転生銀髪美少女は勇者にすべてを任せて楽に生きたい

美浜

番外編② コラボ小説


「ここは?」


 意を決して亀裂の中に足を踏み入れると、辺りは真っ暗で先に入ったはずのみんなの姿が見えない。


「誰かいますか?」


 少し待ったものの返事はない。
 声が少し反響していて、足元はゴツゴツとした固い土のような感触。辺りは真っ暗で自分の手すら視認できない。
 これらの情報から導き出されるのは、ここが洞窟のような場所ではないかということ。
 そして、なぜか今は僕一人であるということ。

 
 迷いはあるけれど、このまま動かなくても事態は好転しないので、壁に手を当てながら慎重に進んでみる。


「―――」


 微かだけど何か音が聞こえた気がする。
 足を止めて耳を澄ます。


「―――」


 やっぱり何か聞こえた。
 離れた場所の音なのか、その音がなんなのかは判別できないけど、この何もない真っ暗な空間では少しの音でもよく響く。
 
 足音をたてないようゆっくりと歩きながら音がした方向へと進む。
 すると次第にはっきりと聞こえるようになってきた。
 人の声だ。でも、魔王ちゃん達の声ではない。


「暗いですね......ここ」

「てかリタって何か魔法使えないのか? ちょっとした光とかさ」

「んー......あ、サン・カルロッティ!」


 なにやら魔法を唱えたと思ったら真っ暗だった視界が急に明るくなる。
 僕も光魔法とか使ってみたい。


「ちょっと、リタ。いきなり魔法を使わないでまぶしい」

「まあ、助かったよリタ。さすがに何も見えないところにずっといるのは辛いしさ」

「ご、ごめんね······ちょっと気が動転してて魔法を使うのを忘れてた」


 そこに不思議そうな表情で少女が呟く。


「やっぱり青葉たちって見えてないの?」

「ん? なにが?」

「光魔法を使わないと周りが見えないんでしょ? じゃあさ、そこにいる不審者には気づいてる?」

「「えっ?」」
「えっ?」


 僕と、三人組の内の二人、青葉とリタと呼ばれた人が同時に驚く。

 僕はいきなり指を指されたこと、あちらの二人は不審者と呼ばれた人物がいたことに、それぞれ驚く。
 

「い、いや~僕は不審者じゃなくて、通りすがりの者と言いますか、なんだろう。あははは」


 なんだろうな、この世界に来たときもこんなことがあった気がする。
 
 二人は呆気にとられていたけど、すぐに気を取り直してルルと呼ばれた少女と共に警戒体勢をとる。


「えっと、悪い子じゃないと思うよ。光を灯す前に私たちに気づいてたけど、何もしてこなかったし。でも、青葉が敵だって言うんなら私も戦うよ?」


 ルルと呼ばれていた少女は温厚的な態度を見せてくれる。
 だけどその目は「青葉がやるなら、私もやる」という確固たる決意が読み取れた。

 その青葉と呼ばれた少年に疑われぬよう何もしないでじっとしていると、考えが纏まったのか少年が口を開く。


「俺は信じてもいいと思うぞ。こんな子が悪さをするとは思えない。リタもそれでいいよな?」

「はい。私もそれでいいと思いますよ。こんな可愛い少女が悪さをするはずがありません。えっと、貴方のお名前を聞いてもいいですか?」


 優しい笑みで金髪のリタと呼ばれた少女が聞いてくる。


「あ、えっと、僕の名前はシルバー・エトランゼです。気軽にシルバーと呼んでください」

「うん。シルバーさん、よろしくね。私はリタ・サフィア。リタって呼んでね」

「俺の名前は海響あおと青葉あおば。青葉って呼んでくれ」

「私の名前はルル。好きなように呼んで」


 と、一通りの自己紹介を済ませる。
 そして話し合いの結果、三人と一時的にパーティーを組むことにした。
 一人だと心細かったから大変助かった。




「シルバーさんはどうしてこんなところにいるんですか?」


 四人で一緒に、リタさんが出してくれた光魔法を頼りに洞窟の中を進んでいると、質問を投げ掛けられた。


「あ、実は亀裂があるって情報があって、見に行ったら段々と大きくなってるのが分かったんです。それで直接乗り込んで解決しようとしたんですけどその時にはぐれてしまって」

「なら、そのはぐれた人を探すのが目標だな」

「えっ? いいんですか?」

「もちろん! それに、みんなで手伝った方が早く終わるじゃないですか」

「ありがとうございます!」


 僕はほっと一息つく。
(良い人たちでよかった)

 しかし、
 

「私は青葉に危害を加えないなら、何でも構わない」


 その言葉に僕は苦笑いを浮かべるしかなかった。
 
 あの四人にもし出会えたら······
 青葉さんには危害を加えないと思うけど、レーラさんとハルバルトさんがいるからな······

 むしろ、ルルさんに危害を加えちゃいそう。




 それから洞窟の中をしばらく進んでいると、一番前を歩いていた青葉さんが足を止める。
 ちなみに、青葉さんは「俺は男だから一番前を歩く」と言っていたんだけど、僕も男であることは黙っておいた。


「なあ、風を感じないか?」


 某ゲームの吹雪ですか?


