中華料理屋物語

かすてら

1話、新しい生活

昨日夜遅くに入ってきた女は風呂に入った後ちゃたかり飯を要求し、食べ終わったら寝落ちした。

(ほら、起きなさい。)

(ふぁーーい…………。)

(俺が出した飯食ったら寝落ちしやがって、礼儀も知らんのか。)

(すいませぇーん…………。)

この女礼儀もクソもねぇ。ったく馴れ馴れしい奴だ。だがなんとも憎めないのはこの女どんな表情でも可愛いからだ。

(とにかく、寝たいんだったら布団で寝てくれ。うちは中華料理屋だからお客さんがもうすぐ来るんだよ。)

(あー、ここお店だったんですかぁ!?だからあんなに炒飯美味しかったんダァ!?)

炒飯は味の素か知らんがそこらへんのメーカーから出てる香味ペーストを使い出したら妙に人気が出た。こいつもこの炒飯の虜になったか…

(まぁ、美味いと言ってくれるのはとても嬉しいが…さぁ早く着替えて就職先でも何でも探してこい!メーワクだ ︎)

(てんちょー、ついさっきまで布団で寝てくれって言ってたじゃないですかぁ!)

(うるせぇ!店長命令だ!)

(…………)



(そうだ!)

(店長ぉ!私この店で働かせて貰って良いですか!)

(こんな態度でか!?ていうか、このタイミングで!?)

(さっきまではスイマセン。私やろうと思えばやれるんすよ。ケジメっすね。)

じゃあ最初っからそうしてくれよと思ったが取り敢えず何も言わずにスルーした。

(こう見えても、私家庭科の成績は学生時代かなり良かったんですよ!)

そうか、そうか。聞き流したい気持ちは山々あるが彼女は情熱的がこもっている。それにこの女、まだ俺の家で下宿的な感じで住む気でいるっぽい。

(どうっすか?店長ぉ!)

(…………)

(無視ですかぁ!酷いですょぉ!)

(わかった。俺はまぁ一人暮らしだし寛容な方だからあんたの下宿を認めよう。だけどウチの手伝いはキツいぞ。そして時給は生活費に回すから勿論無い。それでもいいか?)

(良いですよ。人生初の就職楽しみですから!)

1日でも働かなかったらすぐに解雇するつもりだ。飯も出さない自分で作らせる。自由は殆ど無い仕事だ。

だが俺はそんな彼女の入店に少し喜ばしく思った。


(よし、わかった。今頃になるがそういえば君の名前はなんだ?)

(加藤サヤカです。23歳。貧困OLですっ!)

(そーか、俺は山口鉄男だ。よろしく。)

(よろしくお願いしまーすっ!鉄男てんちょー!)

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