、朝から始まる。

コメント

  • Wakei Yada

    ブラウザバックしないで〜のくだりが面白かった。自分も使ってみたい。

    1
  • 華梨ふらわー@なろう&iランド

    Twitterから参りました。
    サクサク読めて、小説の世界観に引き込まれました。

    1
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