ギャグ特化異世界ライフwith妖精

さわんちゅ

11 街へ

 「あ、見えてきたよ!」
 そう言ってシロちゃんの指差す方向には何やら壁らしき人工物が小さくだが見える。
 「おおー!ホントだー!」
 街の外観は壁で囲われているというのはファンタジーのお約束だがこの世界も例に漏れずしっかり忠実だった。
 ていうか壁なかったら魔物とかに襲われ放題だしね。当然だね。
 

 20分程も歩くと街の入り口までついた。
 そしてそこには門番がいた。巨人の。とはいえ体高はおおよそ6メートル位。まぁちょっと前から見えてたんだけど、その時はちょっと大きい人がいるなぁくらいにしか思わなかったんだけど縮尺が違った。門も相応に大きかった。人間だけの街じゃあないんだねぇ。
 門まで着くと巨人の門兵が話しかけてきた。
 「ようこそフィリスへ。君たちは人間と妖精かな?」
 巨人さんの口から出てくる言葉はとにかくうるさかった。多分声音は下げてると思うけどそれでもなおうるさい。ごめんね。悪口じゃないんだよ?
 思わず耳を塞いで頷く。
 「あぁ、申し訳ない。この位かな?」
 さっきより大分小さな声で謝罪をしてくる姿には好感が持てる。意外にも紳士的じゃないか。
 「大丈夫です」
 「なら良かったよ。身分証を見せてもらえる?」
 「え」
 「あ」
 「…え?」
 「あ、ああ〜。み、み身分証ですね。ちょちょっと待ってて下さい」
 この世界にもそういうのあんのかよ!どうしようどうしよう。てか普通あるよね!でないと完全に不審者だもんね!
 ちょいちょい、とシロちゃんを手招き。
 「持ってる?」
 「…ごめん。わたしは持ってる」
 そう言って合掌を作るシロちゃん。
 「んな!?」
 マジですかい!そりゃそうだ!シロちゃんはこっちの世界の人(妖精)だしね!
 「悪い人じゃないってことはいい添えておくから後は頑張って!」
 そう言って門番さんに近づいて「わたしはありますけどこの人は持ってないみたいです」とか言ってる。
 口をOの字に開き呆然としているわたしを置き去りに何やら話し込む二人。
 そして話が一区切りついたのか門番さんはこっちを向いて
 「悪いが少し来てくれ」
 だってさ。違うんです!本当に何にもしてないんです!ていうか何にも持ってないんです!
 そして視界の端にはガッツポーズの小さな妖精。その目は「ファイトだよ!」と言っている。別にシロちゃんのせいってわけじゃないんだけどね!
 

 そうは言いつつも連れられたところはやはり取調室のようなところだった。
 カツ丼でも出てきそうな雰囲気。あっ、お腹が……。
 しかしながら現実逃避は門番さんの一言で強制終了させられる。
 「まずは、君の名前は?」
 たったそれだけの言葉なのに萎縮してしまう。
 考えたら当然のことだが向こうは6メートルもの体高で座っても4メートル強あるのだ。一方こちらは見た目は子供、頭脳はコミュ障。その名は名探て…って違う違う。言うなれば…、なんだ?まぁ無難に魔法少女とかでいいか。よし次からはそう名乗ろう。……あれ何の話だったっけ

 「…サクラです…」
 「そ、そんなに縮こまらなくても、本気で何か企ててるなんて思ってないから安心して」
 「え、あ、ど、どうも」
 ハキハキ喋れー私。
 「じゃあ次にどこから来たの?」
 えぇー、こういう場合はどう答えたほうがいいの?なろう小説では転生したって素直に言っちゃいけないんでしょ?日本?日本でいいのか?
 「日本、でお願いします」
 「ニホン?へー聞いたことないな」
 お前日本語喋ってんだろ!
 「じゃあ次はなぜこの街に来たの?」
 「えーと、実は行く当てが無くて街道をさまよってたんですよ。で、偶然この街が見えたので休ませてもらいたいなーと思いまして」
 我ながら意味不明な返しだった。怪しまれて当然だわ。
 「さまよっていた?それはなぜ?」
 「え、えーっと?各地を回っていたというかそんな感じです。ほらよく言うじゃないですか〜。可愛い子には旅をさせよって。」
 「お、おう」
 なんか今自分でいうかみたいな目で見られた気がするけど私がメイキングしたんだから可愛いに決まってるでしょ!まぁ多分使い方としては間違ってるけども。
 「なるほどね。じゃあ本当にこの国に危害を加えるつもりはないんだね?」
 「当たり前ですとも〜」
 「じゃあ最後に荷物の確認をするから持ってる物を出してくれないか」
 「了解です。アイテムボックス」
 唱えると前回のようにリストが出て来たので全部出す。リストにはどうやら最初に戦った岩の首長竜の素材らしきものもいつのまにか入っていた。それと魔石というのもあった。
 「武器もだして欲しい」
 「あ、私武器は持ってないです」
 「え?武器も持たされずに家から出て来たのかい!?」
 いきなり声を荒げるので瞬間的に耳を塞ぐ。お前は自分の声がでかいことを自覚しろ。
 門番さんは私の反応にハッとしたのか申し訳なさそうな顔を向ける。
 「すまない。いや、だがしかし君も相当だよ。この街ではせめて武器は買っていったほうがいい」
 「え、あはい、そうします」
 「そうかい。なら良かったよ」
 この人いい人すぎない?めっちゃ親身になって物事を言ってくれるあたり中3のときの先生みたいな印象。ただし、声がでかいことは自覚すべき。
 「じゃあ仮の身分証を渡すから街へ入ったら必ず役所によってくれ。そこで正式なものを発行してもらえるから」
 「了解です。ちなみに場所って?」
 「そこの大通りを進んでいくと見えてくるよ」
 「分かりました。ありがとうございます」
 しかしながら、異世界の街に来てから一番最初に目指すのが役所とかあんまりじゃない?こういうのは大抵冒険者ギルドを目指すものでしょ?
 「悪かったね。引き留めちゃって」
 「いえいえ、お構いなく」
 そう言って建物を出るとシロちゃんがしっかり待っていてくれた。なんだか久しぶりな気がする。
 そしてようやく私は街への第一歩を踏み出した。
 

「ギャグ特化異世界ライフwith妖精」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く