 日本人にしか分からないであろうツッコミを心の中でしながらも、青葉さんにならって足を止めて風を感じるか確かめてみる。
 確かに、僅かだけど風を感じる。


「確かに少し吹いている気がしますけど、それがどうしたんですか青葉?」

「前にアニメで見たんどけどな、こうやって指を湿らせて······」


 そういった青葉さんは自分の指を口に含む。

 あれ? アニメってもしかして...... 


「こうするとな、どっちから風が吹いてるか分かるんだ」


 口に含んだ指を掲げると目を閉じて集中する。
 やがて静かに目を開けた。


「よし、分かったぞ。こっちだ」


 どこから吹いているのか確信を持てたのか、僕たちの返事も聞かずに進んで行ってしまう。
 

「青葉、待ってください」

「青葉、置いてかないで」


 先に行ってしまった青葉さんを追いかけるために二人の少女は駆け出す。
 僕もその後をついていった。



 途中、何度か分かれ道があったものの迷わず突き進んでいく。
 そして、段々と肌に当たる風を確かに感じるようになった。
 出口は近いようだ。


「! 待って青葉!」


 出口が近づいてきてさらに速足となっていた青葉さんを少し焦った感じでルルさんが呼び止める。


「どうしたんだルル? 何かあったか?」

「そこ······」


 そう言ってルルさんが指差した先を注意深く観察する。
 すると岩の影から何かが飛び出してきた。


「敵!?」


 亀裂に入ってから出会ったのは青葉さんたちだけで、魔物などには未だに遭遇していなかった。
 むしろそれが幸運だっただけでこのような暗いところにだって魔物はいても当然だろう。

 各々が戦闘態勢に入る。
 いつ、敵が攻撃してきても対応できるように。


 しかし、その構えは一瞬で解かれた。


「えっと青葉、どうしましょう?」

「俺に聞かれたって困る」


 岩影から現れたのは、可愛らしい姿をした小型犬のような魔物だった。
 いや、魔物かどうかは分からない。もしかしたらこの世界にもペットのような存在がいるのかもしれない。

 そんな魔物? がテトテトと歩いてくる。
 何をするかと思えばリタさんに近づき、柔らかそうな頬っぺたをすりすりと擦りつける。

 つぶらな瞳で見つめられたリタさんは、そこでノックアウト。
 完全に魅了されてしまった。
 その証拠に子犬らしきものを見る目がハートになっている。


「青葉、この子と契約しましょう! かわいいは正義です!」


 興奮気味で青葉さんに迫るリタさん。
 彼女の熱意に負けた青葉さんは謎の子犬との契約を決意する。


「なぁ、俺と契約しないか?」
 

 契約を持ちかけられた子犬型魔物は、青葉さんの言葉を理解したのかリタさんから離れ、青葉さんの前にちょこんと座る。


「よろしくな。えっと······アスル・ガイスト。今日からお前はアスル・ガイストだ」


 こうして一匹の魔物との契約を完了させた。

 ただ、この魔物はメスであった。
 青葉さんがアスル・ガイスト、通称アスルを撫でていると横から物欲しそうな表情でルルさんが見つめる。


「いいな~。私も撫でられたいっ!」

「しょうがないな~」


 今度はルルさんの頭を撫でる。
 するとまた一人、物欲しそうな表情をする人物が増える。


「私も、撫でられたいかも······」

 
 ボソッとリタさんが呟く。
 不運なことにその呟きは青葉さんには届かなかった。


「んっ? 何か言ったか?」

「えっ? い、いや何でもない......」


 こんな感じで和気あいあい? と事は進んでいき、ついに洞窟の外に出た。





今回でやっと海美蒼衣先輩のキャラを登場させることができました。

分量はいつもよりも多めです。
でも、これ以上少なくするとコラボ小説だけで10話いっちゃうので、そこのところはご了承ください。


第3話は近日公開予定です。


 


 



コメント

  • 美浜

    ありがとうございます!!

    4
  • размер архива в приложении

    ここまで読ませてもらいました。
    とても面白かったです!

    2
  • 美浜

    連絡を取り合って、それぞれで書いてます。

    4
  • Kまる

    コラボってどうやってやるんやろw片方のスマホを送りあったりするのかな…

    2
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